2010年、消費者保護の一環として、国土交通大臣より指定を受けた住宅瑕疵担保責任保険法人により大規模修繕工事瑕疵保険の提供が開始されました。現在、国土交通大臣指定の5法人が保険を引き受け、業務を行っています。現場の第一線で活躍する㈱住宅あんしん保証の柄澤航太さんに大規模修繕工事瑕疵保険の必要性、管理組合への浸透具合などを聞いてみました。
− 保険商品の提供開始から12年、瑕疵保険の認知度は上がりましたか?
2010年の「あんしん大規模修繕工事瑕疵保険」販売開始以来、
年々増加し、2021年度は1,050棟の申し込みがありました。累計総数は12年間で約8,000棟になります。
ただし、資力確保が義務化されている新築工事に対し、既存住宅は任意加入であるため、大規模修繕工事瑕疵保険についてはまだまだ「知らない」「あまりよくわからない」という管理組合が大半だという印象です。
工事会社やコンサルタントの中にもよく理解していなかったり、カン違いしている場合もあり、そのために管理組合に提案していただけないという結果につながっているケースがあるようです。
−カン違いしている場合とは、例えばどんな?
保険契約者は請負工事会社のため、工事会社に申請してもらわなければなりません。管理組合と協議をして保険加入が決まっていても、担当者に「工事ごと」の理解がなく、賠償責任保険等と同じく会社単位で加入していると思い込んで申請しないケースなどがあるのです。
−管理組合側の理解はどうですか?
設計・監理方式で第三者のコンサルタントが入るので、施工品質に対する監理の目はあるし、工事会社の倒産もないだろう。そもそも余分な保険料を支払う必要はない、という方は多いです。
一方、分譲主や建設主が倒産したマンションでは、その経験から「大金をかける工事に担保がないのは不安」と瑕疵保険を勉強されて加入する方もいらっしゃいます。
施工不良があってから「なぜ瑕疵保険に入っていなかったのか」と管理組合内部で不穏な人間関係になることも少なくありません。いずれにせよ、まずは保険加入の是非を理事会や修繕委員会の議題に上げていただくのが一番です。
結果的に未加入でも、総会議事録等にその検討結果を記録しておけば、後のトラブルを防ぐことにつながります。
− 保険に加入していれば、施工ミスの有無で工事会社とトラブルになることもないですね
住宅瑕疵担保履行法の改正により、10月1日から大模修繕工事瑕疵保険にも紛争処理制度の対象が拡大され、さらに安心感が増しました。施工の不具合に関する紛争だけでなく、代金や工期・引き渡し時期等に関する紛争も対象になります。
大金が動く大規模修繕工事や設備改修は、理事会や修繕委員会等の精神的負担が図り知れません。そうした負担を軽減するためにも、まずは瑕疵保険の検討だけでも行ってほしいと思います。
大規模修繕工事新聞 22-12-156号