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IT活用の総会・理事会開催の あり方を条文化/マンション標準管理規約 改 正

 国土交通省は、令和2年6月に成立・公布された改正マンション管理適正化法および改正マンション建替え円滑化法、昨今のコロナ禍の社会情勢を踏まえ、マンション管理の新制度の検討をすすめてきたところ、今年6月22日、マンション標準管理規約を改正・発表しました。
 第2条(定義)に「WEB会議システム等」を追加し、第38条(理事長)でWEB 会議システム等を用いて開催する総会・理事会において、理事長よる事務報告が「ITを活用した総会・理事会」等でも可能なことを記載しました。その他、ITを活用した総会・理事会を開催する場合の招集手続、議決権、議事、理事長の報告など、それを可能とすることを明確化する観
点から改正を行っています。
 また、現下のコロナウイルスまたは今後も懸念される感染症の対策として、共用施設の運用や、いわゆる「置き配」のルール設定ができる旨、規約条文に盛り込んでいます。
 共用部分と専有部分の配管を一体的に工事する場合の取り扱いは、これまでその費用をめぐって裁判で争われた例もあることから、標準管理規約に一定の考え方が明記されました。
 2022年4月マンション管理適正化法改正で実施予定の「管理計画認定制度」、マンション建替え円滑化法で対象が追加される要除却認定についても盛り込んでいます。
 その他、長期修繕計画は計画期間が30年以上で、大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とされ、書面様式における押印個所が削除されるなどの見直しも行われました。
 マンション標準管理規約はあくまで国が示した一定のガイドラインですが、昨今の社会情勢や裁判事例などを反映しており、各マンションでも「標準―」を参考にしてそれぞれの管理規約を見直してみることも必要といえるでしょう。
(大規模修繕工事新聞 第140号)

1.ITを活用した総会・理事会
○「WEB会議システム等」定義の追加
〈第2条(定義)〉
 「WEB会議システム等」…電気通信回線を介して、即時性及び双方向性を備えた映像及び音声の通信を行うことができる会議システム等をいう。
○ 理事長による事務報告がWEB会議システム等を用いて開催する総会・理事会(ITを活用した総会・理事会)等でも可能なことを記載
〈【コメント】第38条(理事長)関係〉
・ WEB会議システム等を用いて開催する総会・理事会において、理事長が当該システム等を用いて出席し報告を行うことも可能であるが、WEB会議システム等を用いない場合と同様に、各組合員からの質疑への応答等について適切に対応する必要があることに留意すべきである。
○ WEB会議システム等にアクセスするためのURLを開催方法として通知することが考えられることを記載
〈第43条(招集手続:総会)・第52条(招集:理事会)〉
○ ITを活用した議決権の行使は、総会や理事会の会場において議決権を行使する場合と同様に取り扱うことを記載
〈第46条(議決権:総会)・第53条(理事会の会議及び議事)〉
○ 「ITを活用した総会・理事会」等の会議の実施が可能であることおよび定足数を算出する際のWEB会議システム等を用いて出席した者の取り扱い等について記載
〈第47条(総会の会議及び議事)・第53条(理事会の会議及び議事)〉

2. マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高い場合等の対応
○ 感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合における共用施設の使用停止等を使用細則で定めることが可能であることを記載
〈【コメント】第18条(使用細則)関係①〉
・ マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合において、使用細則を根拠として、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することは可能であると考えられる。
○ 感染症の感染拡大の防止等への対応として、「ITを活用した総会」を用いて会議を開催することも考えられるが、やむを得ない場合においては、総会の延期が可能であることを記載
〈【コメント】第42条(総会)関係〉
・ 災害又は感染症の感染拡大等への対応として、WEB会議システム等を用いて会議を開催することも考えられるが、やむを得ない場合においては、通常総会を必ずしも「新会計年度開始以後2カ月以内」に招集する必要はなく、これらの状況が解消された後、遅滞なく招集すれば足りると考えられる。

3.置き配
○ 置き配を認める際のルールを使用細則で定めることが考えられることを記載
(置き配とは、非対面で荷物などを配達するサービスのこと)
〈【コメント】第18条(使用細則)関係④〉・ 専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱
雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。

4.専有部分配管
○ 共用部分と専有部分の配管を一体的に工事する場合に、修繕積立金から工事費を拠出するときの取り扱いを記載
〈【コメント】第21条(敷地及び共用部分等の管理)関係⑦〉
・ 配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。なお、共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる。その場合には、あらかじめ長期修繕計画において専有部分の配管の取替えについて記載し、その工事費用を修繕積立金から拠出することについて規約に規定するとともに、先行して工事を行った区分所有者への補償の有無等についても十分留意することが必要である。

5.管理計画認定及び要除却認定の申請
○ マンション管理適正化法に基づく管理計画の認定の申請を追加
○マンション建替え円滑化法基づく要除却認定の申請を追加
〈第48条(議決事項:総会)第8号、第13号〉
・ 総会の議決事項として、改正適正化法第5条の3第1項に基づく管理計画の認定の申請および円滑化法第102条第1項に基づく除却の必要性に係る認定(要除却認定)の申請を追加し、これに合わせて規定順を整理する。
〈【コメント】別添4 管理情報提供様式に記載のある項目例〉
・「2 管理計画認定の有無、認定取得日」を新設する。
・「 11 建替え等関係 ①建替え推進決議の有無 ②要除却認定の有無 ③建替え決議、マンション敷地売却決議の有無」を新設する。

6.その他所要の改正
○書面・押印主義の見直し
〈【コメント】第19条(専有部分の貸与)・第72条(規約原本等)〉
・書面様式を改定し、押印個所を削除する。
・「記名押印した規約」を「署名した規約」とする。
○長期修繕計画の期間等を変更
〈【コメント】第32条(業務)関係②〉
・ 長期修繕計画の内容としては、計画期間が30年以上で、かつ大規模修繕工事が2回含まれる期間以上とする。
○理事長、副理事長および会計担当理事の選任・解任
〈【コメント】第51条(理事会)関係②〉
・ 理事の互選により選任された理事長、副理事長および会計担当理事については、理事の過半数の一致によりその職を解くことができる。ただし、その理事としての地位については、総会の決議を経なければその職を解くことができない。

大規模修繕工事新聞 140号