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管理組合書類への閲覧・謄写請求 どのように対応すべきか

Point

① 「閲覧」のみを認める規約の場合でも、「謄写」が可能と判断される可能性がある
② 抜本的な解決のためには規約の全面的な改正が必要である

 マンション標準管理規約では、総会議事録(49条)、会計帳簿、什器備品台帳、組合名簿、その他帳票類(64条)などを閲覧の対象としています。
 もっとも組合員らによる閲覧を認めても、謄写は認めていません。東京高裁(平成23年9月15日判決)は「規約に規定がない限り、謄写請求は認められない」との判断を示しました。
 ところが大阪高裁(平成28年12月9日判決)では規約に謄写請求を認める規定がないにもかかわらず、謄写請求を認める判断を示しました。
 裁判所の判断も別れているのが現状です。管理組合保管書類の閲覧・謄写をめぐるトラブルを抜本的に解決するためには、①原則的に閲覧および謄写請求を許容しつつ、請求が権利の濫用にあたると認められる場合には例外的に請求を認めない②センシティブ情報が含まれている度合いなどに着目してその重要性を分類し、その分類ごとに閲覧・謄写、請求者の人数の要件などを組み合わせて合理的な結論を導くというアプローチが考えられます。
 私見では、②のアプローチを基本としつつ、①も加味することが最善と考えます。
 ただ、どの書類がどの分類に該当するのか、濫用的な請求に対する規定など、あるべきルールの制定は容易ではありません。
 権利意識の高まりなどを背景に、今後もこのようなトラブルは増加することが予想されますので、管理規約はより具体性の高いルールの制定が求められるといえるでしょう。

大規模修繕工事新聞(121号)

<参考>
『マンション管理組合のトラブル相談Q&A』
著者/中村宏弁護士・濱田卓弁護士
発行/民事法研究会
A5判・301ページ
定価/ 3,100円(税別))
2019年2月発行
ISBN:978-4-8655-6271-2