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闘え!マンション管理組合奮闘記/Data.4

デベロッパー、管理会社倒産が管理組合目覚めの要因・ 専門委員会立ち上げ、適正な管理費・修繕積立金の見直しへ

 管理会社に対して「管理業務がきちんと行われていない」と不満を口にする管理組合は少なくない。ただし、不満を言う人が管理委託契約の内容を把握していない場合が多いことも否めない。

 事例マンションは神奈川県の郊外に立地する2006年竣工・20戸・6階建て。普段から管理員の不在が多い、日常清掃も行われていない…と、やはり住民の不満は多かった。
 ところが、この小規模マンションの管理委託契約をみると、管理員は月・水・金のごみ収集日の午前中のみ。清掃員も火・木で、こちらも午前中だけという内容だった。
 一度、管理の内容を見返そうとしたところ、地元デベロッパーとともに子会社である管理会社も倒産。日常管理が突然、宙に浮いてしまった。
 慌てた当時の理事会(3人)がインターネットを巡り、管理組合をサポートする団体に相談。相見積もりによって、新たな管理会社の選択を行った。管理組合目覚めの要因となる。
 このとき築9年。これまでの修繕積立金は戸当たり2,000円/月。20戸なので組合財産は400万円程度しかなかった。
 当時の役員はいう。「A社(新しい管理会社)が全住戸を説得して修繕積立金を5倍に値上げしてくれた。住民だけでは値上げはできなかった」。
 管理会社の変更を行ったことで、管理委託契約の内容も理解し、計画修繕の必要性も発見できた。3年後の築12年目に行う大規模修繕工事に向け、コミュニティーの大切さもわかってきた。
 さらに神奈川県の郊外とはいえ、最寄駅の開発が進んだことにより、小さな子どものいる世帯が増えはじめたことが追い風になった。
 住民間の交流ができ、夏は駐車場に子ども用プールを作って、水遊びをさせるなど、親同士のコミュニティーがはじまった。これからその子どもたちがそろって近隣小学校に通うことになる。
 20戸の小さなマンションが起動を開始したのである。

 ところが…築12年目に計画した大規模修繕工事で、管理会社が提案してきた見積額は約2,400万円。それまでに貯まる組合財産に対して1,200万円以上も不足する額である。
 悩んだ管理組合は、管理会社選定の時と同様、管理組合をサポートする団体に相談し、工事の実施計画を1年延長。その間に相見積もりによる工事会社の選択する方法を行うこととした。
 結果として、マンションの大規模修繕工事を専業とする工事会社に決まったものの、工事額は2,000万円。築13年で貯まった額に600万円不足したが、金融機関からの借り入れも工事会社を通して行い、初めての大規模修繕工事を実施することができた。

 今後、大規模修繕工事に尽力した理事が専門委員会を立ち上げ、そのメンバーとして残り、適正な管理費や修繕積立金の見直しを行っていくという。「サポート団体の専門家にアドバイスを受けたことで、適正で迅速な工事
ができた。もっと自分たちで組合運営を意識していきたい」。
 2019年の総会出席率(委任状含まず)は、90%(18戸)となった。

大規模修繕工事新聞 2020年7月号

●マンション建物概要
 ・2006年竣工・RC造り・6階建て・全20戸
●大規模修繕工事履歴
 ・2019年9月
●管理組合運営適正化への軌跡
 ・2015年 デベロッパー、管理会社倒産新管理会社を選定、修繕積立金値上げ
 ・2018年  工事計画を延長。施工会社を選定
 ・2019年 第1回大規模修繕工事を実施
   〃    専門委員会を立ち上げ、管理費・修繕積立金の見直しを開始