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議決権まで奪ってよいのか 「区分所有法制の見直し」を考える

議決権まで奪ってよいのか
「区分所有法制の見直し」を考える

NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2022年11月5日付第482号「論談」より

◆法制審答申の内容
 このほど政府は、マンション建替えの促進・円滑化などを理由に、関連する議決要件の緩和や、行方不明者や会議不参加者の総議決権者数からの除外などの検討について、法制審議会に対して答申するよう求めた。
 この動きは、これまでから関係業界や一部識者の間で強調されてきたことはあるが、肝心のマンションの区分所有者の間で切実な要求があるという話はあまり聞かない。
 したがってこの問題は、当事者の意向の十分な調査を含め、拙速に走らず総合的に落ち着いて検討する問題だと考える。

◆建替え要件の緩和
  区分所有法がつくられた時点では、建替え規定はなく、
したがって建替えするとしたら、区分所有者の全委員一致を要した。
 建替え規定が区分所有法に入ったのは、1983年の改正で、議決には議決権・組合員数の各5分の4以上を要するとしたほか、建物の腐朽(修理に過分の費用を要する)を要件とした。
ただし、この要件は2002年の改正で反対意見も強かったが削除され、単に5分の4の要件が満たされればよいと変更された。
 これをさらに緩めようというのが、今回の答申の意図である。しかし、ことは建替えに同意できない人の居住に重大な影響を与えるものであり、要件緩和には慎重な上にも慎重な検討が求められると考える。

◆議決権を奪うのか
 さらに、それ以上に重大なのが、所在不明者や総会常時欠席者が反対票に数えられることが議決が進まない理由だとして、採決の基礎数から除外するなどの検討を求めている問題である。
 この問題は根本までさかのぼれば憲法が第29条で財産権を侵してはならないと定めていることにつながる。
 財産権は公共の福祉以外の理由では制限できない。区分所有権はもちろん財産権であり、その去就を左右する議決への参加の権利は区分所有権の基本的柱である。所在不明者や総会に賛否の態度を明らかにせず加わらない区分所有者を「円滑な決議を阻害」するなどとして採決の基礎数から除外するのは財産権を奪うことにほかならず、全く許されないことである。この点には強く反対するものである。 (NPO日住協論説委員会)


(大規模修繕工事新聞 156号)


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