施工不良による外壁タイルの落下事故がたびたび起こります。外壁の落下は管理者としての管理責任を問われる場合があります。足場を架設して建物調査をしたところ、経年劣化では考えられないタイルの浮きが判明したなどというケースも少なくないようです。
こうした施工不良による事故や補修を「すべて管理組合負担とされるのは納得できない」のは当然であり、人身事故など最悪のケースを免れるためにも外壁タイル落下の危険への対処をしなければなりません。
外壁タイル落下事故の最新事情から外壁タイルの改修方法などについてまとめてみました。
【外壁タイル落下事故の最新事情】
◆タイル落下で負傷者・熊本
平成31年4月、築6年目のマンションの11階部分から外壁タイル2枚が落下し、走行中の軽乗用車に直撃。運転していた女性と後部座席の女性がけがを負った。
タイルは縦40cm、横30cm。施工しやすいシート状で、20枚程度の小さなタイルがユニットになっていた。デベロッパー、管理会社らが補償、当該マンションの調査・補修等の対応を行った。
◆大規模修繕中に元施工を提訴・東京
平成29年、築13年・32戸のマンションで、大規模修繕工事中に新築時の施工不良(不法行為)による損害賠償訴訟を提起した事案。管理組合は大規模修繕工事を行っている工事会社の協力を得ながら、証拠となる写真や設計図書などを提出し、施工不良によるタイル落下の危険性を主張した。
平成30年、元施工会社が1,000万円を支払うことで和解が成立した。
◆タワマンからタイル剥落・大阪
平成27年3月に起こった外壁タイルの剥落をめぐり、管理組合が発注者と設計・監理者、施工者の3社に対して計約2億4,000万円の損害賠償を求めた事案(平成29年12月大阪地裁)。平成17年竣工・20階建てのタワーマンションで、平成27年3月に外壁タイルが剝落した。調査の結果、竣工10年程度でタイルの浮きや剥離が外壁全体の3~5%であれば経年劣化とみられるところ、10%以上で見られたことから施工不良が原因とし、施工者らを訴えた。
訴訟は令和3年1月、施行者らが管理組合側に約1億5,000万円支払うことで和解が成立した。
【外壁タイル剥離を招く施工】
外壁タイル面にひび割れが生じている場合、その下地のモルタルやコンクリートの劣化が原因となっていることが多いと言えます。
下地のコンクリート面に施す吸水調整剤を塗り忘れると、モルタルに含まれる水が下地に吸われ、モルタルの硬化不良(ドライアウト)を招くことにつながります。逆に塗りすぎは接着力を低下させるため、施工不良となる原因となります。
コンクリート躯体のひび割れ誘発目地や耐震スリットの上にタイルを貼るなど、スリットとタイルの目地の位置を合わせないと、躯体の動きにタイルがついていけずに剥離してしまうこともあります。
施工不良には、セメントモルタルの量を減らそうと、躯体に発泡スチロールが混入した例なども見られました。
【最新のタイル剥落防止工法】
ピンネット工法は、外壁(モルタル・タイル)は動くという視点から、浮き部位を接着させるという考えではなく、局部的にモルタルをピンでコンクリートに固定させ、編み布(ネット)で補強して剥落を防止する方法です。
大規模修繕工事新聞 146号