月刊「大規模修繕工事新聞」は、一般社団法人 全国建物調査診断センターが発行するマンションの適正な管理に役立つ管理組合向けのフリーペーパーです。コロナ過を契機に発行形態を紙媒体から全面的に電子版に移行いたしました。それにともない、これまで首都圏、関西圏のみの発行でしたが、ネット配信の強みを生かし、全国規模に拡大しました。当HPでは、「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を右の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。今後とも、マンション管理組合さまのお悩みに寄り添い適切な情報をお届けしてまいります。

闘え!マンション管理組合奮闘記/Data.8

理事長職 17 年、長期政権の危険性 「逆らって住みづらくなるのでは」と心配も

分譲会社や建築会社、管理会社に対抗して立ち上がる管理組合は、共通の“敵”の存在に対して、住民同士がまとまる傾向にあり、コミュニティ活動が盛んになるなど、思わぬ副産物につながることがある。
 一方、マンション内部でもめごとがあると、合意形成を阻むことにつながり、住みにくいマンションの典型となってしまう。そんなマンションでは住民は当然、組合活動に無縁で、特定の人の利得となる組合運営が平然と行われていることが多い。

 現在の理事長Xさんは、その役職について今年で17年目になるという。理事は立候補制で、メンバーも変わらない。ただ、決め事をしているのは理事長だけで、他の理事は理事長にお任せしている。そんな状態がずっと続いてきているマンション。
 そのX理事長が得意げに語るのだという。「私がやってきたことは全部記録している。だれが見ても一目瞭然、いつ何をやったかすぐわかる」。
 Aさんがマンションに越してきたのが3年前。それまで住んでいた名古屋のマンションでは輪番制の理事会で、理事長を17年も続けているというのが信じられなかった。 さらにX理事長のいう「管理組合活動履歴」という書類をみたが、「第○期 鉄部塗装 1,200万円」「第○期 共用部分火災保険料 5年一括
480万円」など、これまでの実績を表にしているだけの簡易なもので、何がすぐわかるのか、言葉が出なかった。
 そして何よりもまず気になったのが会計処理に関して、駐車場使用料収入の記載がどこにもなかったことだ。
 Aさんは駐車場使用料の充当先についてX理事長に尋ねた。返答は「駐車場はYさんのものだからね。管理組合は管理料をもらって管理しているんだよ」。まったく意味がわからない。
 Yさんとは周辺一帯の大地主とのこと。マンションももともとYさんの土地で、現在は住戸3戸と3店舗のほか、18台分の駐車場がある1階ピロティ部分を所有権登記しているらしい。
 その駐車場を管理組合が管理している? Yさんから管理料をもらっている?
 管理会社は現在、独立系の大手管理会社に委託しているが、元の管理会社はマンションを分譲した地元デベロッパーだった。会社の倒産によって、現在の管理会社に変更。ただ、フロン
トマンの姿を見たことがない。
 Aさんが全建センターに相談に来たのは「わからないことが多々あることがわかってきた」という段階で、「この状況をどう踏み込んでいいのか」と困惑しているということだった。長期政
権の危険性は、(自覚があるにしろ、ないにしろ)自分のやっていることが当然で間違いないと思い込んでしまうことにある。
 ただ、X理事長は80歳近い。40代のAさんはX理事長に言い切られると言葉を飲み込んでしまう。
 だから聞いてもらえる相談先がほしかった。

「駐車場は建物の1階部分にあるんです。まずYさんの所有というのがおかしくないですか?」
 また、短期間のうちに定期的に行っている鉄部塗装、屋上防水、きっちり10年周期の大規模修繕工事、その他防犯カメラ設置、エントランスの自動ドア化、共用照明のLED化、エレベーターの更新など、何かしらの工事が毎年行われている。「こんなに毎年工事をやる必要があるんですか?」。
 見えてきたのは、大地主Yさんのバックボーンのもと、理事長Xさんが好き勝手にやっているというイメージ。相談先としては、聞けば聞くほど具体的に確かめなければ、一概なことはモノ申せない状況になってきた。
 来年は3回目の大規模修繕工事が予定されているという。工事の必要性をX理事長に聞いたところ、「長期修繕計画にあるから。これまでと一緒の工事で、特別な工事はない」「グレードアップ工事などはその都度やっているから必要ない」そうだ。
 Aさんは疑問を持っているからと言って、「あまり逆らうようなまねをして、住みづらくなるのでは」という心配もある。やはり、問題解決には同調する仲間を増やすことだ。現在はコロナウイルスによってコミュニティ活動をすることは難しいが、地道に管理運営に携わる人を増やすことが一番である。
 急激な行動は“反発”と受け止められやすい。こうした時期だからこそできる行動は何か―例えばオンラインによる会議を試みるなどを考えみるのもよいかもしれない。
 適正なマンション管理は、まずは住民の自律からである。


 

(大規模修繕工事新聞 139号)

●マンション概要
 ・Hマンション管理組合
 ・築30年・RC造・2棟・11階建て
 ・40戸+3店舗
 ・駐車場/ 18台
 ・役員/理事5人、監事1人
 ・任期/ 1年(立候補制)、再任を妨げない
 ・理事会開催頻度/2カ月に1回

 建物部分の敷地が旧地主の専有部分として登記され、どうして駐車場使用料等の収益をあげられるのか納得いかないが、過去にも分譲会社が専有部分の所有権と駐車場の専用使用権を二重分譲して紛争になったケースは少なくない。
 昭和54年に建設省(当時)が「分譲業者が共有敷地等に専用使用権を設定してその使用料得る等の行為は、取引形態として好ましくない」などとする通知を業界団体に出しているが、平成に入ってからも区分所有者の共有財産である敷地に、別途駐車場の専用使用権を付けて分譲するなどの方法がみられている。
 裁判例をみても紛争解決はケースバイケースの様子。個別の対応は個別に、弁護士に相談したほうがよいといえよう。

 全国建物調査診断センターでは闘う管理組合を応援しています。現在の管理体制に疑問がある、不満があるという管理組合、また現状を打破したい、適正管理へのきっかけ作りをしたいと考えている管理組合は、ぜひ下記までご連絡ください。
一般社団法人 全国建物調査診断センター
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