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全建センター 給排水設備改修相談室

全建センターでは、マンション給排水設備工事を専門的に取り扱ってきた木村章一氏を室長に迎え、給排水設備改修相談室を開設しました。大規模修繕工事新聞では、全建センター恒例の管理組合オンラインセミナーより、木村室長が講師を務めた「マンション給排水管改修工事『見積書の見方』」を数回に分けて、掲載します。
 詳しくはVimeoによる第71回管理組合オンラインセミナーの動画配信を視聴してください。全建センターのホームページから閲覧することができます。

マンションの給排水管は、漏水事故が起きたらたちまち居住者の日常生活に大きな影響を与えます。日常生活の予定が全てストップしてしまいます。
 外壁塗装工事のように、傷んでいるところが目に見えて、全て予定を組んで工事を行えればよいのですが、給排水管の場合は、目に見えない壁や床の中にあるものですから、不具合もある日、突然に起きるということになります。
 このため、目に見えないだけに、予防保全が非常に望まれる部分です。
今回はその目に見えにくいマンションの給排水管改修工事の見積書の見方について、少しでも『ホントのこと』がわかるように説明させていただきます。
 今回の事例マンションの工事説明会資料から、見積書の見方を説明します。
 建物規模としては比較的小さい規模の地上3階建て27戸のマンションです。所在地は首都圏で、今回の給排水管改修工事は築41年目で行っています。
 見積書〈全体工事費〉の合計が4,100万円。
戸当たりにすると150万円くらいになります。
 ただし、築40年超になると、内装も変わっていたり、リフォーム済みの住戸もあるので、必ず工事前に入室調査を行います。この入室調査をもとに最終的に増減清算を行うのですが、今回の事例ではリフォーム済みの住戸で3%から5%アップでした。

 〈全体工事費〉から、「1共用部給水立て管更新工事」をピックアップし、内訳を表示しました。一般的に、こうして機器類や配管材等、外部の商社などから買うもの、その下が工事費という構成になっています。
 今回、共用部給水立管に使う配管材料は、ステンレス管を使っています。
 次に「同上継手類(拡管式継手)」「配管支持材料」「消耗品雑材料」とありますが、これって何?ということで、管理組合の皆さまがわかりにくいだろう項目をピックアップして、見ていきたいと思います。


 「同上継手類(拡管式継手)」
 継手は、文字通り配管をつなげていく器具です。これをまとめて「一式」で金額を入れていますが、今回、使用する配管材料が全部で73,200円、それに対して「同上継手類」が292,800円。
継手類「一式」ということで、配管材料費の合計の400%が今回、継手類として計上されています。
 工事会社が見積書を作るときは、これまでの経験値、その会社の掛け率などで数字を入れるのが一般的です。

使用する配管材料費の合計73,200円×400%=
「同上継手類」292,800円

「配管支持材料」
 配管は、配管しただけじゃなく、揺れたり外れたりしないようにきちんと支持固定をしなければなりません。こちらは当たり前ですけど、掛け率ではなく、長さについて支持金物を取り付けていくということになります。   今回の見積もりのケースでは、使用する配管の長さは全部で38mに対して配管支持材料は60,800円という単価が入っていますので、配管長さ38mに1m当たり平均で1,600円の支持金物代が入っていることになります。

使用する配管の長さ38m×平均単価(m)1,600円=
「配管支持材料」60,800円

 配管の指示固定間隔については、配管の太さや材料に応じて決まっています。
 口径の大きさによって何メートルに何カ所だとか、配管の種類によって何カ所だとか決められています。〈国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書」参照〉
 ステンレス管だったら2mピッチがポリブデン管や樹脂管だったら0.7m以下など。硬い材料はそれほど支持固定しなくても大丈夫ですが、動いていく柔らかいものは短く組んでいく。このようなルールの中で支持金物の見積もりを作っていきます。


「消耗品雑材料」
 消耗品雑材料とは、配管工事作業に伴い、使用する雑材料のことをいいます。具体的には、カッターの刃、配管接合剤、潤滑油、テープなどです。見積書の中にいちいち配管切断用のカッター代とか入らないものですから、全体工事のボリュームに合わせて組み込みます。
 見積もりの作成では、その項の工事費に対する掛け率で計算することが一般的です。

 今回、「1共用部給水立て管更新工事」の工事費1,862,000円に対し、「消耗品雑材料」は36,200円となっています。工事費で割ると0.01944ですから、だいたい2%くらいが雑材料ということです。この掛け率は、工事会社各社で、だいたい定められていると考えられます。

工事費1,862,000円×2%=37,240円 ➡
調整等により36,200円で計上


※次号では〈給水管⑵〉として、「2メーター廻り給水管更新工事」の見積もりの内訳を見ていきます。


大規模修繕工事新聞 178号2024-11

給排水設備改修相談室長

全建センター筆頭理事:木村 章一
・一級管工事施工管理技士
・一級建築施工管理技士