一般社団法人全国建物調査診断センターが2月22日に配信開始した第79回管理組合オンライン・セミナーを抜粋 ・採録する3回目です。最後に、給排水管改修工事を行った管理組合・馬場満喜榮理事長と全建センター給排水設備改修相談室 ・木村章一室長との対談を採録します<編集部で講演録を再構成しています>。

木村 共用部分の給排水管改修工事、専有部分の給水給湯管こうしん工事を一気にやりました。一番苦労したことは何でしたか?
馬場 私の理事長任期中(残り半年)に後戻りできない形にするにはどうしたらよいかと、思い悩んだことでした。
2013年、前の管理会社から配管更新の必要性についての提案があったのですが、8年間棚上げにされた状態で、私が理事長在任中のこのとき、この段階でやらないとしたら、今後いつ配管更新ができるのか、と思って危機感を感じ、何とかしなければと思いました。
今でしたら、工事費が高騰しており、いい時に行ったと思っています。また、あの時行わなければ、漏水件数が増え、その対応に追われていたのではないかと推察します。併せて、工事費の高騰から修繕積立金不足が考えられ、工事の実施そのものに支障が生じていたかもしれません。
木村 馬場さんの任期中に目処をつけるということですが、具体的にはどんな内容だったんでしょうか?
馬場 総会で承認を得て、ある程度GOが出るところまで持っていければ、なんとか後戻りできないんじゃないかな、ということです。
更新工事を推進するためには、入札方法、応募会社との価格交渉、工事仕様のすり合わせ、長期的な修繕積立金の推移・確認、日程管理など企画管理の要素と専門家との技術的すり合わせをしなければなりません。
難しい判断や管理漏れの防止などを考えると、素人の集まりの理事会では判断が難しく、時間ばかり経過する恐れがあることから、私が現役時代の経験を活かすことで促進できると考えました。

木村 任期中に目途を付けると言われましたが、馬場さんの経歴と判断力は?
馬場 私は現役時代、購買部門を中心に企画立案業務でいろんな角度から多面的にチェックする習慣があり、中期計画の立案・契約締結交渉・価格査定・交渉、取引先評価など実務もあるので、工事計画の推進・調整業務は他の方と比べ経験があると思っています。
即断即決は悪い意味で使用されがちですが、「早い判断と正しい判断は矛盾しない」です。
玉石混合の情報を「信用はするが確認する」の気持ちで、自分なりに情報を確認し、整理し、問い合わせに対し即自分なりの回答できるように心がけてきましたので、早い決断ができたと思います。
木村 馬場さんができないと判断された理由は?
馬場 管理組合の理事会は素人の集まりで、なおかつ1年間の輪番制ですから、知識も判断力も乏しく、工事内容の理解不足や判断の誤りが予測され、意思決定に時間がかかることは明らかです。
木村 9月末の管体検査、11月検査報告、12月末改修工事と、基本コンセプトの期間がすごく短かったですがいかがでしたか?
馬場 やはりこういう更新工事は、管理組合が中心になって、自分たちが納得できるような形で進めたいというのがあります。
そういう考えでしたから、自分たちの考えとコンサルタント会社の考えとのすり合わせを進めていく形になったと思います。
木村 短い期間で、一緒に水道局に行ったり、市の道路局に行ったり、あと住民説明会も6回やったので、お互いに大変疲れたな、という感じでしたよね。
馬場 住民説明会は、組合員の皆さんの理解なくして、工事は実施できないと思っていましたから、具体的に説明して、より理解を深めてもらうということが全て、工事の成功のためであって、住民の皆さんへの貢献だと思って、そういう感じで動いたつもりですが、疲れましたね。
木村 それでも臨時総会はだいぶ荒れましたね?
馬場 自分が納得していれば、どのような質問が来ても、それに対して対応はできます。
一部で、猛烈な反対をする人がいましたが、おかげで説明会では検討している詳細な内容を皆さんにお知らせできたので、より理解が深まったと思います。
結果的に工事の必要性の理解が得られたようで、更新工事とその予算の決議が通りました。
木村 それでは更新工事を行うにあたり、一番心がけたことはなんですか?
馬場 管理組合の役割というのは、住民の方が 「住んでいてよかった」と思えるよう、環境を作るということが一番大きいので、の工事にあたっても重要なのは、組合員の皆さんが「やってよかった」と思えるようにすることでした。
それから、全建センターさん、工事会社さんが気持ちよく仕事ができ、更新工事が円滑に進められるように心がけたつもりです。
何でも施工会社にお願いすることはせず、管理組合が行うべきことはきっちり行い、施工会社さんや全建センターさんが困らないで、スムーズに工事推進できるように心がけました。
木村 実際結果本当にそうなったなって思います。多くのマンションでは、専有部分の立ち入り同意書をなかなか出してくれない。それを管理組合の皆さんが一件一件、インターホンをして同意書を出すように説得してくれたこともすごく大きかったなというふうに思っています。
馬場 専有部立入りについて、同意書の作成・配布・回収・回収フォローは一般的に施工会社が行っているようですが、管理組合も一緒に行いました。
木村 今回の共用部分の工事の設計積算額は3億5,000万円。見積募集で7社入ってきて、1社辞退しました。実際、工事会社との交渉、価格の交渉というのはいかがでしたか?
馬場 全建センターさんの積算価格で大枠の工事価格が見えたので、応募会社各社の見積金額が見やすくなりました。また、項目ごとの対比表で比較検討のうえ、予算枠に入るにはどうしたらよいかも見やすくなりました。
交渉に当たってはいくら下げろではなく、全建センターさんに会社の評価の仕方をいただいて、一番可能性があるところに対して1社に絞って交渉しました。
管理組合の環境を説明し理解を求め、直接面談では相手の様子から行けそうかどうかの見極め、いろんな角度から理解と納得を得るネゴシエーションに心がけました。
無理な要求は必ず手抜きやいい加減といったほころびが出ます。これくらいなら飲んでくれそうの線で双方が納得できる数値をいかに見つけるかと思います。
木村 多くの管理組合では、3社ぐらいをチョイスしてその3社に対してヒアリングしたり、3社に対して交渉するんですけど、今回はもう1社に絞ったのですね?
馬場 その会社がもしも私たちの要求の合意に達しなければ、次の会社になる。そういう含みは持っていました。
木村 更新工事での住民の協力はいかがでしたか?
馬場 説明会を頻繁に行ったり、パンフレットを配ったりということから、組合員の協力という面ではあまり心配しなかったですね。ですから、協力的にみんな動いてくれたというふうに感じています。
木村 最後に、視聴者に向け、馬場さんからみた管理組合の在り方、またはアドバイス的なものはありますか?
馬場 管理組合というのは、命令で動く組織じゃなくて、合意で動く組織です。
ですから20年を超えたようなマンションであれば、役員は最低2年の半数交代。できれば3年で3分の1交代ぐらいがよいかと思います。
それと同様に、修繕を中心としたコンサルタントは絶対必要だと思います。
建物のあちらこちらに問題が出てきますので、素人ではなく専門家の意見を素直に聞くというふうなことが必要だと思っています。
木村 私が一番感じたのが馬場理事長の熱意というか、絶対やるというところがすごく感じたところでした。
馬場さん、貴重な体験談、ありがとうございました。
本セミナーの視聴動画は下記URLよりVimeoとYouTubeで公開しています。
//zenken-center.com/79sm
また、本セミナーの詳細は、全建文庫No.60 『マンション給排水管改修の真実~給排水管改修工事 成功への軌跡』に収録されています。
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大規模修繕工事新聞 2026-04月 196号






