国土交通省の主導により、合法で利益相反行為が認められようとしています。
「令和7年マンション管理法改正に伴うマンション標準管理者事務委託契約書の策定等に関する検討会」が6月に設置され、標準管理者事務委託契約書が11月に公表される予定です。
「マンション標準管理者事務委託契約書」。
管理会社が管理者としてマンションに入り込み、理事会方式をなくして、利益相反行為でも何でもできるようにする、国のお墨付きの新たな標準委託契約書です。
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管理組合員の中から輪番制などで理事を選任し、その理事の互選で理事長を指名する。その理事長が区分所有法の「管理者」と位置づけられ、管理組合運営をしているのが一般的なマンションの例です。
「理事長」「理事会」は管理規約の用語で、法律にはありません。区分所有法にある「管理者」が権利関係その他、義務・責任を置くことになります。
区分所有法では、理事会がなくても管理者がいれば、管理組合運営ができるわけです。
そして、この法律上の管理者には資格要件がありません。区分所有者以外でも、自然人でも法人でもなることができます。つまり管理会社でもなることができるのです。
この制度を利用して、管理者の地位に管理会社の社員が就くという管理業者管理者方式を進める管理会社が急増しています。
管理会社にとって、交渉相手の理事会がなくなって、自分が管理者となり、組合資産を自由に使えれば、それは都合がよいでしょう。
そして、世の中の流れに沿って、区分所有法改正も手伝い、管理会社が管理業者管理者方式で管理組合と契約する場合の標準的な書式を決めようというのが「マンション標準管理者事務委託契約書」なのです。
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管理業者管理者方式となり、理事会がなくなるとどうなるでしょうか。
建物の保存行為(修繕工事)を発注する際、理事会がないので、管理者の判断で工事の発注ができます。当然、グループ会社が受注します。
管理組合の通帳と印鑑。現在、通帳は管理会社で、印鑑は理事長が保管するマンションが多いと思いますが、管理業者管理者方式では理事長職がないので、管理者が保管することになります。
管理会社が通帳と印鑑を持つということです。管理会社では、委託業務を行う部署と管理者管理を行う部署が異なるため、一線を引いているという説明をしていますが、同じ会社でそんな説明が通るのでしょうか?
大きな費用がかかる大規模修繕工事は委員会を作って、住民の意見を入れて決めるそうです。理事会の人材がいないのに、委員会で人が集まるでしょうか?
委員会を作成したところで、総会は管理者が招集し、委任状を集めれば、管理者が作成した工事提案が多数決で通ってしまいます。
管理者の決めたことに反対しようにも、総会は原則管理者に開く権限があり、不満な人は、法律上、区分所有者の1/5以上、かつ議決権の1/5以上を有するものを集めなければなりません。
管理業者管理者方式が通るようなマンションで、この1/5を集めることができるでしょうか?
コミュニティができているマンションであれば、そもそも管理会社のいいなりになっていないでしょう。
管理業者管理者方式は管理会社の利益相反行為やりたい放題方式。それが、何度も言いますが、「マンション標準管理者事務委託契約書」です。
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管理組合としての対処方法は、管理会社による管理業者管理者方式を認めないことです。「マンション標準管理者事務委託契約書」とは無関係な委託契約だけを管理会社と理事会理事長が締結することです。
実は一部の組合員を取り込み(たぶん利益をつかませるのでしょう)、「管理会社に全部任せた方がよい」と触れ込み、管理業者管理者方式「マンション標準管理者事務委託契約書」に誘導するケースが増えています。
私どもの相談でも、総会で管理業者管理者方式が議決された後に気づいて、相談に来られた事例があります。「前理事長が管理会社とつるんで、管理会社による管理業者管理者方式に決めてしまった」。
しかし、総会を通ってしまったら、もう遅いのです。
前述しましたが、管理方式を逆転させるには、1/5区分所有者・議決権の総会における決議が必要なのです。
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修繕工事会社の談合問題、なりすまし問題・・・すべては管理組合の無関心が最大の原因です。
営利企業に「お任せ」すれば、営利なのですから、それだけ費用が飛ぶのは当然です。あとから気づいて文句を言っても、論理的ではありません。
消費者が黙っていれば、国を含めてどんどん合法的な利益相反行為ができてしまいます。
泣くのは消費者当人です。管理費、修繕積立金がどんどん値上がりし、取られていきます。
それでもよいですか?何もせずに、管理会社任せにしていると、泣くのは、あなたです。
<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2025/10/02>
大規模修繕工事新聞 2025-10月 190号




