経済産業省は2016年 4 月、これまで東京電力など地域の電力会社が発電、配送電、小売りに関して一貫体制としてきた電力供給について、小売業への参入を全面自由化させました。同省資源エネルギー庁への登録小売電気事業者は8月4日現在、331社です。
これによりマンションの各戸(専有部分)の契約について、そのライフスタイルや価値観に合わせて消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。
消費者にとっては電気料金の節約につながる環境になる一方、「どの会社、どのプランが一番よいのか」わかりづらいのも事実です。また共用部分の節約に努めたい管理組合にとって、各戸の選択の自由を妨げることができないという課題も生じます。電力自由化において、各マンションではどういう対応をすればよいのでしょうか。
新電力会社参入に続き、ガスも多様化
2016年、電力の小売りが全面自由化されましたが、来年4月には都市ガスの小売りが自由化されます。
さらに2020 年に発送電分離がなされ、東電などの既存電力会社が発電、送電、小売りを一貫して独占する状況がなくなり、発電も小売りも完全に公平な自由競争となります。これが電力自由化の終着点といえるでしょう 。
次いで2022 年、ガスの導管分離が予定されており、電気に続いてガスも全面自由化されます 。これに伴い、ガス会社の電力参入、電力会社のガス販売など、他の業種(重電、建設、商社、電話、家電等)からの参入が激化しているのです 。
電力・ガス会社を選べることにより、各社のサービスが多様化し、電気とガスなどのセット割引や、ポイントサ ービス、家庭の省エネ診断サービスなど、多様なサービスが可能となります。
とはいえ、増加する新規参入会社は建設、電話、家電、テレビ、商社と多種多様。 数年後にはどの会社が淘汰されているか見当もつきません。さらに小売電力自由化をして4 カ月たった8 月にいたっても、新電力会社 への申し込み件数は東京電力管内で2%程度という状況です。 マンション住戸も戸建ても電気事業者の選択については、そろって静観している様子だといえるでしょう。
「現段階では早急な判断をしない」が得策
管理組合として考えたいのは、共用部分の電気料金の節約です。高圧一括受電は発電所から送配電される電力を管理組合がまとめ買いして各戸に小分けするシステム。このため全戸が契約を変更する必要があり、小売電気自由化の流れとは逆方向で合意形成が難しいとされています。
スマートメーターの導入は“検針”から遠隔通信による“検診”に移行していくため、東京電力が順次、無料で取り替えを実施中 です。マンション共用部分や家庭で使うエネルギーを管理するシステム「 MEMS(メムス)」「HEMS(ヘムス)」を設置すれば、エネルギーの節約が可能となるスマートマンション化へと進んでいきます。政府は 2030年までにすべての家庭にエネルギー管理システムを導入するとしています 。
電子ブレーカーは、エレベーターやポンプなど、負荷設備契約を主開閉器契約+ 電子ブレーカーの導入で基本料金が削減されるというものです。導入コスト等、費用対効果が検討材料となります。
照明器具の LED 化は使用電力量そのものを減らす方法。導入コストは 蛍光灯に比べて高いが長寿命、消費電力が少ないなどのメリットがあります。また白熱灯と蛍光灯について政府は、 2020年度をめどに国内の製造と国外からの輸入を禁止する方針を固めています 。
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マンションは共用部分と専有部分があり、共用部分の電力も生活のために必要な消費電力であります 。家庭の電気料金だけに目を向けていると、電気料金を値上げされると共用部分、専有部分の 2重の値上げとなることに気づかないことにもなる でしょう。管理組合としては住民に対し、トータルな情報提供と合意形成を図っていくことが望まれます 。
小売電気自由化においては「現段階では 早急な判断をしない」ほうが得策といった 考え方が一般的です。また、各戸が小売電気事業者と契約する際は、あくまで各戸の責 任範囲内であり、管理組合に責任は及ばないことも明確にしておくことも必要でしょう。(大規模修繕工事新聞 第81号)