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長寿命化の実現へー塗料の役割とは/4回 防水とは何か③

大切な資産(マンション)の価値の向上、長寿命化につなげるため、塗料に何ができるのか、どうすればよいのか―塗料という材料の観点から考える連載企画の4回目です。最後となる今回は、「下塗りを守り、建物を守る」上塗材に焦点をあてます。
 下塗り塗膜の性能を維持する役目を持つ上塗り塗料は、7年から8年ほど前まではアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂と大きく分かれていました。
 これまで大規模修繕工事を行ったマンションでは、このどれかを採用されているのではないでしょうか。
 令和の年代になり、新しい技術による「ラジカル制御塗料」が商品化され、多くの管理組合で検討、採用がされています。この新しい技術、「ラジカル制御」技術の実用化により、上塗り塗料の選択の幅が大きく分けて6種類ほどに増えました。
 ここで、ラジカル制御とはどういった技術なのかについて説明します。
 塗料塗膜には、「酸化チタン」という成分を多く使用しております。
 酸化チタン自体は、塗料の歴史上、以前より現在に続くまで、ごく一般的に当たり前のように塗膜の中に使われている成分です。
 この酸化チタンに、太陽光に含まれる紫外線が当たると、「ラジカル」が発生します。
 このラジカルが影響を与え、塗膜は劣化するということが分かっていましたが、令和年代以前ではなかなか決め手となる有効な技術が普及していませんでした。
 しかし現在、新しい技術、新しい成分の採用により、塗膜を劣化させる要因であるラジカルの発生を制御し、劣化の進行を遅らせることを実現した塗料:ラジカル制御塗料というものが実用化され、世の中で活躍しているのです。
 具体的には、ラジカルの発生源である酸化チタンをコーティングすることで紫外線が直接当たらないようにする新技術です。この技術で、根本的な対策が実現しました。
 もう1つの新技術は、それでも発生してしまうラジカルに対し、今度は暴れ出さないように抑え込む新しい添加剤、成分の開発・採用です。
 大きく分けてこの2つの効果によって、従来のシリコン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料は、それまで以上の力を発揮できる製品が今新しく出てきているのです。
 新しい性能を持つ下塗り塗料も、下塗り自体を保護する役割の上塗りとバランスを取ることで性能・機能を長く維持することができ、「長寿命化」に効果があると考えます。

 マンションの長寿命化、建物の機能の回復、高付加価値の付与、そしてその維持には水・水分への対策、防水がとても大切です。
 そして、防水は、屋上やバルコニーなど上からの影響だけではなく、マンション全体に関わることです。
 下塗材は塗膜の厚み、柔軟性、上塗材は新技術による進化がポイントです。ただし、どんなにいい材料でも、下塗材と上塗材とのセットで採用してください。
 皆さまの大切なマンションの長寿命化の実現に向け、お役に立てれば幸いです。【おわり】

大規模修繕工事新聞 2024年8月 176号