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区分所有法改正に向けアピール 「得られる損害賠償金は、瑕疵の補修に当てられるべき!」/欠陥住宅被害者全国連絡協議会

★欠陥住宅全国ネットが法改正に求めるアピール
・ 区分所有権が譲渡された場合には、共用部分に係る損害賠償請求権等は、当然に譲受人に移転するものとする規律を設けるとの方法で、改正がなされるべきである。

 次期通常国会で提出が見込まれる区分所有法改正案に
は、共用部分にかかわる損害賠償請求権等の行使につい
ても含まれていますが、管理者(理事長)が現在の区分所有者を代理して、請求権を追行することができない規定となっています。
 改正案は、新築購入した区分所有者が後に区分所有権を売却した場合でも、元の区分所有者が損害賠償請求権を留保できるとされています。このため、建物に瑕疵があったとしても、転売が行われた場合は、新築購入した区分所有者(元の区分区分所有者)から現在の区分所有者に請求権を譲渡されなければ、瑕疵を補修するための費用を100% 得られない余地が残されることになりま
す。

区分所有建物の共用部分に関する損害賠償請求権の問題
○平成14 年区分所有法改正による規定
 管理者に「共用部分等について生じた損害賠償金」の請求および受領に関し、区分所有者に代理権が与えられるとともに、管理者に任意的訴訟担当としての訴訟追行権(当事者適格)が認められた(法26 条2項、4項)。
➡法務省による改正の趣旨説明
 受領した損害賠償金は共用部分等に生じた損害の回復の費用に振り向けるべき場合も少なくないことから、管理者が一元的に請求し、または受領できることができるものとすることにより、建物の適正な管理に資するようにした。
○東京地裁平成28 年7 月29 日判決
 区分所有権の転売が行われている場合、管理者は旧区分所有者を代理することはできない。また、区分所有権の転得者は売主から債権譲渡を受けない限り、瑕疵担保責任にかかる損害賠償請求権を有していないから、管理者はこれを代理行使できず、区分所有者全員を代理できない以上、訴訟追行権はなく、当事者適格を欠く。
➡この裁判例の考え方によると、転売が生じているマンションでは、事実上26 条4項に基づく訴訟追行は不可能となり、14 年法改正の趣旨が没却されることになる。

今回の改正案で問題は解決するか
1.想定される問題
⑴ 旧区分所有者から債権譲渡を受けることは困難で、現実的ではない
⑵ 旧区分所有者に通知すれば、損害賠償金を瑕疵の補修に用いることに反対される可能性がある
⑶ 旧区分所有者が管理者に「賠償金を渡せ」と要求された場合、管理者はこの要求を拒めない
⑷ 瑕疵の補修が実現できない
2.あるべき法規制
 共用部分に関する損害賠償請求権については、以下の法適用が可能となるような法改正が必要といえる。
①現在の区分所有者のみが全体で一元的に請求権の行使をする
② 請求の結果、得られた損害賠償金も、共用部分の瑕疵の補修に当てられるべく、現在の区分所有者(ないし
管理組合)に帰属する
③ それらは、法改正後の新築マンションに限らず、既存マンションも含めて、一律に取り扱われるものとする
 今回の改正案で問題は解決されません。このため、欠陥住宅全国ネットでは、マンションの売買において、損害賠償請求権が元の区分所有者から現所有者に当然、承継されると考え、現所有者全員に賠償金が入り、得られた賠償金は瑕疵の補修に当
てられる法改正を提案しています。


大規模修繕工事新聞 181号2025-1

改正法案の問題点とその解決方法を説明する欠陥住宅全国ネット幹事長・神崎哲弁護士

集会にはNHKで放映されている『正直不動産』原案者・夏原武氏も参加した