マンション管理動向のホットな話題
「マンション管理動向のホットな話題」と題して、新しいコーナーを作ります。このコーナーでは、マンションと暴力団排除条例、駐車場使用料の収益事業性、第三者管理方式、マンションの省エネ化、脱法ハウス・違法貸しルーム、「相続放棄」への対応など、マンション管理の現状はどうなっているのかについて、各テーマの入り口と概要をわかりやすくまとめていきます。
第1回は「マンションと暴力団排除条例」について。
「暴力団排除条例」の目的は、大まかにいうと暴力団が市民生活の中に入ってくる場合、条例を盾に市民が暴力団を拒否できるというものです。条例を無視するような行動を暴力団が取れば、警察に訴えて、警察も条例を盾に動くことができるのです。
この「暴力団排除条例」は2011年10月、東京都・沖縄県を最後に全都道府県で施行されました。
そこで、マンションにとって、どのような影響があるのか調べてみたいと思います。
暴力団関係者とみられる人がマンション所有者または不動産会社に対して、マンションの売ってくれ、貸してくれと言ってきたときには所有者には次の義務があります。
①契約をしない義務 ②確認の努力義務③明文化の努力義務 ④解除等の努力義務
仲介する不動産会社等にも次の義務が生じます。
①助言その他の措置義務
②知った上での代理・媒介禁止義務
◇
威圧的な態度の住民が入居して怖い、知らぬ間にマンションが暴力団事務所になっていたなど、平穏な市民生活に暴力団を入り込むことを売買・賃貸契約の時点で拒否することができる
のです。
管理組合の中には、管理規約に「暴力団等の排除責任」の条文を設け、区分所有者に売買・賃貸時の責任の所在、意識付けを行っているケースもあります。
「暴力団等の排除責任」を入れた管理規約例
<マンション標準管理規約第20条(区分所有者の責務)に第20条の2(暴力団の排除責任)を追加した例>
第20条の2(暴力団等の排除責任)
区分所有者は、その専有部分を譲渡又は貸与するときは、次の各号に掲げる者に譲渡又は貸与してはならない。
一 暴力団構成員、反社会的政治結社構成員、反社会的宗教団体構成員その他反社会的な行為を行うおそれのある者又は団体
二 賭博、売春、麻薬密売等違法行為を行う者又は団体
三 第一号及び第二号に掲げる者又は団体を対象物件内に居住させ、又は反復継続して出入りさせる者
四 その他共同生活環境を侵害するおそれのある者又は団体(参考:三井一征事務所)
ただし、暴力団排除条例は、その施行以前からすでに所有者である区分所有者や賃借人に何らかの対応を求めるものではありません。
つまり、すでにマンション内に暴力団関係者が住んでいたり、暴力団事務所があった場合には、条例を盾に「追い出す」ことはできないのです。
暴力団関係者と知った場合に、これらを追い出すためには、管理組合としては「他の区分所有者の共同利益に反する」として、区分所有法第57条~ 60条で対応します。
・第57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
・第58条(使用禁止の請求)
・第59条(区分所有権の競売の請求)
・第60条(占有者に対する引渡し請求)
しかし、暴力団関係者が他の住民に危害を加えるなど、共同利益に反する行為があって初めて行使できるもので、単に暴力団関係者だというだけでは訴えることは難しいといえます。
最高裁は1987年(昭和62年)7月17日、賃貸借契約解除、明渡し請求を認める判決を出しています。
これは、暴力団がマンションの1室を組事務所として賃借し、専有部分および共用部分の不当使用、区分所有者に対する威圧的態度および暴力団同士の抗争等により、区分所有者の共同の利益に著しく反する行為を行った、という事案でした。
(大規模修繕工事新聞 2014-4.5 No.52)