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漏水発生元住戸、立ち入りを拒否に対し 部屋の立ち入り、損害額・間接強制金の支払を認容

 

令和7年2月18日東京地裁

【当事者】

原告:1階の株式会社X、同代表X1(デイサービス〈通所介護事業所〉経営)
被告:2階の区分所有者Y

 

1  事案の概要
上の階からの水漏れを頑なに無視し、部屋への立ち入りを拒否し続けた区分所有者Yに対し、裁判所が「部屋に入らせろ」「損害額100万円支払え」「工事が終わるまで毎月5万円を払え」と命じた裁判です。

【トラブルの流れ】
1.激しい水漏れの発生
 2023年(令和5年)6月頃から、1階のデイサービスの天井から水漏れがはじまりました。1階の会社は、天井にビニールシートを貼り、ホースやバケツを使って必死に水を流す応急処置を続けながら営業していました。
2.上の階の住人が「立ち入り拒否」
 水漏れの原因を調べるため、管理組合が2階の区分所有者Yの部屋へ入らせてほしいと何度も頼みましたが、Yはこれを頑なに拒絶。そのため、原因がどこにあるかも分からず、保険の手続きも修理工事も一切進まない状態になってしまいました。
3.しびれを切らして裁判へ
 1階の会社は「これ以上営業を邪魔されては困る」と怒り、Yに対して「管理組合の調査や工事を邪魔するな」「売上が減った分の損害などを賠償しろ(約470万円+日当)」と求めて裁判を起こしました。

【裁判所の判断】
 裁判所は1階の会社Xの訴えを大部分で認め、Yに対し、以下の命令を下しました。
①部屋への立ち入りを邪魔してはならない
 Yは、管理組合が水漏れの調査や工事のために2階の部屋に立ち入ることを、絶対に邪魔してはならない。
②これまでの損害賠償として「100万円」を支払え
 水漏れを放置し、調査を拒否し続けた責任として、Yは1階の会社に100万円(+利息)を支払え。
③解決するまで「毎月5万円」を支払え
 2024年(令和6年)11月1日から、部屋の調査と工事がすべて完了するまでの間、Yは毎月5万円(間接強制金)をXに支払え。※民訴法248条に基づき、修理見積もりなどを参考に、工事が終わるまで毎月5万円の損害が発生していると裁判所が認定

【裁判所の判断の理由】
1. 専有部分の立ち入り
 区分所有法や管理規約では、「他の人の部屋を修理したり原因を調べたりするために必要な場合は、その部屋を使わせてもらう権利がある」「正当な理由なく立ち入りを拒否してはならない」と決まっています。
 2階の真下で水漏れが起きている以上、2階に原因がある可能性が極めて高く、Yが理由もなく立ち入りを拒み続けるのは完全に違法(不法行為)だと判断されました。
2. 損害賠償金について
 1階の会社は「水漏れのせいでデイサービスの売上が落ちた。だから減った分(470万円)の売上を全額補償しろ」と主張しました。
 しかし、裁判所が過去の売上データを細かく調べたところ、水漏れの後でも売上が増えている月があるなど、「売上が減った原因が、100%水漏れのせいとは言い切れない」と判断されました。
 ただし、天井が水浸しでバケツやホースを並べて営業している以上、建物が大きなダメージを受けているのは間違いありません。Yが部屋に入れさせないせいで正確な修理見積もりが取れないことを考慮し、裁判所は独自の裁量で、「過去の分の損害は100万円、今後の分は工事が終わるまで月5万円が妥当」と金額を決めました。

【今後の対応】
 本件は専有部分内の争いですが、令和7年標準管理規約の改正では、令和8年施行の改正区分所有法にあわせて、共用部分の管理を行う場合は、23条(必要箇所への立ち入り等)で、管理組合が「自らこれに保存行為を実施することを請求できる」と定められました。漏水発生元の専有部分に立ち入れるとともに、漏水発生元の専有部分の区分所有者に代わって漏水箇所の補修を行うことができると想定されます。
 このような裁判例があることも踏まえ、今般の区分所有法改正に伴い、それぞれのマンションの管理規約の改正をお勧めします。

大規模修繕工事新聞 2026年8月 200号