「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

元従業員による管理組合財産の着服/[業界裏事情] “個人にかかる会社の圧力”

「会社の管理不足が原因ですが、具体的な話は差し控えたい」
 元従業員が管理組合の財産を着服し、国土交通省から監督処分を受けた管理会社が業界紙の取材に答えた発言です。
 「お相手に関連することなのでお伝えできない」「詳細についてはお話できない」―管理会社の対応は、このように事実を公にしない言葉で終始していました。
 元従業員とは40代のフロントマン、中途入社の社員A氏。事件のひとつは、1人の区分所有者から管理費等を預かり、それを管理組合の口座に入金せず、着服したものです。
 次に、大規模修繕工事において、A氏が管理組合を通さずに契約書に押印。印鑑の保管場所を知っているA氏が工事会社と勝手に契約行為を行いました。
 もうひとつは、漏水事故の保険申請忘れ。このミスを言い出せなかったA氏は管理組合にも上司にも報告せず、保険で処理したかのようにごまかし…。
 事件発覚後、着服金はA氏がそのまま持っていたのですぐに返却。工事契約については管理組合側が「適切な工事なら訴えない」とし、保険申請についても管理会社が示談を申し出たことなどから、管理組合と和解ができました。
 管理会社は国土交通省の処分を受け、「内部統制の強化を図り、再発防止に全力で取り組む」とし、社員の再教育を開始。A氏は「心身症」を理由に自主退職しました。

 一見、事件はA氏個人の単独行動と責任に尽き、管理会社も被害者かのように受け止められます。
 しかし、ある業界関係者は「問題をA氏個人に押し付けただけでは?」と違和感を口にします。「やったことは問題だけど、A氏も追い詰められていたんでしょう」。
 今回の監督処分では、その他にも複数の管理組合に対して重要事項説明の未実施・書面の未交付、会計収支書面の管理者等へ未交付などが指摘されています。
 A氏は管理業務主任者の資格を持っていません。主任者である直の上司の名義で、現場に行かされ、業績アップの圧力をかけられ…。

 「保険事故探してこい」
 「売り上げに結びつけろよ」

 前述の業界関係者によると、こうしたパワハラ的な言動は管理業界では珍しくないといいます。管理組合を置き去りに、とにかく数字を上げるためには工事を取らなければならない…。
 「保険事故が出ると上司が喜ぶ」。それが管理会社の本音だとも。
 A氏は医師から適用障害の診断を受けていました。そして、会社の圧力から逃げるように辞めていったのでした。

大規模修繕工事新聞10月号(23-10)