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「グループホーム退去」判決を読む

「グループホーム退去」判決を読む

 昨年1月の大阪地裁で下された、マンション内の社会福祉法人が運営する障害者グループホーム(GH)は住居とは認められないので退去せよとの判決の全文が法律雑誌に掲載された。

◇GHは全面敗訴
 GHは住戸を法人が15年前から借りて運営し、利用者は住民登録もしている。管理組合が使用禁止を求めた動機は、消防署からGHを設ければ消防設備の設置義務があることが指摘され、管理費用の増大が懸念されたためだ。
 ただし、実際には除外事項が適用されていて、直ちに費用の増加が現実化していたのではない。
 判決は管理組合の主張を全面的に肯定し、GHは住戸ではない、費用の増加は可能性だけでも重大、規約は障害者差別ではない、GH側に特別の影響ありの主張は認めないとGH側の全面敗訴となり、GHは当然控訴した。

◇判決は適切か
 このマンションは「住居専用」の規約があり、係争後にはGH禁止の規定も付け加えている(条文は高齢者のGHとなっていて障害者のGHではないが!)。
 たしかにマンション管理組合には広範な自治権があり、住戸の用途などを自由に決定する権利があることは事実だ。
 だが、15年前から住民登録もして使用し、家事援助などで出入りはあったとしても、住居としての使用でないといえるかという問題や、事後の規約改定が障害者差別にならないといえるか、特別の影響として当事者の承諾はいらないかなど、判決には適切かどうかの問題点も多い。

◇解決策はどこに
 われわれは管理組合団体であり、当事者の一方は管理組合であるから、とかく区分所有法と管理規約を中心にものを考える傾向があるのは避けられない。
 しかし、その範囲では双方ウインウインの解決策は出てこないのではないかと思われる。
 裁判で出された資料では、この種のGHは67%が共同住宅内にあり、32%はマンション内にあるという。
 そもそもGHは福祉事業であり、国や自治体が責任をもって実施、支援する対象でもある。
 そうすると、消防設備など費用の増加部分に自治体などの補助を考えるなどの支援策を考える、あるいは規制の適用外にするなど費用の増加を抑え、もう一方では関係者の障害者問題への理解を深めていただくなどで、裁判を超えた和解の道が検討できないかと思う次第である。
(NPO日住協論説委員会)


大規模修繕工事新聞 163号