月刊「大規模修繕工事新聞」は、一般社団法人 全国建物調査診断センターが発行するマンションの適正な管理に役立つ管理組合向けのフリーペーパーです。コロナ過を契機に発行形態を紙媒体から全面的に電子版に移行いたしました。それにともない、これまで首都圏、関西圏のみの発行でしたが、ネット配信の強みを生かし、全国規模に拡大しました。当HPでは、「大規模修繕工事新聞」創刊から現在に至るまで、全ての記事をアーカイブ収録していますから、マンションの大規模修繕工事に関する情報やマンション管理組合に関する情報を右の<記事検索>にキーワードを入れるだけで表示させて、必要な記事を読むことができます。今後とも、マンション管理組合さまのお悩みに寄り添い適切な情報をお届けしてまいります。

大規模修繕工事、長周期化の目的とは②/長周期化を図るためのメリットとデメリットは?

株式会社ティーエスケーによる連載企画「大規模修繕工事の長周期化の目的とは」の第2弾です。今回は長周期化を図るためのメリットとデメリットについてまとめてみました。

 

 

●デメリット
まずは、デメリットから話をはじめます。
耐用年数と保証年数ですが、材料の性能は年々向上しています。耐用年数も長期化しています。ただし、保証年数についての長期化はみられません。
一般的に保証年数とは、耐用年数の半分と言われています。
なぜなら材料の使用環境や工法、建物の立地条件によって異なるので一定の年数の保証を出すのは困難だからです。
次に、使用材料のコスト高です。耐久性を求めるため、塗料、防水材、防水工法をワンランク上のものを採用します。工法などもひと手間かけることを要求されることから、一般的な工事仕様と比較すると、どうしてもコスト高となってしまいます。
3つ目は、小規模修繕が必要となることです。長周期化を選択しても、3年~5年後には建物点検や小修繕は必要になります。
その中に、一般的に鉄部塗装が該当してきます。足場をかけない部位や鉄部は、点検と小修繕が必要となってくることをご理解いただきたいと思います。
長周期化だからといって、何もしなくていいわけではないということです。


●メリット
次いで、メリットについて話をいたします。
第1に、大規模修繕工事時期に長周期化によって修繕積立金に余裕が出ます。大規模修繕工事のみを考えた場合、これまでの周期を延ばすことで、3年~5年修繕積立金を貯めるための期間ができます。
このため、小修繕や次回の大規模修繕工事の費用などに充てんする金額を増やすことができます。
第2に、使用材料や工法の高品質化により建物の資産価値の低減を防ぐことができます。
最新の材料や工法を使用し、建物を高耐久化していることが資産価値に影響してまいります。大規模修繕工事のコストは高くなるというデメリットはあっても、資産価値への良い影響は大きいものになってきます。
したがってリセールバリュー(中古販売価格、再販価値)など、資産価値の向上は区分所有者に対してのメリット、建物の高耐久化は居住者にとっても安心できる材料となります。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

15年周期での修繕積立金と工事費用のイメージ

 15年周期での下記グラフをみると、大規模修繕工事だけを考慮すれば、黒字で推移していることがわかります。
 ただし、給排水設備改修等を計画に盛り込む場合、築30年目の大規模修繕工事の予算が足りなくなる可能性があります。
 12年周期でも15年周期でも修繕積立金は不足します。
 なぜなら新築購入時の修繕積立金の金額設定は、住宅ローン・管理費等と合わせ、区分所有者の毎月の支払いの負担にならないよう、低めに設定されているからです。
 大規模修繕工事は、安心で安全な暮らしを目指し、資産価値を維持するために行うものです。
 その時期は、周期にとらわれるのではなく、建物の劣化状況と修繕積立金の積立額との兼ね合いで判断するべきです。
 そのためには正確な建物診断と小まめな長期修繕計画の見直しが大切といえるでしょう。

大規大規模修繕工事新聞No.153