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所在等不明区分所有者の除外、出席者による多数決議など 集会決議円滑化ための仕組みの創設へ

法務省法制審議会区分所有法制部会(部会長=佐久間毅・同志社大大学院教授)では、区分所有法制研究会の研究報告書(令和4年9月)をもとに、区分所有法制の見直しの方向性とその課題の論点整理を進めています。
 区分所有法制の見直しに当たって考えられる「区分所有建物の管理の円滑化を図る方策」の主な内容を抜粋、下記にまとめました。
 区分所有法制部会は4月11日、第7回会議を開催。法務省民事法制管理官によると「部会は議論を尽くすまで行うため、会期の期限は未定」とし、意見書をまとめた上で法務大臣に上申する予定としています。
⑴集会の決議を円滑化するための仕組み
 所在等不明区分所有者や不参加区分所有者は、集会の決議において反対者と同様に取り扱われるため、区分所有建物の円滑な管理が阻害されるおそれがある。
 そこで、所在等不明区分所有者を公的機関の関与の下で決議の母数から除外する仕組みや、出席者の多数決による決議を可能とする仕組み(不参加区分所有者を決議の母数から除外する仕組み)に関する規律を整備する。
⑵区分所有建物の管理に特化した財産管理制度
 区分所有者の所在等が不明となり、専有部分の管理等をしない場合には、区分所有者に代わって専有部分の管理をする者を選任するなどの措置が必要となる。
 民法における既存の財産管理制度は管理コストが高く、利用が困難である。現行区分所有法にもそのような財産管理制度は用意されていない。
 そこで、令和3年改正民法の所有者不明建物管理制度や管理不全建物管理制度を参考に、区分所有建物の管理に特化した財産管理制度に関する規律を整備する。
⑶共用部分の変更決議の多数決要件の緩和
 共用部分の変更決議要件の緩和について、緩和により権利を制約される少数反対者の利益に留意し、一定の客観的要件を付す場合には該当性を巡る紛争が生じにくい明確な要件とする必要性を検討する。
⑷共用部分に係る損害賠償請求権等の行使の円滑化
 共用部分等について生じた損害賠償金等の請求および受領について、損害賠償請求権等が生じた後に区分所有権を譲渡した場合、管理者が訴訟追行できなくなるとの解釈があり、支障を来たしている。
そこで、損害賠償請求権等の発生後に区分所有権が譲渡された場合でも、管理者が当事者となって訴訟を追行することができる規律を整備する。
⑸区分所有者の責務
 区分所有建物の管理について、区分所有者が負うべき責務に違反した場合の民事法上の効果をどのように設定するかなどについて検討する。
⑹区分所有建物の管理に関する事務の合理化
 ウェブ会議システムを活用した集会の開催に関する規律の整備について、現行法でも理解が得られており、規律整備の意義や影響に留意して検討する。

大規模修繕工事新聞2023-05-161号