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管理費等滞納者が死亡 理事会はどうすればよいですか?

管理費等滞納者が死亡 理事会はどうすればよいですか?

 残念なことにマンション内で単身高齢者の孤独死がありました。しかも、その方が管理費等を滞納していたことが判明しました。理事会ではどのような対応をすればよいでしょうか?

まずは弁護士に依頼し相続人を確認 相続人なしでも競売で滞納管理費を回収

 区・市役所から戸籍謄本を取り寄せて、相続人を調査する必要がありますが、管理組合が他人の戸籍謄本を勝手に取ることはできませんので、弁護士等に依頼して相続人の有無を調べてもらうことになります。
 その上で、相続人の有無により下記のとおり、対応します。法的手続きなど一般の人では労力や精神的に負担になることが多いので、弁護士等の専門家に依頼することをおすすめします。
●相続人がいる
 相続人がいる場合、管理組合としては、相続人に滞納管理費を請求することになります。
 なお、このような被相続人が残した金銭債務などの分けられる債務は、共同相続(相続人が複数)の場合、相続の開始と同時に当然に分割され、各相続人がそれぞれの相続分に応じて承継するものと考えられています。
 したがって、相続人が複数いる場合、管理組合としては、各相続人に、それぞれの相続分に応じた請求しかできないという点に注意が必要です。
 他方、相続後に発生した管理費の支払債務は不可分債務と考えられており、各相続人はそれぞれ管理費の全額を支払う義務があるとされています。
 したがって、相続発生後の管理費については、管理組合は、各相続人に全額の請求をすることができます。
●相続人がいない・相続放棄
 これに対して、相続人がいない場合や、相続人がいたとしても全ての相続人が相続放棄をしてしまった場合、管理組合としては、利害関係人という立場で家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることができます。
 相続財産管理人が選任されると、相続財産の管理行為を行います。相続財産管理人は、選任の公告から2ヶ月以内に相続人が現れなかったときは、債権者等に対して2ヶ月以上の期間を定めて請求の申出をするよう公告を行い、申出があった場合は相続財産の中から弁済を行います。この弁済は相続財産中の現金や預貯金をもって行いますが、それらが不足する場合は、不動産や動産等の資産を競売や任意売却の方法で換価して弁済に充てることとなります。
 ところで、当該マンションに抵当権が付けられている場合、競売が行われたとしても、最初に配当を受けるのは抵当権者である銀行等で、剰余がある場合でなければ管理組合はそこから滞納管理費を回収することはできません。
 もっとも、落札者である当該マンションの新所有者は、滞納管理費の支払義務を承継しますので(区分所有法8条)、管理組合は新所有者に滞納管理費の支払を請求することによって、滞納管理費の回収を図ることができます。

大規模修繕工事新聞 146号

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