改訂された標準管理委託契約書
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2023年10月5日付第493号「論談」より
標準管理委託契約書が改訂された。
部分的な改善点が多いが、次回契約からはきちんと取り入れていく必要がある。
各管理組合でも注意を払っておいてほしい。今回は管理委託契約の基本を考えてみたい。
◆管理会社を規制
そもそも民事関係では契約自由の原則がある。
法律に反しない限り、どのような契約を結ぶとも自由である。
しかし、マンション管理に標準管理委託契約書が存在する意義は、専門業者である管理会社が素人の集まりである管理組合よりも契約関係で圧倒的に優位に立っているという現実のもとで、管理会社が横暴勝手ではなく、適正な契約をするよう規制する必要があるからである。
◆「標準」は最低基準
したがって名称は標準管理規約契約書だが、これが平均基準というのではなく、管理会社が守るべき最低限の基準を示したもので、これより管理組合に有利な委託内容であっても差し支えないが、これを下回る内容は許されないという性格のものである。
管理組合では、この標準管理委託契約書をよく研究し、自己の条件に合致した契約内容を見出してほしい。
◆カスハラ問題など
今回の改訂について、2つの問題を指摘したい。
1つは、逗子での「のり面崩落事故」を受けて、管理会社の管理業務の範囲を明確に規定するよう確認するとのコメントが加わったことである。
本来専有部分を除く共用部分と敷地が管理会社の管理する業務の範囲であるのは当然だが、逗子事故のマンションの管理会社は、損害賠償訴訟で管理組合が責任を認めて和解したにもかかわらず、なお当該事故斜面を管理業務外だと主張し、裁判を続けている。
こういう言い逃れを許さない上でも重要な点である。
2つ目は、今回の改訂の目玉と評価されているカスハラ対策である。
管理会社に対するカスタマーハラスメントが存在し、一定の対策が必要なのは確かに事実である。
しかし、冒頭に示した管理会社が適正な契約を結ぶためという標準管理委託契約書の性格を考えるとき、管理会社の強い要望で入れられたこともあわせ、疑問を感じざるを得ない。
ときにフロントマンや管理員のパワハラもあることを考えると、そのような事態には契約ではなく、直接、厚労省のマニュアルを活用して対応すればよい。この点で改訂された標準管理委託契約書やコメントが乱用されないよう望むものである。 (NPO日住協論説委員会)
大規模修繕工事新聞167月号(23-11)