管理組合発注の工事高 前年同期比48%減
国土交通省・建設経済統計調査室が毎年、半期ごとに 実施している「建築物リフォーム・リニューアル調査報告」 で驚くべき数字が出ました。この調査は建設業許可業者 5,000社に対して、元受けとして受注したリフォーム・リ ニューアルをアンケートしたものです。 平成29年度上半期(平成29年4月1日~6月30日)の 調査結果によると、発注者を「管理組合」に限定した工 事受注高は2,917億円で前年同期比48.0%減となりました。 平成26年度から3年間の上半期はいずれも6,000億円強 であったのにもかかわらず、突然今年度上半期で約半分 の数字になってしまったのです。 この要因はどこにあるのでしょうか?
築30年超は修繕項目が山積み 高齢化でリーダー不在が要因?
長年、大規模修繕工事の設計を手掛ける㈱KAI設計の菅 純一郎氏によると、「工事案件数の減少は市場構造による ものとではないか」ということです。 ここ10年程度は、第四世代2000年初期グループ(現在 築10年程度)、第三世代1990年代グループ(現在築20年 程度)、第二世代1980年代グループ(現在築30年程度)、 第一世代1970年代グループ(現在築40年程度)と4世代 のマンションが大規模修繕の対象として動いてきました。 そこで現在、問題の一端となっているのが、「第一世代 と第二世代で管理組合内の高齢化による機能障害が起き ているのでは」というのが菅氏の考えです。 ただでさえ、30年を超えて実施しなければならない修 繕項目が山積みの上、これを進めるリーダーのなり手が いない状況が生まれています。 第二世代の購入層のうち、最も当時若年であったと思われる方々が30歳だったと想定しても、現在は既に60歳 半ばになっています。第一世代の方々に至っては若年層 でも70歳半ばを突破して80歳に届く勢いしょう。 以上のように菅氏は「今まで4グループでけん引して きた市場のうち、半分の2グループが崩壊しつつある予 兆だと思う」と話しています。
工事集中時期は組合に得なし 分散時期の「今」がおすすめ
2019年には消費税10%への値上げが現実味を帯びてい ます。 また、2020年には東京五輪・パラリンピックが開催さ れることで、現場作業員の人手不足が深刻度を増してい る最中でもあります。 こうした状況を大規模修繕工事の立案、計画をしてい る管理組合はどう捉えているのでしょうか。 ⑴ 人手不足でも消費税増税の前に大規模修繕工事を行 う ⑵ 消費税が増税されたとしても、オリンピックや増税 前の駆け込み工事が終わったあと、落ち着いて大規 模修繕工事を行う いずれにしろ、みんながみんな集中する時期に大規模 修繕工事を行うことは、良いことではありません。 工事が集中する時期は、工事費の高騰、人手不足によ る工期の遅れなど、管理組合にとって得なことはないの です。 大規模修繕工事の実施時期は業界の流れをみて、「分散」 している時期こそが一番よいと考えられます。 つまり、上半期6,000億円市場が3,000億円になった「今」 がおすすめ時期といえるのではないでしょうか? 業界的な視野も情報のひとつに入れて、管理組合の「損」 にならないような対応をしてもらいたいものです。
(大規模修繕工事新聞 100号)