近年、国内自然災害による大手損保各社の支払保険金の増加で、火災保険の収支が急激に悪化しています。このため、マンション総合保険も毎年のように改定を重ねており、2022年10月にも改定が予定されています。
損害保険料算出機構では昨年6月16日、住宅総合保険の参考純率について、全国平均で10.9%引き上げると発表しました。
これにより、今年10月1日以降が始期となる契約から保険料改定が適用されることになります。
マンション総合保険は満期前でも中途解約です。現在加入中のマンション総合保険の保険料を確認するとともに、複数の損害保険会社の保険料を見積もりして比較するなど、早めの検討・見直しを図ることをおススメしています。
築年が古いほど高額化
免責、事故件数など複雑化も進行
<表1>は東京都所在のマンションを事例にした損保各社の共用部火災保険各損害保険で、2018年と2021年の保険料等を比較したものです。
2018年と2021年では築年が古いほど高額化し、補償内容や免責、事故件数などの複雑化が進んでいます。これが2022年10月よりさらに改定されることになるわけです。
保険料だけでなく免責事項、事故件数、管理状況による割引など、比較検討ポイントがあります。
割引制度を含め、①各社で保険事故成績の判定期間が異なる、②各社で割引が適用されないマンションもある、③判定期間にカウントされるのは事故日のあとの保険金受取日になることなど、損保各社商品の内容を確認して比較することが必要です。
複数の損害保険を扱う保険代理店など専門家を活用することが望ましいといえるでしょう。
賠償責任保険
個人は包括特約、施設は別契約もアリ
補償内容については優先順位をつけ、どこまで必要かを検討し直すことが大切です。居住者の日常生活が原因での賠償が対象となる個人賠償責任保険は保険適用が高く、外すことはおススメできません。
個人賠償責任保険の保険料が高騰することを理由に、管理組合の総合保険から削除し、個人(居住者)任せとするケースがありますが、管理組合での一括管理ができず、居住者間のトラブルにつながるリスクは避けられません。そのため、マンション総合保険の包括特約とすることが望ましいと考えられます。
一方、施設賠償責任保険については、保険会社によってはマンション総合保険の特約から外し、別に単独契約とすることも可能です。総合保険の損保会社とは別会社の施設賠償責任保険とすることもできるため、保険料の減額にも期待ができます。
ただし、単独の施設賠償責任保険について補償範囲が狭いことや、引受られる保険会社が限られているため、注意が必要です。
前述しましたが、ここでも複数の損害保険を扱う保険代理店の活用が望ましいといえます。
保険料の値上げ予定は2022年10月の始期契約からです。合意形成が必要な管理組合の性質上、なるべく早い対応が必要です。
大規模修繕工事新聞148号