「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

こんなコンサルタントに要注意〈番 外 編〉

 「こんなコンサルタントに要注意」シリーズは今回、番外編として、管理組合内部のマンション住民で、理事会や修繕委員会をミスリードに導く“エセ専門家”について記述します。

 “エセ専門家”は大規模修繕工事関係でいえば、例えば建設業者(ゼネコン、サブコン)、建材メーカー出身者などです。新築を上にみて、改修を下にみている人が本当にやっかいなんです。本人は“マジ専門家”として「言わずにはいられない」のでしょうが…。

 あるマンションの修繕委員会に出席しました。修繕委員長は元ゼネコンの社員です。
 その修繕委員長の指示で、管理会社が提出してきた建物診断報告書を材料に施工業者の選定を開始しました。公募です。資本金30億円以上。
 私は「いやそれはさすがに。マンション専業の会社が1社もエントリーできません」と助言しましたが、「社会的信用がある。万が一倒産することも考えなければ」と譲りません。
 直近の財務諸表、工事売上高、請負金額にも目を光らせます。「純利益は25%前後ほしい」。
 結果的にエントリーは思うようにならず、ゼネコンのリフォーム部門の子会社を加え、検討を重ねていました。
 工事内容については、管理会社提示の建物診断からすべての工事項目を組み入れていました。ここでも「管理組合の財政から優先順位をつけてはどうですか」と助言したのですが、ここはあまり関心がないようで、管理会社から工事仕様を取る算段などをしていました。

 では修繕委員会の他のメンバーはどうなのかというと、決裁権はすべて委員長とばかりにみなさん責任逃れのイエスマンになっているようにみえます。
 あるとき、委員長にゼネコンでどのようなご活躍をされてきたのか、聞いてみました。修繕委員会のあと、酒席が設けられることがあるのです。
 そうしたらなんと!
 定年までずっと経理畑を歩いてきたということでした…。


 次に東京都内で行っているマンションの交流勉強会での話です。ある方から大規模修繕工事瑕疵保険についての質問を受けました。どういうものですか?と。
 私は「施工後、施工不良があった場合に、第三者が鑑定し、その修理費用を保険で賄うものです」と簡単に説明しました。
 すると、「うちの修繕委員会では、保険会社に勤めている委員から必要ないと言われて、保険に加入しないことに決めたのですが、それでよかったのでしょうか」と言います。
 よかったのか、よくなかったのかはそれぞれの管理組合の考え方ですから、私から申し上げるものではありません。
 そう述べると、質問者は「大規模修繕にかける瑕疵保険はふだん聞いたことがない。倒産しない工事会社を選べばいいのだから、かける意味はないという話だった」と、その保険会社の委員ひとりの話が気になっていると続けます。
 他の修繕委員はまったく知識がないので、黙って聞いていたそうです。
 私は少し会話を和らげるつもりで「どこの損害保険の方なんでしょうか?」と聞いてみました。瑕疵保険は損保とは異なりますが、マンションに少し詳しいのなら損保会社の人かなと思ったのです。

 ところが、意外にも「○○生命保険の人です」。
 はあ?瑕疵保険と損害保険がまったく違うのに、生命保険じゃ…そりゃ、瑕疵保険は聞いたことがないでしょ。
話にならないじゃないですか。
 「保険」というくくりだけで、専門家ぶるところがきっと気になっていたんでしょうね。


 医者も弁護士も、専門分野はあります。それは一般の人より、医療や法律の仕組みは詳しいでしょう。でも具体的事案ついては頭の良い人ほど、「専門ではないので」と前置きするはず。そもそも知識を振りかざすようなことはしないでしょう。
 小なれど、“業界”というものがマンションにもあります。管理組合団体があります。「日本マンション学会」という学会があります。マンション管理士会や、管理会社、修繕会社など専門の業界団体や関連団体があります。
 ちょっとした知識を持つ人がリードしていくのはよいでしょうが、どこにも関係性を持たず、管理組合内部に潜み、ミスリードに導くマンション住民“エセ専門家”には注意が必要です。

大規模修繕工事新聞 22-10-154号