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防水改修の基礎知識②/工場製造で安定した『シート防水』

 「シート防水」とよく言われていますが、国土交通省の公共建築工事標準仕様書(建築工事編)における正式名称は「高分子系ルーフィングシート防水」と言います。
 この通称「シート防水」の定義は、「塩ビ樹脂や加硫ゴムを原料としたシートを貼り付ける防水」です。
 このシート防水の特徴は均質な厚み、施工の早さ、軽量性の3点です。

■シート防水の特徴
 アスファルト防水と比べると、工場製造されたシートを現場に持ち込み、施工するという点では、均質な厚みがすでに確保されるという点で強みがあります。しかし、アスファルト防水特有の積層の能力がなかったり、溶融アスファルトのような高い水密性というものがシート防水にはありません。
 代わりに、単層仕様になったことで、施工の早さと軽量性を手に入れたことがシート防水の特徴となっています。
 次に、公共建築工事標準仕様おいては、シート防水には2種類のシートと2種類の工法があります。シートは加硫ゴム系シートと塩化ビニル樹脂系シート、工法は接着工法と機械的固定工法です。

■シート防水には
シート種類:加硫ゴム系シート
 これは、いわゆるゴムの材料です。このため、伸び縮みができ、非常に柔軟性に優れた(復元力があり、下地亀裂追性が高い)材料です。また、外気にさらしていても耐候性に優れているため、非常に長持ちします。
 ただし、シートジョイント部は、接着剤や補助テープで処理されています。アスファルト防水であれば、同一の材料によってジョイントを処理しますが、ゴムシート防水の場合は、加硫ゴムとは別質の材料を使ったものでジョイント部を処理します。このため、経年によって徐々にジョイント部の劣化が危ぐされています。

 

 

 

 

 

 


シート種類:塩ビ樹脂系シート
 加硫ゴム系と異なり、シートジョイント部を熱や溶剤を使うことによって分子的に結合させ、シート同士を一体化させるため、非常に高い水密性を発揮します。
 ただし、塩ビ樹脂系シートは経年により硬化・収縮するという欠点があります。塩ビ樹脂は本来、硬質な素材であり、可塑剤という添加剤を混ぜることで柔軟性を持たせているのですが、その可塑剤が経年により徐々に揮散(成分が蒸発・気化して大気中に拡散)するため、やわらかさがなくなり、硬化していくという特徴があるのです。

 

 

 

工法:接着工法
 シートと下地を接着剤によって全面的に密着させる工法です。
 全面密着のため、非常に水密性が高いことが特徴として上げられます。また、面で接着するので、非常に高い耐風圧性能を有します。
 一方、下地に全面的に密着しているため、下地水分の逃げ道があまりありません。そのため、逃げ場を失った水分が、日光などによって温められて、気化した際に体積が大きくなり、「ふくれ」を発生させることにつながります。

 

 

 

工法:機械固定工法
 下地(躯体)に一定間隔でドリルを用いて下穴を開けた後、シート固定用具のディスクを置き、アンカーで固定。
シートとディスクを固定し、防水層を施工する工法です。
 下地に対して全面的に密着させる工法ではないので、多少の下地不良があった場合でもなんなく施工ができます。改修の際にメリットがあるといえます。
 また、絶縁工法であり、シートと躯体の間に隙間があるので膨れが発生しにくいというのもメリットとして上げられます。
 工法としてのデメリットは、ドリルを使って躯体に穴を開けるため、騒音や振動が発生する、改修の場合は既存防水層の機能が失われるといった点が考えられます。

大規模修繕工事新聞 22-10-154号