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マンションの鍵預かりを考える

マンションの鍵預かりを考える

NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2018年7月5日付第431号「論談」より


 うっかりして鍵を落と した、忘れたといった鍵 をめぐるトラブルが増え ている。
 超高齢化、認知症高齢 者の増加が進む築30年 後半、40年以上のマン ションでその傾向が顕著だ。
 築50年の千葉市の稲毛海岸3丁目団地(768戸)で は3年前、鍵預かり制度をはじめた。認知症高齢者 の鍵の紛失などが増え、70歳以上の高齢者を対象に、 申請書と引き換えに鍵を預かる。さらに空き家所有 者からも鍵預かりを広げ、合わせて80戸から預かっ て管理組合の金庫に厳重に保管する。
 高齢者からは無料、空き家所有者からは点検費用 として3カ月ごとに1,500円とこちらは有料。全戸 768戸のうち10%超の80戸で利用があり、利用率は小 さくない。
 鍵預かりで、部屋に立ち入られる不安が懸念され るが、住民と管理組合との信頼感がしっかりしてい るから、トラブルはゼロ、という。
 横浜市の民間マンション(426戸)は、全戸の鍵を 管理会社が預かる。こちらは約7年前から開始。東日本大震災の経験から、大震災などいざというとき に管理会社が鍵を預かっていれば、帰宅困難などで 家族がバラバラになった時などに救いになる、また 平時の鍵忘れにも対応できる安心感からこの制度を はじめたと理事長は強調する。
 このマンションは東日本大震災では大きな被害は なかったが、管理会社に防災対策の整備を要求、管 理組合自身もフロアごとにフロアにリーダーを決め、 防災会議を開くなど防災に強いマンションを目指し ている。
 3年に一度、昼間の連絡先、血液型の登録を更新 する。住民が若いせいか、制度発足以来、預かった 鍵の利用の事例は発生していない。
 鍵預かりについて大手管理会社に聞くと、管理員 の人手不足から広げるのは難しい、と口をそろえる。
 実際に引き受けている一部の管理会社は管理組合と 契約を交わして引き受けるが、実際は警備会社に委 託しているのが実情、という。高齢者の多いマンショ ンでは気心の知れた友人同士で緊急の時を考え、鍵 を預け合うことは習慣化しているというが、鍵預か りの成否のカギはどうやら住民同士、管理組合と住 民の信頼関係に尽きるようだ。
(NPO日住協論説委員会)

(大規模修繕工事新聞106号)