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全建センター第34回大規模修繕工事本音セミナー 6/24 

全国建物調査診断センターは6月24日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第34回大規模修繕工事本音セミナーを開きました。
当日は全建センターが提案する大規模修繕工事の新しい工事発注方式を説明しました。そこ後、会場の参加者とともに活発な質疑応答や意見交換を行いました。毎回大好評を博す本音セミナーから、今号では会場との意見交換の様子をまとめました。<構成:編集部>

●講師陣
・㈱リノシス・コーポレーション
佐藤成幸専務取締役(マンション管理士)
・一般社団法人全国建物調査診断センター
菅純一郎理事(1級建築施工管理技士)

大規模修繕工事の新しい工事発注方式とは?

管理会社とどうやって付き合う?
―築37年で、3回目の大規模修繕工事の検討を図っている。そこで管理会社に相談したところ、竣工図は弊社が管理しているので、相見積もりをとっても無駄だと言われた。管理会社以外のところに見積もり依頼したとき、何か不都合はあるか?
佐藤成幸氏:竣工図とは新築の時の図面のことですね。竣工図は大規模修繕工事の際に見積もりをするにあたっては必要最低限の資料となります。
大事なのは、2回目以降の大規模修繕工事となると、必要なものはさらに増えて、前回実施した大規模修繕工事の記録の図書(修繕履歴)、これも竣工図書の一連の書類となることです。
必要な情報が、特に外壁や防水、1回目、2回目で、新築の当時と材料が変わっている可能性があります。前提となる材料の情報は新築の時の図面だけでは不足することになります。
それらを渡せば、どこの施工会社でも見積もりはしてくれるはずです。

―管理会社に調査診断をやってもらったが、調査診断を行った会社に施工を任せたほうがいいのか、それとも調査診断を行った会社と違う施工会社を選んだほうがいいのか。
佐藤氏:調査診断会社が一番やってはいけないことは、予見をもって調査診断をすることです。予見を持つことは、何でもかんでもこじつけやすいという芽ができているんです。
「大規模修繕工事ありき」といった予見、「この築年数だからここが悪いだろう」というような予見―すべてに予見を持って調査診断をするということは大事なものを見逃す場合があります。
予見を持たずに調査診断をやらせたほうが損をしない可能性が高まりますよ。

―管理会社が薦める業者でない施工会社で大規模修繕工事を行った場合、以後の管理会社との関係が維持できるかなという不安がある。
菅純一郎氏:そんなに管理会社に依存しちゃってますか(笑)。
管理会社の本業は基幹事務です。管理組合会計(お金の出し入れ)や、マンションの維持管理の企画・実施の調整などです。
修繕工事を行うのはあくまで管理組合で、管理会社はあくまでそのお手伝いでしかありません。
管理会社に全部お任せということに批判はしませんが、修繕工事ありきで管理会社と付き合うのはいかがものかと思いますね(笑)。


今は、経験者の話を聞く機会がない
―理事長経験者参画方式やプロ修繕委員参画方式について、その理事長やプロ修繕委員は国家資格などが必要なのか。
菅氏:修繕のコンサルティングに関しては、特に大きな資格のバックボーンがないといけないということはないです。
むしろやり方とか、ノウハウがきちんとしているほうが大事だということになります。
佐藤氏:理事長経験者参画方式の件で、パンフレットに書いていないことですが、「よそのマンションはどうしているのか」「よそのマンションはどうやってこの問題を乗り切ったのだろうか」といった情報が、今の世の中の環境では全然入手できません。
 管理会社に聞くと、「一般的にはこうしています」「よそでもこうしています」というような、相手の管理組合の顔が見えない中で、「ふつうはこうです」という回答をされます。
本当に同じような立場で汗を流した人が、実際にどういった体験をして、生々しいことをしてきたのか、なかなか聞けません。
よそでやっている生の情報をなんとか聞けないものか、というニーズはものすごくあるんです。
そこで、こうした話を聞けるようなチャンネルを作ってみたらどうですか、ということを主催者に提言しました。何かプロジェクトをしようとしたときに、ご意見番としてある人に仕切らせようというんじゃなくて、ご自身がマンションの理事長をされたときに大規模修繕工事なり、理事会の運営なりをどうやってされたんですかという素朴な話を聞いてみる、それによって自分たちが「なるほど、同じような体験をするときに参考になるよね」ということだけでも、この理事長経験者参画方式等の仕組みは有効かなと思います。

 

プロジェクトマネジャーの役割とは
―現在、設計監理方式では設計コンサルタントの質が大きな問題となっている。トータルマネジメント(TM)方式では設計コンサルタントの代わりにプロジェクトマネジャーがその役割をするというが、その辺はどうなのか。
菅氏:プロジェクトマネジャーはあくまでも管理組合をフォローする人です。設計監理方式と違って実務は行いません。
管理組合が信頼できるパートナー施工会社を選んで、その施工会社が管理組合のために選択した工事内容、工事費用について査定することを管理組合と一緒にやりましょうね、というのがプロジェクトマネジャーの役目です。基本は責任施工方式です。
もちろん監査はするし、チェックもするけど、工事監理などの実務を行わない点で、設計監理方式からみて、より近い関係といえます。
佐藤氏:トータルマネジメント(TM)方式では、「管理組合と目的が一緒」という意味合いを込めて、施工会社を「パートナー施工会社」という用語にしています。
実際に施工会社に施工者としての能力だけを求めるのではなく、パートナーとしての目線、それは管理組合の立場になって物事を考えた場合にどのような提案があるのか、どのような行動をとるのか、をみて選定します。
設計監理方式では施工会社に安全管理、品質管理、工程管理、それと施工としての出来栄えだけを求めることになるんですけれど、トータルマネジメント(TM)方式では単なる施工会社としていないところに意味があるのです。
こうした管理組合目線に立ったパートナー施工会社を管理組合とともに選び、パートナー施工会社の責任施工方式の上で、管理組合とともに監査していくのがプロジェクトマネジャーです。
設計監理方式の設計コンサルタントとは立ち位置から違ってきます。

―トータルマネジメント(TM)方式で、実質的にプロジェクトマネジャーを担う方となると、今回の講師の2人の会社にお願いするという形になるのか。また、講師2人とパートナー施工会社との関係は?
司会者:講師は2人とも、いわゆる設計コンサルティングの会社の方ですが、一般社団法人全国建物調査診断センターで受ける形になります。
菅氏:募集するパートナー施工会社の条件を決めるわけですが、それを正に管理組合が自主性を持って決めてもらうように持っていきます。それを人任せにするから、今、問題となっている不適切コンサルタント問題が出てくるのです。
佐藤氏:私がプロジェクトマネジャーとなるのであれば、まず管理組合に対し、「大規模修繕工事とは?」などの学習を半年くらいかけてやった上で、どういうパートナー会社を選びますかとやります。

大規模修繕工事新聞(104号)