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大規模修繕工事新聞2026年9月 第201号

香川総合法律事務所シンポジウム開催

香川総合法律事務所は8月7日、緊急シンポジウムとして、令和8年1月22日に出された2つの最高裁判決をテーマに弁護士会館にて開催しました。

1月22日最高裁判決は、マンション管理の実務と法解釈の現場に大きな波紋を広げました。この判決をとおし、本シンポジウムでは区分所有法理論の本質を問う白熱のパネルディスカッションが行われました。
本稿では、法律の専門家たちが指摘した「マンション法制の根源的な矛盾」を要約します。

 
登壇者
丸山英氣氏(千葉大学名誉教授・弁護士)、戎正晴氏(弁護士)、花房博文氏(創価大学教授)、藤巻梓氏(国士舘大学教授)
司会
香川希理氏(香川総合法律事務所・弁護士)
管理組合に責任はあるのか?
今回の最高裁判決において最も議論を呼んだのが、民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)の解釈です。判決は、管理組合に対して「占有者」としての責任を認める余地を示しました。
しかし、登壇した専門家らは異論を唱えます。戎正晴弁護士は、「区分所有法上、管理の主体はあくまで区分所有者であり、3条団体(管理組合)には何の実態も権限もない」と指摘します。
花房博文教授も、「管理組合がプールしている修繕積立金は管理のための財産であり、損害賠償のために取り崩すことは本来想定されていない」と判決の合理性に疑問を呈しました。

「2つのマンション法」というジレンマ
なぜこのような乖離が生じるのか。その根本原因として丸山英氣名誉教授が提起したのが「2つのマンション法」という概念です。
昭和57年に建設省(現・国交省)主導で「標準管理規約」ができ、翌58年には法務省主導で「区分所有法」が改正されましたが、両者の立法担当者間に接触はありませんでした。
これにより、物権法としての「区分所有法」と、管理組合を中心とする「標準管理規約・マンション管理適正化法」という、理念の異なる二つのルールが並存することになっています。
裁判所すらも「管理組合」という法的実体のない言葉を唐突に判決文で用いるほど、実務(管理組合方式)と法律(区分所有者の共有法理)の乖離は深刻化していると指摘しています。

ドイツ法との比較と今後の展望
諸外国ではどう対応しているのか。藤巻梓教授によれば、ドイツでは2000年代以降の判例を経て、現在では管理団体に「完全な権利能力」が認められており、団体が一括して権利行使や義務の履行を行う構成が整っているといいます。
日本の現状を打破するための解決策として、戎弁護士は「曖昧な権利能力なき社団での運用をやめ、全マンションを『管理組合法人』にしてしまうべきだ」と提言。
一方、丸山教授は「物権法としての区分所有法とは別に、管理組合を中心とした規律を定める『マンション法』を新たに立法化すべき」と、抜本的な法整備の必要性を説いていました。

理論の整理が急務
司会の香川希理弁護士は、「理念を語る前に、まずは現行法でどこまで解釈できるのか、理論を整理することが不可欠」と総括しました。
高齢化と建物の老朽化という「2つの老い」に直面する現代マンションにおいて、法理と実態の歪みを是正することが急務だと言えるでしょう。
 
 

「マンションAI®コンサルタントシステム Z」スタート

 全建センターではこのたび、所属するマンション管理士が、最新のAIを駆使して、建物診断、工事設計、マンションの大規模修繕工事に最適な工事会社を選定 ・紹介するサービス「マンションAI®コンサルタントシステム Z」をスタートさせました。
システム Zの特徴は、以下のとおり。
①長期修繕計画の見直しシステム
最新のAIが劣化状況•工事履歴・相場を診断解析し、 過不足のない修修繕計画へと最適化します。
②T.M方式による施工会社の特定
建物診断・工事設計を踏まえ、当該物件に最適な施工会社をAIが紹介する独自方式です。
③マンション管理士による監修
全建センターが所属のマンション管理士が全工程を監修します。
談合が入り込む余地のない、公正で最適な工事を実現する-これが全建センターの画期的な新システムです。

第81回管理組合オンライン・セミナー採録 『マンション管理組合が談合問題を乗り越えるための手法とは』《その2》

 前号に引き続き、一般社団法人全国建物調査診断センターが6月28日に配信開始した第81回管理組合オンライン・セミナーの抜粋・採録です。今回は、「3.談合させない具体的な手法」を取り上げます。講師は、一般社団法人全国建物調査診断センター所属・瀬川香里氏(アバター理事)が務めています。


3.談合させない具体的な手法
①設計コンサルタントに詳細仕様や数量明細書付き資料の提出を求める
 キックバックと言われるようなバックマージン、こうしたものに対してどのようにして防止ができるのか、あるいはどのようにしてこうしたものが発生する仕組みがあるのか。
 談合のさせない具体的な手法の1番目。設計コンサルタントへは、詳細仕様や数量明細書付きの資料の提出を求めるということです。
 すでに平成29年1月27日付国土交通省住宅局土地・建設産業局より通知された、「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」では、不適切コンサルタントと工事会社の距離感について言及し、管理組合への処方について解説していて、どのようにして特定の工事会社を選定するのか、またバックマージンの周知を可能にする仕組みについて具体事例を挙げて、その対策を指南しています。

設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)
//www.mlit.go.jp/common/001230147.pdf
 繰り返しますが、メディアは、こうしたことに対して一つも取り上げてくれません。
 具体的な事例では、設計会社が施工会社候補5社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事内容を伝え、当該1社が施工会社と内定した事例がある。

講師:瀬川香里氏 一般社団法人全国建物調査診断センター所属/アバター理事

 これはどういうことかというと、管理組合が知らないうちに設計図書内の見積り明細の数量を特定の一社有利になるように改ざんしていましたということです。
 外壁の面積や防水の面積が何㎡で書いてあるものを、特定の一社にだけ少ない面積に変えたものを渡して、それで見積りをさせていたということなんです。
 これを伝えないのが一般のメディア。伝えるのが私ども、一般社団法人全国建物調査診断センターです。
 次です。バックマージンを支払える仕組みについても、国交省の通知では、不適切な方策が書かれています。
 工事費を水増しできるように不必要な工事や過剰な設計仕様。過剰な設計仕様とは、高額になるようなものをわざわざ設計仕様に入れるということです。
 それから、特定の一社にだけ数量が少ないものを渡して、工事費用が安くなるように画策していた。
 こうしたことを防止するには、設計コンサルタントが作った設計資料の中で、詳細仕様や数量明細書付きな資料の提出を求めることで、こうした図式を破壊することができるわけです。
 ただし、詳細仕様、これが過剰仕様なのか、あるいは数量の明細としてこの明細書は正しいものなのかどうなのか、管理組合では判断できません!という場合は、私ども、一般社団法人全国建物調査診断センターにセカンドオピニオンということでお尋ねください。
 ご提出あった資料について詳細に分析をしまして、過剰な仕様になっているかどうか、数量明細書に不正がないか、こうしたものを精査させていただきます。


②報告書の閲覧を請求する
 談合させない具体的な手法の2番目は、設計コンサルタントに、「建築士法第23条の6の規定による報告書の閲覧をさせてくれ」という行為を求めることです。
 国交省通知の別紙1<指摘されている事例>より、最も安価な見積金額を提示した設計コンサルタント社に業務依頼したが、実際に調査診断、設計等を行っていたのはコンサルタントの職員ではなく、施工会社の社員だったことが発覚した、とあります。
 コンサルタント、実際には施工会社社員による施工会社選定支援です。結果、当該施工会社が内定しましたが、発覚が契約前だったため契約が見送られました。
 「建築士法第23条の6の規定による報告書」は、建築士事務所の開設者が事業年度ごと(年に一度)に都道府県知事へ提出する義務がある書類です。同時に、この提出した書類については、求めに応じていつでも閲覧させなければならないと規定されています。
 報告書では、所属している建築士について、氏名、登録番号等を名簿として取り揃えておく必要があるわけです。本当にそこの建築設計事務所の所属している建築士であるかどうかということはこの規定を見ると一目瞭然なんです。

 こうした法的文書等を、バックマージン問題対策として利用することが最も正当であり、公正であり、有効な手続きと私どもは考えております。これにより、なりすましの撲滅もすることができます。
続いて、国交省通知の別紙2<取組事例>より、利益相反的な提案をしてきた設計会社を除外して選定した事例です。
 新聞、雑誌、経験上の知識など情報をもとに15社に見積もり依頼し、うち7社から見積もりが提出され、金額、内容、実績等を精査し、上位2社に絞り込んだ工事項目の絞り込みなど工事費の削減に向けた提案を行った施工会社を管理組合が決定、とあります。
 管理組合が設計コンサルタントに頼ることなく見積もりを取得したというところが、これの大きなポイントです。
 見積もりを取得するという行為を管理組合が自ら行い、これらをもって、設計コンサルタントにバックマージンを収受させないという根本的な仕組みができあがります。
 やる気にさえなれば、管理組合さんが見積もりを取得する行動をサポートする方法は、実は今はたくさんある時代です。
 デジタル化が進んだことによりまして、管理組合が工事会社を知らなくとも簡単に利用でき、工事見積もり取得の支援をするサイトやアプリがあるという事実、これらも合わせて皆様方にお届けをさせていただきたいと思います。
 管理組合様が主体的に見積もりを取りたい際に、管理会社や設計コンサルタントに頼らずにでも自らが見積もりを取るということを支援してくれるサイトやアプリケーション一覧表を添付します。
(アプリ一覧表一覧表:左表)
 他にも管理組合さんが主体性をもって談合問題を乗り越える手法というのは多々あります。
・工事会社と設計コンサルタントの契約には〇〇〇ということをする
・2回目以降の大規模修繕工事を迎える管理組合には、〇〇〇をすると談合とバックマージンを防止できる環境が整う
 いずれも、これ以上はセミナーで公表することを差し控える内容に立ち入るということになります。
個別具体的な情報すぎるので、お知りになりたい方は一般社団法人全国建物調査診断センターにアドバイスを含めた顧問契約等をしていただいた場合に対して適宜サポートの実務として実施をさせていただきたいと考えております。
談合させない仕組みを作るということは可能です。
そうしたことに対してどうぞ私どものサポートというものも大いに活用していただければ、と考えております。
ご清聴、誠にありがとうございました。

 

 

長寿命化等モデル事業

 国土交通省は6月22日、令和8年度マンションストック長寿命化等モデル事業の第1回提案募集(4月1日~ 15日受付)について、評価結果を公表しました。
 今回は4者4件の提案があり、このうち「先導的再生モデルタイプ(計画支援)」で1件をマンションストック長寿命化等モデル事業の採択事業として適切であると評価されました。



今回、採択されたプロジェクトは、築56年・45戸の借地権付マンションで、頻発する漏水事故への対応や耐震補強等の必要性から、建替え推進決議を行ったものです。
改正区分所有法施行に基づいて、隣接地取得の仕組みを見据えた事業スキームを構築している点などについて、「独自性・創意工夫、および合理性の観点から評価した」などとされています。

 

 

 

 

 


令和8年度の今後の応募期間は、下記のとおりです。
・第3回:令和8年9月14日(月)~令和8年9月18日(金)
(リンク)
//www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr5_000037.html

 

 

 

『マンションは生き残れるか』

「マンション管理法を考える必要がないだろうか?」―区分所有者の高齢化、無関心などを根拠に管理業者が区分所有法上の管理者に就任するマンションが増加しています。
区分所有法上の管理者、集会のみの管理体制は、標準管理規約や管理適正化法の管理組合による管理と矛盾が生じることになり、このため、新たな管理法を「問題提起」としてあげています。
本書は、日本マンション学会立ち上げに関わった著者が、現在のマンションという制度が抱える諸問題について、法体制などの面から「マンション管理」の実態と課題を検証した一冊となっています。

『マンションは生き残れるか』
2026年7月30日発行
著者/丸山英氣(千葉大学名誉教授・弁護士)
判型/A5判並製・212ページ
定価/2,970円(税込)
発行/信山社出版㈱
ISBN 978-4- 7972-8226-9
(リンク)
//x.gd/l5EmN

『マンション管理組合の経理実務〈第3版〉』

マンション管理組合や管理会社への業務を専門としている会計事務所:フィールズの知見・ノウハウをコンパクトにまとめられた一冊です。
第3版の主な改訂ポイントは、①インボイス制度への対応、②空き駐車場の収益化、③外部管理者方式の普及といった近年の制度・環境の変化に対応した最新の解説とQ&Aの追加です。
2025年12月に更新された国税庁の質疑応答事例において、駐車場を貸し付けた場合の収益事業判定で、区分所有者と占有者が明確に区別されることになりました。占有者は区分所有者に含まれないため、独立した事業と認められるときは、収益事業に該当すると判定されるようになります。

『マンション管理組合の経理実務』
2026年7月30日発行
編者/税理士法人フィールズ、監査法人フィールズ
判型/A5判並製・240ページ
定価/3,190円(税込)
発行/信山社出版㈱
ISBN 978-4- 7972-8226-9
(リンク)
//www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-59161-7

「ベランダ手摺り」の変更は「特別の影響」に該当するか?

令和7年2月18日東京地裁

【当事者】

原告:区分所有者X
被告:Y1管理組合、Y2管理会社

 

1  事案の概要
 舞台となったマンションは築30年以上が経過し、ベランダの手摺りに錆や腐食が生じていました。管理組合(被告Y1)は大規模修繕工事にあたり、従来の「柵状」の手摺りを、プライバシー保護や防犯に優れた「アルミ製パネルタイプ」へ一新することを計画します。
 この計画に対し、8階の区分所有者(原告X)が猛反対。パネル化によってベランダがトーチカ風(無骨で閉鎖的なデザイン:トーチカとはロシア語の軍事用語でコンクリート製の頑丈な防御陣地のこと)になり、日照、通風、そして眺望が悪化すると主張し、工事後、管理組合に対し、Xのベランダだけ元の柵状に戻すよう求める「原状回復」の訴えを起こしました。

【被告管理組合側の主張】
 裁判で管理組合側は、工事の正当性を主張しました。
1.民主的な手続き:総会で特別多数決による承認を得ており、事前に「パネルタイプ」であることも資料に明記していた。
2.多角的なメリット:周囲に高層ビルが増えたための「目隠し(プライバシー確保)」、台風時の飛来物による窓ガラス破損の防止、落下物防止など、パネル型には合理的な理由がある。
3.住民の意向:全戸アンケートの結果、過半数(48戸中28戸)がパネルタイプを希望していた。

【裁判所の判断】
 裁判の争点は、手摺りの変更が、区分所有法で定められた「特別の影響を及ぼすとき」に該当するかどうかでした。もし「特別の影響」があると認められれば、不利益を受ける区分所有者の承諾が必要になります。
 裁判所は、確かにパネル化によって日照や眺望が以前より悪化したことは推認したものの、以下の理由から原告Xの請求を棄却しました。

 

・手摺りの高さ自体は変わっていない
・不利益の程度について、具体的・客観的な立証(どれほど日照時間が減ったかなど)が不十分である
・管理組合側の工事の必要性や合理性に比べ、Xが受ける不利益は「受忍限度(社会生活上、我慢すべき範囲)」を超えているとはいえない

【まとめ】
 Xは「新型コロナウイルスが収束しない中での臨時総会ですので、できるだけ出席を控えて」という招集通知の文言に配慮して総会を欠席しており、見積書の「パネルタイプ」という記載を見落としていました。
 大規模修繕は単なる「修繕」に留まらず、住環境を劇的に変える可能性を秘めています。新型コロナウイルスが影響していた事例ですが、コミュニケーションがあれば、法廷闘争は避けられたかもしれません。
 管理組合には「丁寧な説明」が、各区分所有者には区分所有者の責務として「自分事としての積極的な参加」が、改めて求められるといえるでしょう。

 

『写真でたどる 勝手気ままな旅日記』(その3)

大浦天主堂

ダイヤモンド・プリンセス号

7月28日~8月5日 ダイヤモンド・プリンセス号の船旅《前編》

 7月29日、私は今、横浜後発のダイヤモンド・プリンセス号の船上で、鹿児島県沖を走行しています。明日は長崎に寄ります。明後日は韓国の釜山に行き、その後青森のねぶた祭り、函館の港祭りを見て、5日に横浜大桟橋に戻ります。
 今回のクルーズは学校が夏休み中のため、親子連れが多くいました。約3,000人満席で、日本人約2,300人、外国人が約700人。その筆頭はアメリカ人約340人でした。
 ダイヤモンド・プリンセス号は、2004年に三菱重工長崎造船所で竣工されました。全長は290m.全幅37.5m.。総トン数は115.874トンで18層1,337室の客室を備えています。

 3日目の30日は最初の寄港地、長崎港に10時に入港しました。
 11時に下船し、軍艦島への乗り場へ行きましたが、誰もいませんでした。軍艦島デジタルミュージアムへ行き、13時40分発の乗船券を6,000円で購入(1日2便)。それまでの時間、近くの大浦天主堂、グラバー園の旧三菱ドッグハウス、旧リンガー住宅、グラバー邸を観光しました。その後長崎チャンボンを食べてから、軍艦島乗り場へ。
 出港後約40分、軍艦島に着き、見学広場3カ所移動して説明を受けました。
 軍艦島は19世紀後半、海底に眠る石炭を効率的に、自然の島を人工的に拡張して造られた海上都市です。
 島内には端島炭鉱が設置され、1890年に三菱が本格的に採掘を開始しました。
 炭鉱労働者とその家族のために、島には高層住宅、学校、病院などの施設が整備され、1916年には日本初の鉄筋コンクリート製高層アパー(7階建て30号棟)が建設され、1960年には東京以上の人口密度の人々が生活していました。
 動力源が石炭から石油に変わったため、1974年に炭鉱が閉山され、島は無人となり廃墟化しました。2015年明治日本の産業革命遺産として世界文化遺産に登録されました。
 16時過ぎに戻り、17時にイタリアンレストラン、サバティーニでビールと赤ワインを飲みながら美味しくいただきました。

グラバー園の旧三菱ドッグハウス

旧リンガー住宅

グラバー邸

軍艦島1

軍艦島2

資材不足と談合問題でダブルパンチ  どうする!?大規模修繕工事の停滞

 中東情勢を背景とした「ナフサ(粗製ガソリン)ショック」により、2026年現在、マンションの大規模修繕工事は全国的に深刻な停滞に見舞われています。
 業界団体の調査(4月3~10日実施。会員172社のうち87社が回答)では、全国で51社594物件(未着工含む)のマンションで修繕工期に遅れが生じているという回答がありました。
 実際に「入手困難や納期遅延が発生している」との回答は42社(48.3%)、356物件でした。
 停滞を引き起こしている主な要因と現状は以下の通りです。


1. 資材の物理的な供給停止・出荷制限
 「予算を上乗せすれば買える」という状況ではなく、物理的な供給停止が発生しています。防水材やシーリング材、シンナーなどの溶剤系塗料において、主要メーカーからの受注一時停止や出荷制限が相次いでおり、材料が手配できずに着工できない、あるいは工程表が白紙になるケースが急増しています。


2. 急激な価格高騰による修繕積立金の不足
 運良く資材の供給ルートが確保できた場合でも、価格は大幅に上昇しています。
 これにより、管理組合が設定していた事前の予算をオーバーしてしまい、計画の練り直しや一時金の追加徴収に関する議論が必要となることで、結果的に工事がストップする要因となっています。

3. 施工会社からの「延期・中止」打診と見積期限の短期化
 着工直前になって、施工会社側から「材料が入らないため延期してほしい」といった打診がなされるケースが増加しています。
 また、資材価格の変動が激しいため、見積もりの有効期限が従来より極端に短く設定される傾向にあり、管理組合での総会決議などの合意形成スピードが追いつかないことも停滞に拍車をかけています。


4. 談合問題
 ナフサ由来の資材不足が「外部的・物理的要因」であるのに対し、一部の設計コンサルタントや施工会社による談合は、大規模修繕を内部から停滞させる「構造的・人為的要因」として事態をさらに深刻化させています。

5. 不信感による「合意形成の凍結とやり直し」
 設計コンサルタントが業者選定を主導し、工事のチェックも行う「設計監理方式」において、コンサルタントと施工会社が水面下で結託している疑いが浮上すると、管理組合内のガバナンスが機能不全に陥ります。
「提示された見積もりは本当に適正なのか?」という疑念から、セカンドオピニオンの取得、コンサルタントの解任、さらには修繕委員会の解散や再結成へと発展し、着工までに数年単位の遅れ(プロセスの白紙撤回)が生じるケースが多発しています。
6.まとめ
 現在の修繕工事の停滞は、「資材が手に入らず着工できない(物理的停滞)」と、「談合疑惑と異常な予算オーバーにより、組合内の合意が取れない(合意形成の停滞)」のダブルパンチによって引き起こされています。
 ただし、「状況が落ち着くまで待とう」という安易な先延ばしは、防水機能の劣化による雨漏りやコンクリートの内部腐食を引き起こし、将来的に数百万円単位の追加費用(下地補修費など)を発生させる致命的なリスクになりかねません。
 劣化状況を診断し、緊急度の高い箇所(屋上防水など)から優先的に着手するなどの戦略的な判断が求められています。

<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2026-9-02>

 

『「マンションAI®」活用術⑭ 「マンションAI®」に相談してみよう!

「マンションAI®」に相談してみよう!

現在、全建センターの「マンションAI®」は数多くのマンションの理事、あるいは組合員からご質問が寄せられ、それに対してマンションAIが回答している、という実例があります。
このコーナーでは、実際にこの数カ月の間に管理組合の皆さんが「マンションAI®」を活用されている実例を紹介します。
【監修】全建センター筆頭理事・佐藤成幸

Q   

最近、区分所有法等が改正されたことで、うちのマンションの管理規約を見直さなければならないと言われています。
現在の管理規約ではなぜいけないのでしょうか?

A    

現在の管理規約のままで放置してしまうと、「法律違反によるトラブル」や「必要な修繕・決議が行き詰まるリスク」が生じることになります。
2026年4月に施行された改正区分所有法(およびそれに伴う国土交通省の「マンション標準管理規約」改正)は、建物の老朽化や所有者の高齢化・所在者不明といった、現代のマンションが直面している課題を解決するために行われました。
現在の古い管理規約のままだといけない具体的な理由は、大きく以下の4点です。
1. 管理規約の一部の条文が「法律違反(無効)」となり、無用な混乱を招く
区分所有法の改正事項の中には、それぞれのマンションの管理規約を改正しなくても強制的に適用される「強行規定」が含まれています。
つまり、今の管理規約が改正された区分所有法に矛盾している場合、区分所有法が優先されるため。自動的に効力を失い、無効となります。
今の管理規約に、改正区分所有法のルールに適合しない条文がそのまま記載されていて、「まだこのルールが有効だ」と住民が誤解してしまった場合、総会での手続きミス、決議無効、といった法的トラブルを招くことになります。
2. 「決議のハードルを下げる」新ルールの活用
今回の区分所有法改正により、総会の多数決議のハードルが緩やかになりました。
これまでは、管理規約の変更や共用部分の重大な変更といった重要事項(特別決議)を行う際、「全区分所有者」を基準とした厳しい賛成数が必要でした(絶対多数決議)。
しかし、改正区分所有法では、区分所有者の無関心や高齢化による決議の停滞を防ぐため、「出席者」(実際に出席した人、委任状・議決権行使書を提出した人)を基準にして決議できる仕組み(出席者多数決議)などが導入されたのです。
このルールは、管理規約を見直してこの仕組みを取り入れないと活用できません。
「規約に別段の定めがない限り」(改正区分所有法第39条第1項)という文言が明記されていて、各マンションの管理組合は、それぞれの事情に合わせて管理規約で異なる決議要件を定めることが可能となっているためです。
このため、管理規約を改正しないままでは、管理組合は古い厳しいルールのまましばられ続け、必要な修繕工事の合意や、時代に合わせたルール変更も、決議のハードルが高いままとなります。
3. 「連絡が取れない所有者」への対策
長期間連絡がつかず、管理費を滞納したり、建物の維持に支障をきたしている所在不明の所有者に対し、改正区分所有法では「裁判所の決定で議決権の分母から除外する制度」や「管理不全の部屋に専任の管理人を置く制度」、海外に住む所有者などへの対策「国内管理人制度」などが創設されました。
しかし、実際にこれらの制度についても、スムーズに運用するには、それぞれのマンションにおける管理規約で、あらかじめ運用に関する明確なルールを定めておく必要があります。
4. マンションの「資産価値」や「管理評価」が下がるリスク対策
法改正に対応していない古いままの管理規約は、外部から「適切な管理・アップデートが行われていないマンション」と見なされる要因になります。
これは、自治体の「マンション管理計画認定制度」などでの評価が下がる原因になるだけでなく、中古市場において将来の買い手に対する不安要素となり、結果的にマンション全体の資産価値の低下を招く恐れがあります。
5.まとめ
管理規約の見直しは時間のかかる作業ですが、古いまま放置することは管理組合の機能を低下させる原因になります。国土交通省が公表している新しい「マンション標準管理規約」を参考に、現在のルールとのズレを確認し、総会での特別決議を経て最新の状態へアップデートすることが強く推奨されています。(上表をクリックすると全文を表示されます)

昔話「金太郎」に学ぶ、価値を見いだす他者の目

 相模国足柄山の奥で、山姥に育てられた金太郎という少年がいた。熊を相手に相撲をとり、大木をへし折り、まさかりを担いで山を駆け回る。並の者には真似できない膂力を持ちながら、山の中ではその力の値打ちを確かめる者も、ましてや欲しがる者もいなかった。
 物語が動くのは、そこへ源頼光という京の武将が通りかかったときである。彼は金太郎の怪力に目を留め、少年を家来に取り立てた。「坂田金時」と名を改めた金太郎は、やがて頼光四天王の一角として名を残すことになる。転機は力そのものではなく、その力を見抜いたたった一人の目にあったのだ。
 これを現代に読み替えると、少し苦い。私たちの社会は、誰もがなるべく公平に測れるようにと、人の力を目盛りに換算してきた。試験の点数、資格、偏差値、年収。数えられるものは重宝され、数えにくいものははじめから採点の外に置かれる。熊と取っ組み合う胆力や、頼まれもしないのに大木に挑む野心は、履歴書のどこにも書き込めない。   私自身、振り回すまさかりの重さよりも、その振り方を整った言葉で説明できる者のほうが、いまの世の中では渡りやすいのだと、幾度となく思い知らされてきた。
 だが、この昔話にはもう一つの教えが静かに伏せられている。金太郎を金時に変えたのは、磨くという営みではなく、磨く以前の石に価値を見いだす他者の目だった。
 山でいくら強くとも、頼光の目がなければ彼はただの力自慢の山の子で終わっただろう。いまを生きる誰かにとっての頼光は、面接の向こうに座る採用担当かもしれないし、背中を押してくれた師や、何気ないひとことで才に名を付けてくれた友かもしれない。
 原石は、まず石だと気づかれなければ磨かれない。金太郎という古い寓話が、数の時代に生きる私たちへそっと差し出すのは、その小さく、けれど切実な教訓なのだ。

 (ジャーナリスト 井上勝彦/絵:吉田たつちか)

 <おもしろコラム提供>//omosiro-column.com/

このセミナーで学べること

 

第83回オンラインセミナーでは、一般社団法人全国建物調査診断センターが、このほど、開始した新らしいサービス(マンションAI®コンサルタントシステム Z)について詳しくご説明します。今話題のAIロボットを活用しマンション管理士監修と新しい建物診断書により長期修繕計画を見直すことで、談合問題もクリアするという画期的なシステムとして自信をもってスタートさせたものです。いち早く、ご理解をされて、お早めに、チャレンジされることをおススメいたします。

 

//zenken-center.com/83sm/

全建文庫、66冊突破/全建文庫電子Book版を無料公開しました。

 全国建物調査診断センターでは創立から17年以上にわたり毎月「大規模修繕工事新聞」をマンション管理組合に発信し続けて交流を促進してまいりました。また、隔月で開催している管理組合セミナーは82回となりました。さらに、これら蓄積した「経験情報」を各テーマ別にまとめ、全建文庫として販売しておりますが、その数が66冊になりました。 今後もマンション管理組合セミナーや大規模修繕工事新聞の取材、管理組合セミナー、そして、全建センターで取り扱った各種相談などから情報を収集・編集し、発信してまいります。 なお、全建センターでは、全建文庫65冊突破を機に、管理組合、マンション居住者に同文庫の電子ブック版を無料公開しました。 無料公開の全建文庫一覧は下記の専用HPで公表、こちらから、読みたい書籍の画像をクリックすると、当該書籍閲覧するための暗証番号が求められるので、専用HPに公開されている暗証番号を入力すると、当該書籍電子ブック版が表示されます。
//z-center.net/zenkenbunko

発行元の全建センター・吉野代表理事は「貴重な情報源として多くの管理組合役員から高く評価されていることから、一般社団法人設立の趣旨から、これを広く無料公開することで、大規模修繕業界に降りかかっている様々な問題解決の一助になれば」と公開に至った心情をかたり、「100冊発刊のゴールを目指して、今後も、全建文庫の発行を続けていきたい」と決意を述べている。

全建文庫は下記サイトから閲覧または購入(紙書籍版)ができます。

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5.全建文庫66冊突破チラシ

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