Point
① 原則は、被害者と加害者との間における問題にとど まる ② 例外的に、被害者が複数戸にわたる場合などは、管 理組合を当事者とする問題になりえる
騒音トラブルを法的に整理すると、「加害者の行為に よって、被害者の人格権が侵害されたと評価できるか否 か」という問題になります。
この人格権は、属人的な権利(その人に固有の権利)ですから、紛争の法的な意味での当事者はあくまで被害 者と加害者に限られ、管理組合は原則として無関係です。
このため、管理組合が騒音トラブルに関与するとしても、その立場は事実上の紛争調停者としてのものに限ら れます。
ただし、加害者の騒音被害がほかにも迷惑行為に及んでいる場合は、加害者によって侵害されている権利が被害者の属人的な人格権にとどまらず、広く区分所有者全 体の共同の利益に及んでいると考えられます(本当に共 同の利益が侵害されているか否かは、最終的には裁判所 によって判断されます)。
結論として管理組合の対応は、まず第三者の立場で紛争の調停者となって慎重に対応します。
他方、被害が共同の利益にも及んでいると考えられる場合には加害者に対し、訴訟外の警告等を行った上で、 規約違反に基づく差止め請求や、区分所有法57条以下の 迷惑行為者に対する各請求を行ってい くことになります。
(大規模修繕工事新聞 118号)
〈参考〉
『マンション管理組合のトラブル相談Q&A』
著者/中村宏弁護士・濱田卓弁護士
発行/民事法研究会 A5判・301ページ
定価/ 3,100円(税別))
2019年2月発行
ISBN:978-4-8655-6271-2