現在、マンション大規模修繕工事を手がける施工会社30社超に対し、談合の疑いがあるとして公正取引委員会の立ち入り検査が実施され、行政処分の結果待ちとなっている。
実務では、契約済みのマンションでは着工が一時停止となり、管理組合側が再契約を選択するなど、これまでどおりのスムーズな工事進捗ができていないケースが多く見られている。
談合問題が社会問題化している中、以下2つの事例から、この問題を探ってみよう。
築12年・2棟・約200戸(事例①マンション)。10年目で大手の管理会社より建物診断に基づいた1回目の大規模修繕工事の見積もりが理事会に提出された。その額、4億円。戸当たり200万円である。このマンションは住戸タイプの種類も少なく、四角い2棟で、免震装置が装備されている。
工事計画では現場事務所も作業員詰所も、マンション内の独立した管理棟を使用することになっていた。
1回目の大規模修繕で戸当たり200万円。管理会社の見積額をみて理事会が動きはじめ、設計・監理方式を採用して施工会社を選定したところ、工事費は3億円(戸当たり150万円)まで下げることができた。
ついで築13年・1棟・約100戸(事例②マンション)。別の大手管理会社から提出された1回目の大規模修繕工事の見積額は2.8億円。戸当たり280万円である。この管理組合も設計・監理方式を採用したところ、1.8億円に下げることができた。この7月に着工している。
いずれも管理会社の見積額から、設計事務所を入れて、設計・監理方式を採用したところ、億単位で値が下がった事例である。
さて、この数字を読者どう思うだろうか?
施工業者の談合問題は、本来の適正価格よりも大幅に高い工事費用を支払わされることである。
事例①
マンションでは、管理会社の見積額4億円から設計コンサルタントを通したら、3億円となった。1億もの減額である。
事例②
マンションも2.8億円から1.8億円になり、1億円減。
工事代金が減れば管理組合は得したと印象づけられるのは当然だろう。
しかし、である。
そもそも1回目の大規模修繕工事で戸当たり200万円、戸当たり280万円は一般的な数字だろうか?
1億円を節約できたとして、それが本当の金額なのだろうか?
今一度考えてみよう。そもそも元の金額が大き過ぎはしないか?
政府は7月24日、トランプ関税を25%から15%とすることで合意したと発表した。
「これは喜んでいいものなのか」。自動車メーカーの声である。
これまで2.5%だったものが15%へ跳ね上がったのである。そもそも5月、日本が求めていたのは、追加関税の「撤廃」だったのだ。
話を元にもどそう。
4億円が、3億円になったとして、この3億円も妥当なのだろうか?
そもそもの4億円と比べて安く感じるだけなのではないだろうか?
管理組合資産を狙うのは施工会社ばかりではない。
積立金残高を知っているのは、管理会社である。管理会社は修繕積立金がどれだけあるかわかっていて、その分を見積額に反映していく。
その見積額と比較して、「安くなった」という表現は適切だと言いがたい。管理会社の見積額を、施工会社の見積合わせの材料とすること自体、大きな間違いなのだ。
現在のマンション大規模修繕工事における談合は施工会社の問題だとされているが、管理会社の情報提供をもとに工事金額を設定するということも考えられる。今、スポットライトを浴びている施工会社より、管理会社が元凶ではないかという思いが、どうしても拭えない。
<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2025/08/02>
大規模修繕工事新聞 2025-8月 188号





