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バルコニーへのアンテナ設置は規約違反 部品落下もあり、組合の撤去請求認める

【事案の概要】

原告:管理組合 被告:区分所有者
 第1事件:被告である区分所有者がバルコニーおよびルーフバルコニーの手すりに衛星放送受信用パラボラアンテナを設置していることが本件マンションの管理規約に違反しているとして、アンテナの撤去を求めた事案。被告は当初アンテナを4基設置していたが、係争中に2基を撤去したため、残り2基の撤去を求めた。
 第2事件:理事長が管理組合を代表して訴えを提起する際に管理規約で定められた違約金としての弁護士費用87万円および遅延損害金の支払いを求めた事案。

【前提事実】

 本件管理規約には、下記のとおり規定がある。

・ 区分所有者がバルコニー等を専有使用するに当たっては、区分所有者は、原告から管理上必要な指示がある場合は、それに従わなければならない(14条)

・ バルコニー等に他の区分所有者等の安全を阻害、生活に危害を加えるおそれのある工作物を築造もしくは設置することをしてはならない(第17条)

・ 区分所有者が規約および使用細則に違反したときは、理事長は理事会の決議を経て、原告を代表して訴訟その他の法的措置を追行することができる(第71条)

・ 訴えを提起する場合、理事長は、請求の相手方に対し、違約金としての弁護士費用および差止め等の諸費用を請求することができる(第74条)

【被告の主張】

・ 設置したアンテナは、衛星放送の宗教信仰チャンネル・信仰チャンネルを受信するためのものである。

・ 日本では、宗教による差別は憲法により禁じられており、パラボラアンテナを設置することは法律上禁じられていない。

・ 上記にもかかわらず、被告の出生により差別されており、違法である。

【裁判所の判断】

○ 原告管理組合の各請求はいずれも理由があり、これらを認容することが相当と判断する。

(第1事件)

・ 取り付けたパラボラアンテナについて、アンテナを固定していたボルトが下階のベランダに落下したことがあることがうかがわれる。

・ その結果、管理組合は、被告のアンテナ等の設置行為が規約に違反するとしてアンテナ等の撤去を求めたが、被告がこれに応じなかった。

・ 管理組合のアンテナの撤去要求は、組合員である建物居住者の安全を図るためなどからされたものと解することができ、規約に基づき撤去を求めることができると認められる。

・ 被告は宗教等による差別であると主張するが、差別等をうかがわせる事情は何ら認められない。

・ マンションの使用細則では、バルコニーに設置型物置等を築造または設置することが禁じられている。

(第2事件)

・ 訴訟の原告が理事長個人ではなく、管理組合自体が提訴した場合であっても、理事長は規約に基づき、弁護士費用を違約金として請求できると解することが相当である。

【コメント】

マンションのバルコニーは、構造上、専有部分に付属していますので、当該専有部分の所有者が専用使用することができます。もっとも、バルコニーは、構造上、隣の住戸と接着して作られており、また、火災時等、緊急時の非難通路としても想定されています。このことから、一般的にバルコニーはマンションの共用部分であると考えられています。

 その利用の制限について、裁判例には、「バルコニーは建築構造上躯体の一部であり、管理上も共用部分と考えるのが一般的であるから、居室の居住者の専用使用権が認められるとしても、建物の居住者等の、緊急時の避難を妨げ、もしくは建物自体の維持、管理を妨げ、老朽化の原因となり、あるいは建物の美観を害するような利用は、その性質に照らしても予定されていないものと解するのが相当である」と判示したものがあります(東京地裁平成3年11月9日判決)。

 このように、緊急時の避難の妨害となるような利用や、建物自体の維持、管理を妨げる利用、老朽化の原因となるような利用、建物の美観を害するような利用は「通常のバルコニーとしての用法」の範囲外の利用として許されません。

 また、本件マンションの管理規約には、バルコニー等を専有使用するに当たっては,管理組合から管理上必要な指示がある場合は,それに従わなければならない旨の規定やバルコニー等に他の区分所有者等の安全を阻害し,生活に危害を加えるおそれのある工作物を築造もしくは設置してはならないとの規定もありました。

 本件のアンテナがどのようなものであったのか、その詳細は不明ですが、その部品の一部が落下したことがあることが認定されており、上記管理規約からすれば、生活に危害を加えるおそれのある工作物といえると判断されたのでしょう。

 本件マンションではアンテナの設置に関して明確に定めた管理規約や使用細則はありませんでしたが、近年では、使用細則でバルコニー等にテレビ用アンテナ、音響機器、照明機器等を設置してはならないと、明確に禁止を規定する管理組合も多くなってきたと聞きます。

 許される行為と許されない行為を明確に区別するために、そのような使用細則を設けるべきでしょう。_

大規模修繕工事新聞 151号

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