住宅専用マンションと「民泊」
多くのマンションは規約に「専(もっぱ)ら住宅として使用する」との趣旨を規定している。ところが政府は、この規定のもとでも一定の範囲ならいわゆる「民泊」が可能だとして、経済特区制度を適用して解禁し、さらには全国的にもこれを可能にするために、強引に新しい法律を制定しようとしている。
この問題をマンション居住者と管理組合の立場から考えてみたい。
規約で「専ら住宅として使用する」の規定を持つ管理組合でも、営業活動や事務所としての使用は一切禁止のところから、週1回程度の生花教室や書道教室程度なら理事会で許可されるところ、禁止規定はあるが違反があっても取り締まっていないところなど、対応は必ずしも一様ではない。
住宅使用の中でも、持ち主が会社であれば寮になり、それも家族寮ならともかく、独身寮となれば、騒音などが発生しトラブルになっているところもある。
これらに比し、「民泊」は、住居としての使用とは言い難い上、騒音やごみ処理などのトラブルは格段に多く生じている。そもそもいわゆる「民泊」は、ホームステイなどと違って、通常当該の住宅所有者も賃借人もいない状態で第三者に使用させるわけだから、前記の各種の利用と比べてもはるかに他の居住者に対する迷惑の度合いは高い上、短時日の滞在だから管理や注意も行き届きにくい。
それを関係当局が「住宅としての利用のうち」に含めようというのは、まさに宿泊施設不足対策という一つの目的だけに合わせたご都合主義というべきで、他の住民に迷惑がかかることを一顧だにせず、国民生活に配慮する姿勢に欠けた、不当な解釈に他ならない。
したがって国交省は、「民泊」規制には新たな規約が必要だなどという態度ではなく、規約で「住宅専用」あるいはそれと同種の規定を持つ管理組合では「民泊」はできない旨を明確にすべきである。
もちろん新たな規約を制定すればいっそう確実に「民泊」を排除することができることは確かだが、国交省が現在示している規約案では抜け道が多く、実効性に乏しいことも指摘しておかなければならない。
(NPO日住協論説委員会)
NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2017年3月5日付第414号「論談」より
(大規模修繕工事新聞 第88号)