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理事会決議で理事長職解任 理事の過半数の一致で可能に

【判決の要旨】
 理事を組合員のうちから総会で選任し、理事の互選により理事長を選任する定めのある管理規約を有する管理組合で、その互選で選任された理事長職を、理事の過半数の一致により、解任することができるとした事例です。
 原審では、役員の解任は総会の決議事項であるため、管理規約に違反している等、解任決議の無効を認めていました。
 しかし、最高裁が一転、「理事長職を解き、理事としたものであるから、この決議の内容が管理規約に違反するとはいえない」として、管理組合側の主張を認める判断を行いました。


【事件の概要】

 舞台は、福岡県久留米市のマンション(当時築4年・158戸+店舗1)です。2013年1月、管理組合設立総会を開催し、役員を選出。3月の理事会で互選により、Y氏を理事長に選出しました。
 ところが同年10月、Y氏は理事会決議を経ないまま、他の理事から反対されていた管理会社変更について、独断で臨時総会の招集を通知しました。
 こうしたY氏の行動に対して不信を抱いた他の理事らは、10月20日の定時理事会(Y氏欠席)で、出席した全理事の一致により、A氏を新理事長とし、Y氏の役職を理事長から理事に変更する旨の決議を行いました。
 また、翌年の総会で、Y氏は理事も解任されました。このため、Y氏は管理組合に対し、理事会決議、総会決議等の無効確認等を求めて提訴しました。


【コメント】

 区分所有法25条では「区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる」と定められています。理事長はここにいう管理者に該当しますので、区分所有者法上では原則として、理事長の解任は総会決議によることになります。ただ、「規約により別段の定めがない限り」とありますので、管理規約で理事長の選任や解任について別の定めを設けることもできます。
 この点、多くの分譲マンションの管理規約が準拠しているマンション標準管理規約では、35条2項で「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する」と規定され、同条3項で「理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する」と規定されています。
 しかし解任については直接の規定がありません。48条13号において「役員の選任及び解任」が総会の議決事項である旨定められているだけです。
 本件で問題となったマンションの管理規約も標準管理規約と同様の規約で、解任について直接定めた規定はありませんでした。
 このような規約の下、理事長の解職は,理事会が理事長を選任できること(上記規約35条3項)を根拠として理事の過半数の一致により行うことができるのか,それとも規定がない以上、「役員の解任」として総会の決議を要するのかという解釈が問題となりました。
 第一審と第二審は、役員の解任として総会の決議を要するという立場に立ちましたが、最高裁は、集会の決議以外の方法による管理者の解任の可否及びその方法について、区分所有法は、区分所有者の自治規範である規約に委ねているとした上で、規約において理事の互選による理事長の選任が認められているのであれば、その解職も、理事の過半数の一致によりすることができると解するのが区分所有者の合理的意思に合致するものというべきであり、役員の解任が総会の決議事項とされていることはこのように解する妨げにならないと判示しました。
 本判例は、規約で明確に定められていない理事の解職について判断したものであり、実務上重要な意味を持つといえます。ただ、理事会で理事長の職を解いたとしても、その理事は平の理事として理事会に残るのですから、理事長の解職が事態の抜本的解決になるかどうかは検討が必要です。


 

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