「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を上の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。

管理費滞納者をうっかり漏えい 何かの罰則の対象になりますか?

管理費滞納者をうっかり漏えい 何かの罰則の対象になりますか?

 当マンションで、管理会社の管理員が管理費滞納者の氏名をうっかり他の組合員に漏らしてしまいました。これは、何らかの罰則の対象になるのでしょうか。また、管理会社を含め、マンション管理に携わる専門家はどのような場合に罰則を受けることがありますか。

秘密保持義務違反は 30万円以下の罰金対象

 マンション管理会社の従業員である管理員が、管理費滞納の情報を他に漏らすことは、マンション管理適正化法の秘密保持義務に違反し、30万円以下の罰金の対象となります。また、滞納者からもプライバシー侵害や名誉毀損を理由に損害賠償を請求される可能性もあります。

■解説
 マンション管理適正化法第87条は「マンション管理業者の使用人その他の従業員は、正当な理由がなく、マンションの管理に関する事務を行ったことに関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理業者の使用人その他の従業員でなくなった後においても、同様とする」と規定し、管理会社の従業員について管理事務に関して知り得た秘密を漏えいすることを禁止しています。なお、同法第42条はマンション管理士が、同法第80条は管理会社がその業務に関して知り得た秘密を漏えいすることを禁止しています。
 また、これに違反した場合は、30万円以下の罰金が科されます。
 この規定を受けて、管理会社と管理組合との間で締結するマンション標準管理委託契約書では、管理会社および管理会社の従業員は、「正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た管理組合及びその組合員等の秘密を漏らしてはならない。この契約が終了した後においても、同様とする」と定めています。
 管理費を滞納しているという事実は、ここにいう「秘密」に当たりますので、管理員がこの事実を他者に話すことは、管理委託契約に違反することになりますし、マンション管理適正化法違反として罰則の対象にもなります。
 また、自己の管理滞納の事実を漏らされた滞納者は、プライバシー侵害や名誉毀損を理由に、当該管理員に対して不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求をすることができ、その管理員の雇用主である管理会社に対しても使用者責任(民法715条)を追及することができるでしょう。
 マンション管理適正化法に基づく罰則を別表にまとめましたので参考にしてください。この他、区分所有法には管理者等が規約や議事録の保管義務に違反したときなどに20万円以下の過料に処せられる罰則等があります。

大規模修繕工事新聞 142号

◆山村弁護士への相談は…
 〒100−0012
 東京都千代田区日比谷公園1−3 市政会館4階
 ☎03−5510−2121 FAX. 03-5510-2131
 E-mail:yamamura@oylaw.jp