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大規模修繕工事を健全に育てよう

 ◇ 材料費の値上がりと職人の低賃金
 ある施工会社から、設備に関する事業の閉鎖のお知らせがNPO日住協に届いた。
 ロシアのウクライナ侵攻により、日本を含む欧米諸国がロシアへの制裁を発動し、ロシアからのエネルギー等の資源を絞り込んだ影響とコロナによる輸入の滞り、しかもインフレーションという要因が重なり、大規模修繕工事の材料費が値上がりしたが、それを管理組合に転嫁できずに苦戦している施工会会社がある。
 一方、工事を担う職人の低賃金が課題となっている。
 東京オリンピック時に警備員の1日当たりの賃金は2万円になったが、塗装工は1万5,000円。手取り額では1万円程度である。
 そのような状況に若者は集まらず、職人の高齢化が顕著になっている。コロナ前までは、外国人労働者がその穴埋めをしていたので工事は進められた。
 しかし、コロナになって技能実習生などが帰国したので人手不足に陥っている。
◇職人を育てるために
 改修工事の現場は「きつい」「汚い」「危険」の3K。近年は「帰れない」「厳しい」「給与が安い」という「新3K」が加わった。
 打つべき策は労働条件の見直しなど、魅力ある職業にすることに尽きる。
 職人がいてこそ大規模修繕工事はできる。外国人の職人を異端視や蔑視する人もいるが、マンション改修の設計コンサルタントの大ベテランである方は「真面目で、職人としての腕もよい外国人労働者もいる。中には帰化して職長になっているケースもある」という。
 外国人抜きでは、大規模修繕工事は難しくなっている。
日本の若者にも職人になってもらいたい。材料費の値上げに加え、職人(をはじめとする関係者)の賃金を含めた構造改革が求められている。
◇“安かろう”には注意!
 管理組合は、長期修繕計画書を根拠とした修繕項目とその費用での大規模修繕工事を賄え難くなっていることを知っておきたい。
 設計コンサルタントは、その事実を管理組合に伝えてほしい。
 管理組合が設計コンサルタントや施工会社に無理な要求をすれば、赤字に陥る可能性があり、それは次に受注する工事の手抜き工事につながることもあり得る。
 事業を閉鎖せざるを得なくなった施工会社同士の適切な競争が、費用と施工の質を高めることを管理組合は理解したい。
 自分のマンションの利益も追求したいが、多くのマンション全体のことも考えたい。
 次のマンションが不利益を被らないためにも必要なことである。 (NPO日住協論説委員会)

大規模修繕工事新聞161号