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管理費は本当に下がるの?

10年くらい前は新聞やTV、書籍や雑誌などで「管理費削減」の文字が目立っていました。近年ではインターネットで情報を得やすくなり、また管理組合の意識も高くなってきたのか、一般報道の熱は過ぎ去ったようにみえます。
ただし、今後の高齢化社会に向け、「管理費削減」を望む管理組合は多いはず。はじめて理事になった人も気になるテーマです。ところが、数多くの「情報」には、一部のマンションにしか当てはまらないことや偏った人の意見にスポットが当たっているなど、鵜呑みにできないものもあります。
「管理費削減」について一般報道で書かれた記事を「ちょっと怪しい疑問の数々」としてピックアップし、管理会社のスタッフやマンション関係者に聞いた話をまとめてみました。

 管理組合として管理会社に何を頼みたいのか。決めるのは管理組合のみなさんです。管理会社が管理サービスの内容決めて、勝手に押し付けているように思われがちですが、管理組合が業務を発注してそれを管理会社が受託するという契約関係です。

①管理会社に業務内容のスリム化を求め、値下げさせた。業務の見直しで、2、3割削減できる例が多い

「スリム化で値下げ」「見直しでの削減」はグレードダウンを意味する

例えば、建物周囲のごみ拾いや建物内の床掃き拭きで、毎日1回行っていたものを、週3日しか清掃員が来なくなれば、値下げにつながります。「業務内容のスリム化」というと聞こえはいいですが、要は仕事量を減らしただけ。過剰なサービスや不要・不急の業務の見直しは必要ですが、そうするためには管理組合できちんと業務の要・不要の話し合いができていなければなりません。「うちは同じ仕様で値下げさせた」という管理組合の話も聞きますが、利益の確保ができない値下げは、下請けへの委託費を削り、下請けは作業員の人数を減らし、用具費用を下げるなどのマイナス要素もあるということです。

②管理員を住み込みから通勤に変えたら、委託費が半減した …住み込みも通勤も管理員にかかる経費は変わらない

住み込みも通勤勤務も原則的に週40時間という労働時間は同じです。住み込みは住居を提供しているわけですから、住宅手当を含めているため、額面上は通勤より低い給与設定の場合が多いといえます。また通勤には交通費の支給もあるから、トータルで考えると通勤と住み込みとは「ほぼ同じ」というのが管理会社数社の一致した意見のようでした。

③管理会社を変えたことで、支出が2割安くなった
④人件費や設備の保守点検などの費用が、適正な金額なのか疑問に思い、今までと違う管理会社に見積もりを出してもらったところ、年間の管理費は約50%も削減することができた …他社の営業マンが従前より高い見積もりを出すはずがない!?

管理会社にも大・中・小があり、会社を維持する経費はふつうに考えて大手ほどかかるし、施設やスタッフの充実度、教育システムに差があります。大手から中小に変えれば、当然経費は安く済むといえます。会社の体制か価格かは管理組合の選択肢です。 次に、物件を受注するという営業の観点からみれば、従前より高い見積もりを出すことは考えられません。物件のデータを入手して、まずは受注へとこぎつけたいのが営業マンです。一時的に安くしても、その後、修繕工事などで元を取ろうとすることも考えられます。 安い管理会社に変更した後、設備点検の対応の悪さなどがあったため、マンション管理士に業務仕様のチェックに入ってもらったところ、新しい管理会社の仕様はやはり大幅なグレードダウンだった、というケースもあるようです。

⑤ゼネコンやデベロッパー系列の管理会社だと分譲当初の見積もりが甘く、値下げに応じるケースが多い
…分譲時は上級の管理サービスのメニューを用意

管理会社はこう反論しています。「最初からギリギリの予算でやる商売はないでしょう」とは、あるスタッフの言葉です。「高級志向の人、経済的な人。いろんな価値観の人がいて、管理組合の性格がだんだんできていく。このマンションは裕福そうな人が見当たらなかったから、仕事量が最低の一番安いメニューを用意しました、とはいえません」。 管理会社は営利企業。利益を追求するのが目的だから、上級メニューで増収を図りたい。管理組合から注文されればそのメニューにも応じるスタンスだといいます。「でも下請けの見積もりに上乗せしているだけの会社もある」と関係者は話しています。

⑥機械式駐車場の保守費用は管理会社の言い値で決まることが多く、削減余地は大きい
⑦設備点検や補修などは管理会社が専門の業者に再委託しているため、管理会社の言い値で決まる
⑧管理会社に丸投げせず、それぞれの業者に組合が直接、委託するほうが望ましい
…下請け業者との直接契約は管理費見直しの定番!

業界関係者は「業者と会社がもたれあっているのは事実」と明言します。業者同士で付き合いがあるのはどこの業界も一緒です。しかし、管理会社の場合は、下請け業者の見積もりを精査せず、その上にマージンを乗せることがあるため「言い値だ」「二重取りだ」と非難されるケースも多いようです。 また管理組合と下請けとの直接取引を妨害することで公正取引委員会からも注意がなされたこともありました。一般報道の決まり文句は「下請け業者と直接契約を結べば管理会社のマージン部分が削除できる」というものです。こうした業者との関係を見て、一般報道のように管理組合が各業者を上手に操ることができれば理想ですが、しっかりイニシアティブを取れない組合は各業者の取りまとめに混乱を来たすだけになってしまいます。 自分たちが率先して管理を行うのか、管理会社にお任せがいいのか。管理費の高い安いは、管理会社が決めるのではなく、そんな組合の姿勢で決まるのではないでしょうか。 管理会社を変えて管理費が値下がっても、将来的にも組合の活動が機能しなければ、後に余計な修繕(出費)を余儀なくされる可能性は十分にあります。「本当に管理費は値下がるのか」の答えは各管理組合が持っているといえそうです。

(大規模修繕工事新聞 第81号)