マンションでは管理業務を管理会社に委託している管理組合が通常で、委託率は90%前後といわれている。最近の事態にかんがみ、管理組合と管理会社との関係のあり方を改めて整理しておきたい。
◇危険な動き
いまいちばん憂慮される動きは、管理組合の総括的責任者である管理者(通常は理事長が就任している)に、管理会社自身が就任しようとしていることである。
以前からこの動きを進めてきた、ある大手管理会社では、すでに理事長・理事会がなくなってしまった管理組合が出ている。組合員=区分所有者の意思表明の機会が大幅に奪われ、もとに戻す可能性は極めて狭くなってしまっている。
それに合わせて他にも管理者に入ろうと動き出している大手管理会社があり、管理組合の自立権が奪われる危険な動きが広がっている。
◇基本的誤り
管理会社の基本的誤りとして管理組合員名簿を自分のものだと思っている問題がある。管理組合理事会に名簿を見せない、渡さないという態度をとる管理会社がある。
それだけでなく、管理業界出身の著者が書いた理事向け入門書には「渡さなくてもよい」ケースがあることを堂々と書いているように、業界を通じた考え方であるフシがある。
組合員名簿はマンション管理のために作成された文書であり、管理組合のもの(所有)である。これは管理会社のリプレースが行われ、旧管理会社が委託を解除されたら名簿は不要になり、直ちに管理組合を通じて新管理会社に引き渡さなければならないことでも明らかである。
◇望ましい関係
だからといって私たちは、管理会社を敵視するものではない。別の理事向け解説書が述べているように「緊張感を持って賢くつき合う」「管理組合のパートナー(協力者)に」と位置づけている。
管理組合側の業務である管理者に管理会社が入ろうとしているのは、委託者・受託者双方の立場を一身に持つことであって、管理組合運営独裁を図る、許されない動きである。
そうではなく、管理組合の自主性を尊重しながら、ともに共存していく関係を確立していくことが望ましい。
(NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2023年2月5日付第485号「論談」より NPO日住協論説委員会)
大規模修繕工事新聞2023-03-159号