マンション標準管理規約によると、窓サッシ(窓枠)、窓ガラス、玄関扉などの開口部は「共用部分」と扱うことと定められている(第22条)。原則として、管理組合の責任と負担において計画修繕を行うことになり、戸別の区分所有者が勝手に修繕をしてはならない。
とはいえ、高経年マンションでは経年劣化の進行が各戸によって異なっていたり、管理組合で合意を得ることが難しいケースがある。こうしたマンションでは雨の吹き込み、結露等に悩まされている住戸もあり、標準規約では「一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合」を鑑み、「各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるよう、細則をあらかじめ定める」ことができるとも規定している。
ただし、計画修繕を定め、管理組合主導で全戸対応をすることが前提である。このページでは『修繕奮闘記』特別版として、過去記事より「全戸一斉サッシ改修」を行った2事例を掲載する。
複層ガラス採用で約2,300万円補助
27棟別長計策定し「100年タウン」目指す
3回目の大規模修繕工事は2011年9月の大規模修繕工事対策委員会の設置からはじまる。メンバーは各種講習会やセミナー、相談会に参加して情報収集を行い、内部でも工事や長期修繕計画に関する学習会を行った。2012年の総会で設計を英綜合企画設計に依頼し、2013年の臨時総会で工事実施を決定した。
窓サッシ・玄関ドア改修については築30年以上経過しているため、居住者からカタカタ音がするという希望で修繕項目に取り入れた。さらに大規模修繕工事に先駆け、窓サッシ・玄関ドア改修を実施することになった。
ペアガラスを採用したことから国土交通省の省エネ改修推進事業に申請。約2,300万円の補助を受けることができた。
工事完成後、英綜合企画設計により30年間の棟別長期修繕計画(27棟)の策定を開始。マンションの「長寿命化・再生」に尽力し、「魅力ある100年タウン」を目指している。
(大規模修繕工事新聞92号)
工事データ
○建物概要/1980~1984年(昭和55~59年)竣工・PC造(一部RC)・27棟・381戸
○設計・管理者/㈱英綜合企画設計
○サッシ施工者/㈱LIXIL
○工事期間/2014年2月~11月
改修前と後。改修後は特殊金属膜のある複層ガラスで、遮熱効果があり、 紫外線も大幅にカット
国土交通省・省エネ改修推進事業で約2,300万円の補助を受けた
コメント
管理組合主導の全戸に対する窓サッシ改修では、複層ガラス、真空ガラスへの取り替えなど断熱性、機密性の高い省エネ工事の観点から、国や自治体の助成制度の活用が期待できる。
しかし、制度の発表や手続き方法など、管理組合の工事予定時期がそのまま当てはまるとは限らない。このため、コンサルタントをはじめ、専門業者からの情報を得やすい環境を整えておくことが大切である。
また、全戸対応は管理組合の金銭的な負担も大きい。長期修繕計画への組み込みと、しっかりとした資金計画の作成も必要だ。管理組合主導で建物の長寿命化を図ることが、長期的にも安心した住生活の継続につながるといえる