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第74回管理組合オンラインセミナー 全建センター『マンションAI』とは…進化するマンション管理組合運営情報

一般社団法人全国建物調査診断センターはこのほど、ニューヨーク支部監修のもと、東京大学松尾・岩澤研究室の原田憲旺氏とマンションに特化した独自生成AI『マンションAI』を共同開発しました。
 16年分の大規模修繕工事新聞、74回分の管理組合セミナー、54冊の全建文庫、大規模修繕工事コンサルタント、施工会社、全世界のインターネット情報がすべて網羅されます。
 今回のセミナーでは開発した原田氏により、有効な活用方法を解説してもらいます。


「生成AIの仕組みと活用方法」

1)AIとは
 最近さされているものはChat GPTのような言葉を話すようなものかもしれませんが、古くからはカーナビのように経路選択、どのように道を選べば最短で早く着くことができるのか、Googleマップのようなカーナビシステムも、ある時代においては最先端の技術としてAIと呼ばれていました。
 近年ですと、プロの囲碁棋士に勝ったALPHAGO(アルファゴ)や、テスラ社が開発する自動運転のシステムなどもAIとして指されるものかなと思います。
 ここ近年、「生成AI」「Generative AI」という言葉がよく使われていますが、これらの簡単な定義は、文章や画像、音声などの高品質なコンテンツを生み出す人工知能システムとして呼ばれています。
 特に「生成AI」と呼ばれるゆえんとなっているのは、ここ2、3年の技術進展によって目を見張るほどの生成クオリティになったため、この言葉が「生成AI」として使われているといえます。
2)生成AI
 「生成AI」は入力に応じてコンテンツを生成できるものです。
 例えば、画像生成で説明しますと、「ジブリ風の駅」という文章を入れると、まるでジブリスタイルのような駅の画像ができるものがあります。
 また、言語生成においては、与えられたテキストからその答えを生成するように、「生成AIについての授業のアウトラインを考えて」という指示文を与えたところ、ちゃんと授業のアウトラインを考えてくれるというように、入力に応じてコンテンツがいろいろ生成できるのが「生成AI」です。
3)大規模なデータと学習
 1世代前のChat GPTのGPT-4と呼ばれるモデルは約1.3億冊の文章を読んでいると報告されており、東大図書館が約130万冊、国会図書館が約4,700万冊の書籍を所有しているというデータと比べ、かなり膨大な数のデータを見て、生成AIが学習されています。
 大規模な計算資源でモデルを学習する際には、高性能なコンピューターを2万5,000基ほど集めて100日ほど学習させるとChat GPTができることとなります。
 また、近年X社がChat GPTのようなモデルを開発したのですが、コンピューターを20万基ほど使っています。それぐらい大規模なコンピューターで訓練されているのです。
 資本を投下すればどんどんいいモデルができるので、資本の勝負というところが今の「生成AI」の競争の現場であります。
4)「生成AI」の言語モデル
 今までこのような文字が続いたから次の文字はこうなるはずだというものを数式で表現します。
 例えば、「日本の首都は?」というような文章が与えられたら、東京、大阪、鹿児島などいろいろ候補の中から、自然な文章として日本の首都は「東京」の文字を選べばスコアが高くなるように学習されているものが言語モデルとなります。
 そして、ウェブ上の文章のデータをもとに、ひたすら次の単語を予測し、その予測が間違っていたら予測が当たるようにひたすら修正するというものが言語モデルの学習になります。
 例えば、「我が輩は猫である」という文章がウェブ上にあったところ、言語モデルがどのように学習するかというと、まずは「我が輩」というものをモデルに入れます。
 その次に、モデルの予測として、我が輩はの「は」を予測できたら正解です。次に「我が輩は」と入れ、次の単語を予測させたときに「犬」とモデルが予測してしまったら、正解は「猫」なので、ひたすら次の単語の予測が当たるように修正させていくものが言語モデルの学習になります。
 これをウェブ上のデータで、ひたすら次の単語を予測させていくことでモデルは学習させていきます。
 次に大きな学習のフェーズとして、人間と対話できるようにするため、それ専用の訓練を行います。それがクエスチョン&アンサー、質問と回答のデータで、人から与えられた文章に対して、その答えとなる応答ができるような学習をします。
 この「生成AI」言語モデルの中身は膨大な掛け算や足し算などの組み合わせになっており、数千億や数兆回の計算を行うパラメーターが内部で動いて、最終的な出力結果が得られる仕組みになっています。
5)プロンプティング(指示出し)
 プロンプティングとは、生成AI言語モデルが学習した知識を生かして、特定のタスクを解くようにモデルの振る舞いを指示するものになります。
 例えば「日本語に翻訳して」とか、「5歳児でもわかるように説明して」とか、「生成AIについての詩を書いて」というように、一つのモデルに対しても、いくつか聞き方を変えることでモデルがさまざまな返答をします。
 そのような指示が、プロンプティングと呼ばれる技術です。
ここの指示出しがうまくいかないと、狙った出力が得られないということになります。
 プロンプティングのコツは、文字でしか情報を伝えられない相手に対して、わかりやすくどのような作業をしてほしいか伝えるような場面を意識してモデルに聞いてみるということが大事です。
6)「生成AI大規模言語モデル」の弱点
 弱点の一つがハルシネーションと呼ばれるものです。ハルシネーションとは、事実としては間違っているのに、AIがもっともらしく聞こえる出力をしてしまう現象のことです。
 事実でないことが文脈として与えられても、次の文字はこうなるはずだと、もっともらしい口調で補完、予測してしまうため、AIが嘘をついてしまうことがあります。
 もう一つはナレッジカットオフで、知識のアップデートが途中で止まってしまうというものです。
 もしモデルが2024年度に学習されていれば、2025年度に新しく出たデータはモデルに学習されていないため、ちゃんと答えられない。また、その知識がデータに出てこないものであれば、モデルが覚えられない弱点となります。
 これらの弱点をうまく軽減する技術として、RAG(RetrievalAugment Generationリトリーバル・オーギュメンテッド・ジェネレーション)があります。
 例えば「大谷翔平の最新のホームラン数は?」と与えられれば、「大谷翔平・ホームラン・今シーズン」のようにWeb検索し、出てきたWebページに飛び、最新成績などが載っているデータからテキストを抽出します。抽出したテキストデータをモデルに入れることで、最終的に大谷翔平選手が今シーズン何本のホームランを打っているかということが答えられるということになります。
 検索と結びつけた「生成AI」の活用方法がRAGです。
7)全建センター「マンションAI」のシステム
 大規模修繕工事新聞、全建文庫の書籍データ、大規模修繕Q&Aデータ等、上質な信頼性の高いデータをもとに、疑問に答えるAIを開発しました。数秒で膨大な数の情報から関連情報を検索して回答する流れになります。
 ユーザーからの質問があったときに、その質問に対して全建センターのウェブサイトに載っている情報をウェブ検索します、また大規模修繕Q&Aから類似事例を検索します。
 そして、大規模修繕工事新聞、全建文庫の書籍データに書かれている記述から関連文書というものを検索します、それらの検索を組み合わせ、検索して得られた関連する文書を得て回答を生成するというのが今回のシステムになります。
 また、文書での問い合わせが可能で、「管理会社を変更した場合、どのような相談窓口がありますか?」という質問に対しても、ウェブ記事やFAQのデータ、書籍のデータから関連文書を取得してきて、その相談窓口を案内するというような回答が行われます。
 今回開発したシステムを使いこなすコツとしては、まずは聞いてみる、利用してみるのが一番かなと思います。

「マンションAI」の使用開始とその具体的な手順

マンションAIの仕組みと特徴
 全建センターが今回開発した「マンションAI」は、15年間以上にわたって蓄積してきた大規模修繕工事新聞の情報、全54冊を超えた全建文庫の内容、マンション管理組合セミナーのレジュメ、これまで所属のコンサルタントや協力弁護士などに寄せられた質問および回答など、クローズな情報ボックスに入っている情報をまず優先的に検索、取り組み、ついで「マンションAI」がインターネットにある情報から自動的に検索したものと合わせて整理したものを回答する仕組みです。
 今後は、大規模修繕工事に関連する資材メーカーや信頼のおける工事会社などの情報も取り込んでいく予定です。
 また、国土交通省や各都道府県市町村などから発表されるニュースリリースや調査資料など、公開された情報などもその都度取り込み、迅速かつ精度の高い情報の蓄積に努める方針です。
 したがって、『マンションAI』を利用することによって、これまでの単なる検索エンジンでは得られなかった、より精度の高い情報収集が簡単にできることになっていきます。
 この「マンションAI」を活用する管理組合と、そうでない管理組合では、今後大きな差が生まれてくることになるといえるでしょう。
マンションAIの利用制限
 「マンションAI」はクローズで正確な情報を重視している関係で、利用できるメンバーを限定しています。すなわち、全建センター設立15周年を記念して昨年スタートさせた全建Libraryの登録メンバーに限定させていただきました。
 ただし、より多くの管理組合様に活用していただくため、今回、管理組合の代表者が全建Libraryに登録していただくだけで、そのマンションの全居住者がマンションAIと全建Libraryを利用できることにしました。
 全建Libraryの費用は月間300円ですから、例えば100戸のマンションの場合、戸当たり費用は月間3円ということになります。
 「マンションAI」の利用制限は、まじめに運営している管理組合様に限定させていただくことで、「マンションAI」の健全な普及に資するためですので、ご理解くださいますようよろしくお願いいたします。
『マンションAI』の使用開始とその具体的な活用手順

 

① まず全建センターのホームページより、「全建Library」にアクセスしてください。
 画面左側の茶色のドアをクリックしてお入りください。次に暗証番号が求められますから、管理組合役員から知らされた暗証番号を入力してください。
 もしまだ暗証番号が知らされていない場合は、管理組合役員に相談して全建Libraryに登録して暗証番号を取得するよう相談してください。
 全建Libraryに未登録の場合は、右側の緑色のドアから入ると、全建Library登録サイドが開きますので、こちらから登録してください。
 すでに管理組合の代表者または役員が全建Libraryに登録済みの場合は、新たな登録は不要です。
② 暗証番号を入力すると、全建Libraryのトップページが開きます。全建LibraryスタートOKの緑色のバナーをクリックして全建Libraryにお入りください。
 トップページにはこれまで開催した管理組合セミナーの一覧が表示されているはずです。
 必要な回のバナーをクリックすると、その回のVTR、
YouTube映像またはvimeo映像を見ることができます。
 また、左側にある目次をクリックすると、それぞれの現在から過去までの資料を閲覧することができます。
 大規模修繕工事新聞では、これまでの新聞を電子ブック版で読むことができます。また、大規模修繕工事新聞記事をクリックすると、最新の記事から過去の記事まで閲覧することができます。
 全建文庫では、現在まで発行された全54冊の表紙が一覧表示されますから、それぞれの書籍を電子ブックで読むことができます。
③「マンションAI」の利用方法です。
 全建Libraryの各ページの上部に「マンションAI」のバナーが表示されていますので、ここをクリックして『マンションAI』利用画面を開いてください。
 次に開いた画面下の窓にプロンプト(指示出し・質問)を入力してください。プロンプトとは、「マンションAI」を利用する際、利用者が入力する指示や質問のことです。
 キーワードまたは文章で入力してください。事例として、「修繕積立金 不足 対策」とキーワードを入力して、青いバナーの送信をクリックしてください。
 すると、30秒から1分で整理された回答が表示されます。画面には表示サイトのURLも表示されますから、ここをクリックするとそのサイトが表示されます。
 次に、最近大規模修繕業界を騒がせている「大規模修繕工事談合問題」と入力してみました。このように最新の情報も確実に拾ってきて、回答してくれることがわかります。
 以上でお分かりのように、マンションAIを上手に使いこなすには、プロンプト、いわゆる指示出し・質問の書き方が重要です。
④同一マンション居住者なら全員利用OK
 マンション管理組合の代表者が全建Libraryに登録することで、当該マンション居住者全員が全建Libraryを利用でき、『マンションAI』を使用できます。
 生成AIを使いこなせるかどうかが、個人としても管理組合としても大事になっています。
 マンション管理組合の運営もマンションAIを活用することによって随分無駄が省け、円滑な運営ができるようになります。
 全建センターとしては、今回のマンションAI開発を手掛かりに、マンション大規模修繕工事の多くの分野で生成AI活用によりマンション高齢化問題や修繕積立金問題などの諸問題の解決に寄与していきたいと考えています。

全建文庫最新刊「管理組合を変える『マンションAI』の活用法」電子ブック版閲覧無料開放 
//z-book.jp/zjt54/
閲覧暗証番号:250501DdGg
※紙書籍はAmazonで購入出来ます。

 

大規模修繕工事新聞 2025-05(185号)

 

全建文庫最新刊「管理組合を変える『マンションAI』の活用法」電子ブック版閲覧無料開放 
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