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防水・止水の基礎知識/ マンションの漏水の技術的解説(3)

マンションの漏水で最も厄介なのが天井からの漏水です。これは屋上防水の不具合で発生しますが屋上の面積が大きいほど原因が判明せず解決までに数年を要すことも珍しくありません。天井からの漏水の最も早い解決方法が樹脂注入です。

 マンションの屋上スラブには右図のようにクラックが入っています。
 これは新築時にコンクリートが収縮して発生します。したがって、この図で分かるように最上階で最も漏水しやすいのは角部屋ということになります。
 最上階の四つ角には2重、3重にクラックが発生していることがほとんどなので樹脂注入の際はクラック全てを見逃さないようにしないと施工後に漏水が再発してしまいます。
基礎知識5 サッシ廻りからの漏水
 マンションの大規模修繕工事で最も直りにくい漏水がサッシ廻りからのものです。これはその構造に起因します。
 サッシは新築時に下の写真の様に一回り大きく開口して鉄筋で取付け、サッシと躯体の隙間はモルタルで埋めます。
 このモルタルと躯体コンクリートの界面は打継と呼ばれる接着不良を起こしやすい個所です。各階の界面などの打継はシーリングで防水されますが、サッシ廻りはサッシの端部しかシーリングをしません。
 そのためサッシ廻りにクラックが発生すると躯体コンクリートとの界面付近に漏水が起こりやすいのですが、特にタイル仕上げのマンションの場合、この界面がタイルの下に隠れていて事前に工事業者に漏水のあることを伝えている場合を除き、通常は大規模修繕中、何もしません。
 内装材が濡れるほどの漏水があれば居住者が気付きますが、石膏ボードの裏側に小さな漏水があっても結露と区別がつかずなかなか気づきません。
 これが内装工事中に発覚すると内装工事がストップしてしまうだけではなく、マンションの売買を伴う場合は説明義務、賠償責任が発生し売買契約を解除されてしまう場合もありますので充分ご注意ください。

 補修方法としては樹脂注入が最も効果的で外部足場も必要としません。

 

大規模修繕工事新聞 167号 23-12

 

① 天井のクラックに対し45°の角度で穿孔② 注入樹脂が施工中に漏れないよう目止めを行う③ 注入プラグ(逆止弁)の取り付け④ 注入プラグからクラックに樹脂を充填して施工完了

屋上スラブのクラック

樹脂を充填する資材

最上階の四つ角には2重、3重にクラックが発生する

最上階の四つ角には2重、3重にクラックが発生する

接着不良を起こしやすい打継箇所

補修は樹脂注入が最も効果的