マンション管理業界では管理組合財産の毀損事故を防止するため、既存事故の事例を想定し、再発防止策に 取り組んでいます。「現金事故を防ぐポイント」と題して、その一例をシリーズで紹介します。 〈協力:双日総合管理㈱ 難波純一〉
<事故事例1>
管理会社本社の会計担当者が、現場のフロントマンから受け取った銀行払戻請求書の金額の数字を改ざんし、余分に引き出した現金を着服した。
会計担当者は着服を隠ぺいするため、月次決算報告書の数字も改ざん、また改ざんした通帳コピーと改ざんした銀行残高証明書のコピーを会社と管理組合に提出していた。
改ざんのやり口は、通帳等の原本をカラーコピーし、 金額の部分を切り抜いて必要金額に改ざんし、その上でそれを再度カラーコピーしていたのだった。
会計担当者は伝票の起票、銀行窓口での入出金業務、 帳簿への記録、月次決算報告書の作成を一人で行うため、 着服と隠ぺいが容易な環境にあった。
上司は、通帳ならびに銀行残高証明書の原本を確認することなく、コピーのみを確認。会計担当者は約10年、同じ業務を担当していたため、覚知が遅れたという。
<再発防止策>
①会計担当者が通帳または銀行残高証明書を改ざんできなくするため、決算報告書の口座残高の確認は、コピーではなく、通帳原本または銀行残高証明書原本と照合する。
②会計担当者が伝票または情報システム上の伝票を自由に修正・削除できなくするため、伝票を連番管理・複写式とするとともに、情報システム上の伝表の修正削除等の履歴を記録する。
③会計担当者による着服と隠ぺいを防止するため、マンション会計業務を職務分離し、上司は会計の記録と請求書、領収書等の原本を照合し、正確性・網羅性・実存性を確認する。
④定期的な人事ローテーションを行う。
⑤現金の授受については授受簿等に記録する