「新4K8K衛星放送」が2018年12月に開始して1年が経過しました。新4K8K衛星放送は、これまでの衛星放送とは異なった規格で受信するシステムのため、4Kや8Kテレビの購入と合わせて、受信設備の改修が必要です。ところが多くのマンションでは、新4K8K衛星放送に対応する改修はあまり進んでいないのが現状のようです。
最近では4K・8K受信システムも多様化し、マンションでの設備改修についても事例が増えてきています。 今夏は東京五輪・パラリンピックが開催されます。管理組合としてなるべく早い対応をする必要があるといえるでしょう。
大規模修繕工事新聞(121号)※テレビ受信向上委員会セミナー資料より
4K・8K受信の基本
現在、家電売り場で新4K8K衛星放送に対応するテレビが売られていますが、一部ケーブルテレビやインターネットなどの配信サービス以外、対応するテレビを購入しただけでは一部の放送しか一般の家庭で視聴することはできません。
また、視聴するにしても4Kや8K対応のテレビでは受信機能のあるチューナーが必要となります。
加えてマンションで新4K8K衛星放送を見るためには、右左旋共用アンテナの設置や、ブースター、分配器などテレビ共同受信設備を3,224MHz対応機器へ改修することが必要です。
設備の改修には工事計画、資金調達、総会決議、工事発注などの手続きなど、工事完了まで長期間を要します。
※ 現行のハイビジョン(2K)は2018年以降も継続して視聴可能。スーパーハイビジョン(4K・8K)を必要としない家庭では新しいテレビを購入しなくても、今のテレビのまま2Kのテレビ番組を見ることは可能です。
○新4K8K衛星放送とは
新4K8K衛星放送は、現行のハイビジョン(2K)を超える超高精細な画質による放送をいいます。スーパーハイビジョンの解像度は4Kが約800万画素、8Kが約3,300万画素で、それぞれハイビジョン(2K)の4倍、16倍超となり、より立体感、臨場感ある映像を楽しむことができます。
○新4K8K衛星放送を見るためには
これまでBS放送、110度CS放送は放送衛星より右旋(うせん=右回り)の電波のみ送られていました。それを左旋(させん=左回り)も使って放送すると、右旋と同じ分の帯域が新たに使えることになります。この左旋の電波を使うことで新4K8K衛星放送を実現させています。
このため、新4K8K衛星放送を見るためには右左旋共用のアンテナが必要となり、使用周波数帯域3,224MHzまで対応する機器に変更(改修)する必要があります。
基本的な改修方法(アンテナ、ブースター等の交換)
新しい改修方法①
プラスチック光ファイバー(POF)の追加による受信
現在、使用しているパラボラアンテナを新4K8K衛星放送対応アンテナへ交換するとともに、①共用部分へPOF用光送信機を設置する②4K・8K受信を希望する世帯のみにPOF用光受信機を設置するなど、希望する住戸から導入することができます。
<主な特徴>
・既存の設備はそのままで、希望世帯から順次導入可能
・希望する住戸へPOFケーブルを敷設し、POF用光受信機を設置
・ POFケーブルは電波漏えいが少なく、また細く、柔軟性に優れているため、既設配管への通線が容易で、露出施工をする場合も目立ちにくい
・ 伝送可能距離が最大200mのため、大規模なマンションでは導入が難しい
新しい改修方法②
周波数変換装置の導入による受信
現在、使用しているパラボラアンテナを新4K8K衛星放送対応アンテナへ交換するとともに、①新4K8K衛星放送対応アンテナとブースターの間に「既存設備で伝送できる周波数に変換する装置(ダウンコンバーター)」を設置する②4K・8K受信を希望する世帯に「元の周波数に戻す装置(アップコンバーター)」を設置する方法を導入します。
<主な特徴>
・ 既存の受信設備に周波数変換装置を追加するだけで対応可能
・ アップコンバーターを追加することで、受信を希望する住戸が増えた場合も対応可能
・ 空き周波数がない場合(例:ケーブルテレビ導入マンション等)は利用不可
・ 将来チャンネルが増えた場合、別途対応が必要となる可能性がある
4K・8K受信方法一覧
東京五輪・パラリンピックの開催により、よりよいテレビ受信で競技を観戦したい人が増えています。管理組合の対応が遅れると、新4K8K衛星放送を見たい住戸が待ちきれず、ベランダに勝手に受信アンテナを設置するケースが増えると考えられます。
共用部分であるベランダへの個別アンテナの設置は、マンションの外観を損なうばかりか、アンテナが落下した際の責任問題など、トラブルになりやすい事案です。
こうした問題を避けるためにも管理組合での取り組みが必要となります。マンションの住民から「なぜこれまで、4K・8K受信に設備改修をしなかったのか」などといった苦情が出ないよう、管理組合内での早めの検討と対応を行うべきでしょう。