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ウェブ会議システムの明文化、規約閲覧方法のデジタル化

 区分所有法制研究会が令和4年9月にまとめた研究報告書「第2 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」から、「6 区分所有建物の管理に関する事務の合理化」「7 団地内の建物の管理を円滑化するための仕組み」を紹介します。今回が最終回です。

①集会におけるウェブ会議システムの活用

 現行法で区分所有者の意思決定は、基本的に集会で決議を行うことが予定されている。
 もっとも、集会とウェブ会議のハイブリッド方式も、完全オンライン方式も現行法上可能であり、特段の規約の変更を行う必要もないと解されている。
 これを踏まえ、ウェブ会議システムを用いることができる旨の規律を明文化すべきとの指摘があった。

②事務の報告義務違反に対する罰則

 法43条では、管理者または理事は毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告を集会においてしなければならないとされており、71条で報告をしなかった管理者等は、過料に処するとされている。
 しかし、例えば、災害や疫病等によって、年1回の集会の開催をすることができず、その結果事務の報告をすることができないようなケースについて、罰則の対象とすることは適当ではないとも考えられる。
 とはいえ、災害のために集会を開催することができなかったようなケースであれば、裁判所が過料の手続を開始することは考えにくい。さらにウェブ会議システムを活用した集会の開催が導入されつつあり、災害や疫病等が発生していても集会の開催は可能となっている。
 このため、正当な理由に関する規律を設けることにより、正当な理由がないのに事務の報告をしなかった場合に限って過料に処するものとする。

③規約の閲覧方法のデジタル化

 規約は、基本的に管理者が保管しなければならないとされ(法33条1項)、利害関係人の請求があったとき、保管者は規約の閲覧を拒んではならないとされている(法33条2項、区分所
有法施行規則2条)。
 閲覧方法については、デジタル化されている場合でも、出力された紙面か、ディスプレイ等で閲覧しなければならないこととされており、デジタル化の観点から不便であるとの指摘がある。
 デジタル臨時行政調査会は、こうした区分所有法の規定も見直しの検討対象としている。
 そこで、会社法の定款の閲覧に関する規律を参考に、電磁的記録で作成されている規約について、利害関係人が、電子メールに添付するなどして送信された規約データを、自己の出力装置の映像面において表示する方法による閲覧を請求することができるものとする規律を設ける。
 また、電子メールに規約のデータを添付して請求者に送信することが、「閲覧」という概念に当てはまるかどうかについても、整理が必要である。

 現行の団地管理組合等における集会については、区分所有建物の集会についての規定(法34条~ 46条)が準用されており、基本的に共通のルールが採用されている。
 そこで、区分所有建物一般について、①所在等不明者を集会の決議から除外する仕組み、②集会出席者の多数決による決議を可能とする仕組みが創設された場合には、団地内建物所有者
の団体においても同様の仕組みを創設する方向で検討する。

大規模修繕工事新聞2023-03-159号