月刊「大規模修繕工事新聞」は、一般社団法人 全国建物調査診断センターが発行するマンションの適正な管理に役立つ管理組合向けのフリーペーパーです。コロナ過を契機に発行形態を紙媒体から全面的に電子版に移行いたしました。それにともない、これまで首都圏、関西圏のみの発行でしたが、ネット配信の強みを生かし、全国規模に拡大しました。当HPでは、「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を右の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。今後とも、マンション管理組合さまのお悩みに寄り添い適切な情報をお届けしてまいります。

第54回管理組合オンラインセミナー 調査診断の誤った解釈、 本当の竣工時期別給水管修繕方法とは?

一般社団法人全国建物調査診断センターが10月24日、オンラインで開催した第54回管理組合セミナーの模様を紙上採録します。今回は給排水管改修について、調査診断の誤った解釈、本当の竣工時期別給水管修繕方法について、給排水設備改修担当の淵上和久理事が解説を行いました。講演の内容は全建センターのホームページよりYouTubeにて動画配信を行っています。

実際に全建センターに相談のあった東京都内のマンションを例にあげ、全建センターが実施した調査結果をもとに、例えば修繕コンサルタント(設計事務所)が調査をして評価をしたらどのような結果になるのかというのを想定し、全建センターの調査結果と比較しながら説明を行います。

<事例>東京都内某マンション
・竣工1984年(築37年)
・23棟・112戸(5階建て+タウンハウス型マンション)
・ 給排水修繕工事履歴は一度もなし、漏水事故の履歴もなし

●全建センターの給排水管調査概要
a.埋設給水管掘削目視調査
b.外構汚水桝、雨水桝全数目視調査
c.5階建て建物共用部、専有部給排水管調査
d.2階建て建物給水管、排水桝目視調査

 

 

 

 

 

 

 実際の地面を深く掘って、埋設の給水管がどういう状態になっているかを目視で調査しました。メイン管は75Aの鋳鉄管が使用されていました。5階建て(低層棟)への分岐、2階建て(タウンハウス型)への分岐には20Aで塩ビ管が使われており、75Aの鋳鉄の給水管に各棟の分岐として、塩ビ管が使われていました。
 続いて、外構桝、雨水桝を全数、マンホールを開けて目視調査しました。桝と桝をつなぐ間の管を内視鏡を入れて、外構の排水管がどういう状況を調査した写真です。外構の排水管には塩ビ管が使われておりました。
 パイプスペース(PS)内の給水管は通常、保護されていて、配管そのものが見えないのですが、保護材を一部開口して、実際の配管の材質と継手の状態を目視し、塩ビライニング鋼管(SGP-VA)が使われていることを確認しました。
 その塩ビライニング鋼管の内部はどうなっているかについても、内視鏡で確認しました。
 排水管は、排水立管に鋳鉄管、そして外に出ていこうとする横主管に塩ビ管が使われていました。鋳鉄管の内部に内視鏡を入れると、排水管なので、非常に油汚れ等がたくさん付着している状態になっているのが確認できました。


(1)設計事務所が評価した場合
 調査結果を修繕コンサルタント(設計事務所)が評価をしたらどのような結果になるのかということを想定します。
<給水管>
・給水管内部には錆こぶが発生し、腐食が進行している。
・ 国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインによると、「屋内共用給水管、屋外共用給水管」は30 ~ 40年の修繕周期で「取替」とあり、本件は錆こぶが出て劣化が進んでいるので、早急に更新工事を計画することを推奨する。
<給湯管>
・ 給湯管内部には緑青(ろくしょう=銅管の錆)が発生し、腐食が進行している。
・給水管と同時に更新工事を計画することを推奨する。
<排水管>
・ 排水管内部には、大量の汚れや錆こぶが発生し、腐食が進行している。
・ 国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインによると、「屋内共用雑排水管、汚水管、雨水管」は30 ~ 40年の修繕周期で「取替」とあり、本件は錆こぶが出て劣化が進んでいるので、早急に更新工事を計画することを推奨する。

(2)設計事務所の提案内容
① 給水管は更新時期にきており、早急に更新工事を計画すべき
② 排水管は更新時期にきており、早急に更新工事を計画すべき
③ 給湯管も給水管と同時に更新工事を計画して効率化をはかるべき
➡ 給排水管更新工事を同時に実施することで、工事を別々に実施するよりも工事費が抑制できる。
◆ 修繕コンサルタント(設計事務所)の評価をまとめると、すべての工事を同時に行うこととなり、結果として莫大な工事費を必要とする大きな工事の提案となること
が考えられます。

(3)全建センターの評価
 調査結果を全建センターのセカンドオピニオン制度を利用して実施した調査診断結果を説明します。
<給水管>
・ 給水管内部のこぶは、錆ではない。施工時に使うシールテープ、防食材がはみ出たものである。
・ 配管(継手、直管、ライニングの部分)の肉厚は十分ある。

 抜管調査した現物を管理組合理事、修繕委員の前で確認いたしました。
<給湯管>
・ 緑青は銅表面を保護する皮膜であり、腐食物ではない。
・ 薄緑色の皮膜は、オルトケイ酸銅である可能性が高く、腐食ではない。
<排水管>
・ 排水鋳鉄管の外面は、特に問題はない。錆もほとんどない。
・ 塩ビ管は紫外線により劣化するため、隠蔽部では劣化速度が遅く、まだ使える状態である。
・ 鋳鉄管は4mmあるいは4.5mmなど、非常に肉厚で作られているため、内部に汚れが付きやすい性質があっても、研磨・ケレンすればすぐに落とせるものである。
・ 排水管の内面の汚れ、表面錆を除去しても、肉厚は十分(4mm以上)ある可能性が大きい。

(4)全建センターの提案内容
① 給水管は、表面に錆はあるもの、肉厚は十分あり継続使用すべき
② 給湯管(銅管)は材質的に劣化に強くて問題なく、継続使用すべき
③ 排水管は、表面汚れや錆はあるもの、肉厚は十分あり継続使用すべき
➡大規模な修繕を計画する必要はない。

(5)全建センターの調査診断結果の傾向
 全建センターでは2018年より、32管理組合から相談を受け、無償で給排水設備の調査診断をいたしました。
 その結果、給排水管の更新工事を必要と判定したマンションは1管理組合だけです。この1管理組合での更新をしなければならなかった内容は、埋設の排水塩ビ管が沈下をして継手が破断したものを調査で見つけたもので、「これは変えざるをえない」という提案をさせていただきました。それ以外は、継続使用が可能なマンションがほとんどです。
 しかし、それでも更新をしたほうがいいだろうという部位があります。
 給水管の異種金属接合部、要するに管(鉄)と、バルブ等の継手の銅が接合したときに異種金属接合になるので、鉄が腐食する割合が高くなります。この異種金属接合部は一部取り換えた方がよいという提案をさせていただいております。

 

(6)本当の竣工時期別給排水管修繕方法
■修繕計画から給排水管更新工事を除外すべきマンション

1.給排水管更新工事をすでに実施したマンション
 一度実施すれば十分です。何度も更新工事を計画する必要はありません。竣工時期は別にして、一度でも給排水管更新工事をやったマンションは今後、長期修繕計画に給排水管の更新工事を除外してください。
2. 1977年以降の竣工で、給排水管更生工事をすでに実施したマンション
 排水の横引管がスラブ上にあるマンション、共用給水管が共用部分にあるというマンションが条件になります。
こうしたマンションで更生工事をすでに実施したということは、劣化や腐食を予防する工事がされているということなので、更新工事ではなく、2度目、3度目の更生工事をやるかどうかという考え方が得策です。
3.1990年以降の竣工のマンション
 給排水管の更新工事を長期修繕計画に入れる必要はありません。1990年代に入り、管材の材質革新が起こって防食継手、排水用塩ビライニング鋼管が多数採用されるようになりました。なので1990年以降のマンションは、非常に耐久性の高い管材が使われていることになってい
ます。このため、わざわざ更新工事をする必要はありま
せん。


■ 修繕計画から給排水更新工事の除外を検討できるマンション
1. 1977年から1999年竣工で、修繕工事を実施したことがないマンション
 排水の横引管がスラブの上、そして共用の給水管が共用部分にある等々が条件になります。この時期のマンションは、材料の技術革新が過渡期にあって、いろいろな種類のものが使われています。調査をして、確認をして、これなら使えそうだという判断をした場合に、更新工事から除外する検討をおすすめします。

■建物事情から判断すべきマンション
1. 1976年以前の竣工で、修繕工事を実施したことがないマンション
 特に排水の横引管がスラブ下にあるマンション、まさかと思いますが共用の給水管が専有部分にあるマンション、さらに白ガス管(炭素鋼鋼管)が使用されているマンションは、更新工事をメインに考えた方がいいかもしれません。
2.1976年以前の竣工で、建物事情があるマンション
 建物の断熱等の状況を調べて検討する事情のある、特殊な建物事情があるマンションですので、調査によって判断することになります。

■結 論
 考え方としては大規模な修繕工事はいらないということで、中規模化することがポイントになります。

<給水管>
異種金属接合部改善工事のみ
1回実施、以後不要
 給水管の外観はよくても、鉄と銅が接合したときに異種金属接合で鉄が腐食することが一番問題ですので、ここだけ更新工事を行います。ただし1回実施すれば、あとは必要ありません。

 

 

 

 

<給湯管(銅管の場合)>
ピンホール漏水対策(孔食対策)
給湯管更生工事を20年に一度計画
 建物全体の予防保全として、給湯管の内部をコーティング(樹脂を塗る)する工事の計画をおすすめします。配管の漏水事故では、銅管に小さいピンホールのような穴が空いて、そこから漏水するケースがほとんどです。その対策として、更新工事をすると莫大な費用がかかるので、あくまで予防保全として、20年に1度程度、給湯管更生工事の計画をおすすめします。
 更新工事をやっても、このような予防保全をしたほうが、よほど漏水事故がなくなります。

 

 

<排水管(金属管)>
防錆対策
排水管更生工事を20年に1度計画
 本当に排水管は取り換える必要があるのでしょうか。排水管はさきほどの調査診断の内視鏡でもわかるように汚れや錆が付着していて、管理組合がみると非常に劣化のインパクトがあります。
 しかし、排水管は厚みが十分ある場合、汚れを落とし、コーティングすれば、建替えまで使うことができます。
排水管の更新工事は計画するだけ無駄です。修繕積立金を食いつぶす工事となるので、排水管は更生工事だけをやる、それも20年に1度やればいいというレベルといえます。

大規模修繕工事新聞 144号