「大規模修繕工事新聞」は、一般社団法人 全国建物調査診断センターが発行するマンションの適正な管理に役立つ管理組合向けのフリーペーパーです。首都圏、関西圏の約30,000の管理組合に直接、無料で発送しています。また、同じ内容のメルマガ版は登録いただいた方に無料配信しています。当HPでは、「大規模修繕工事新聞」の過去から現在に至るまで、全ての記事を収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を左下の検索窓からキーワードを入れるだけで必要な情報を得ることができます。

Data. 3 「施工不良、管理組合負担は納得できない」

「施工不良、管理組合負担は納得できない」 不法行為への損害賠償求め、提訴に踏み切る

近年、築10年を経過したマンションにおいて、外壁調査を行ったり、大規模修繕工事の検討をしている際にタイルの浮きなどが多数発見されて、紛争に発展するケースが増えている。

2014年、築10年・32戸のマンションで、管理会社のフロント担当が大規模修繕工事の提案として調査診断報告書を理事会に提出した。組合運営はこれまでほとんど管理会社任せで、輪番制の理事会も年に3、4回喫茶店で開く程度。役員は理事長、副理事長、監事の3人。先送りされた次年度の理事会が自身の負担から逃れるように修繕委員会のメンバーの募集を開始した。
そこで組合員のA氏が、以前から疑問を持っていた思いを確認するため修繕委員に立候補した。ただし、修繕委員会と言ってもA氏の他は高齢の元理事長、元監事の奥さんが名前を並べただけ。A氏の疑問やモヤモヤは自身で解消するしかなかった。
A氏は戸建てやアパート中心の建設業者に勤める会社員。一級土木施工管理技士の資格も持っている。そんなA氏が抱いていた疑問とは「管理会社がマンションの保険を使ってこそこそ修理しているじゃないか」ということだった。
「天井の(仕上げ材として用いられる)リシンが剥がれて落ちているのを台風の後に保険適用で部分的に修補していたようだった」
A氏は疑問やモヤモヤの原因が施工不良にあるのではないかと思うようになっていく。
さらに管理会社の大規模修繕工事の見積もり額が修繕積立金の残高約6,000万円とほぼ同じ額で提出されたことで、モヤモヤがより深く刻まれた。管理会社はデベロッパーの子会社。「すべて言いなりでは、お金もすべてむしりとられてしまう」。
A氏は管理会社に頼らず、大規模修繕工事の情報を得るため、インターネットで情報収集をはじめた。そこで全国建物調査診断センターのホームページにヒット。同センターに電話相談し、マンション大規模修繕工事の専門家であるコンサルタントを紹介してもらうことを選択した。
そして、このコンサルタントと2人3脚で大規模修繕工事の計画を立て、理事会の諮問機関である修繕委員会としての立場をわきまえながら、大規模修繕工事の実施へと進めていった。

「こんな施工不良をなんで管理組合負担で修繕しなきゃならないのか納得できない」。A氏がコンサルタントにそう話したのは、大規模修繕工事で足場仮設工事を行い、改めて調査をした結果、あまりにもタイルの浮きが多いことが判明したときだった。
コンサルタントは「これはちょっとひどすぎる。1回目の大規模修繕工事だと、タイルの浮きが3%あることはほとんどない」と言い、同マンションではそれが5%~ 10%あるのではないかと推測した。「これは新築時の施工が悪い」。

とにもかくにも大規模修繕工事ははじめてしまった。A氏が管理会社に施工不良を訴えようとも、工事を途中で止めることはできない。
また、瑕疵担保期間の10年も過ぎている。デベロッパーはアフターサービス担当が出てきて、口八丁、まったく相手にもされなかった。
管理組合が施工瑕疵や施工不良を訴えても、建築紛争調停など話し合いで落としどころを見つけて解決するのが一般的だ。管理組合が訴訟に踏み切れば公示されることになる。
デベロッパーの担当者が言う。「無理して裁判沙汰にしたら、資産価値が下がりますよ」。
 「冗談じゃない!」足元を見た相手の態度が許せなかった。
 A氏は理事長に立候補。「がんばっているのはAさんだから」。総会で他の組合員もA氏に一任。A氏は区分所有者の代表(管理者)として、元施工会社の不法行為に対する損害賠償を求めて2017年、提訴に踏み切った。
 不法行為は民法724条で、それを知ったときから3年、また不法行為の時から20年の時効がある。このため築10年超えても裁判で争うことができるのだ。
 大規模修繕工事は進んでいるため、タイルの浮きは残せない。A氏は大規模修繕工事を行っている会社の協力を得ながら、証拠となる写真や設計図書などを提出し、タイル落下の危険性を主張。結果、元施工会社から1,000万円の和解金を受け取ることができた。
 A氏はいう。「住民だけが泣き寝入りなんて考えられない。裁判を起こして価値が下がるのはマンションも会社も同じはず。だったら会社側の言いなりになってばかりはいられません」。

(大規模修繕工事新聞 2020-04)

全国建物調査診断センターでは闘う管理組合を応援しています。現在の管理体制に疑問がある、不満があるという管理組合、また現状を打破したい、適正管理へのきっかけ作りをしたいと考えている管理組合は、ぜひ下記までご連絡ください。
一般社団法人 全国建物調査診断センター
〒160−0023 東京都新宿区西新宿8−12−1 サンパレス新宿603
☎03−6304−0278 FAX:03−6304−0279
E-mail: info@zenken-center.com

●マンション建物概要
 ・2004(平成16)年9月竣工
 ・RC造・地上7階建て ・全32戸
●大規模修繕工事履歴
 ・第1回 2016年9月
●管理組合運営適正化への軌跡
 ・2014年 管理会社が建物調査診断報告書を提出大規模修繕工事を提案
 ・2015年 修繕委員会を立ち上げ、管理組合として大規模修繕工事の検討を開始
 ・2016年 大規模修繕工事を実施
 ・2017年  元施工会社に対し、不法行為による損害賠償訴訟を提起
 ・2018年  示談により管理組合と元施工会社との和解が成立

不良個所のマーキング

外壁タイルがまとめて剥離している

共用廊下側のタイル剥離
(写真はすべて参考写真)