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区分所有法制見直し、本当に必要か

区分所有法制見直し、本当に必要か
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2023年5月5日付第488号「論談」より

  現在、政府の手で区分所有法制の見直しが行われており、部会の報告や賃料が国交省のホームページに載せられている。
 見直しは区分所有法制全体ではなく、マンションの建替えの円滑化を図ることを中心に、特別決議の議決要件の見直しや、関連して連絡不能などの区分所有者の採決の際の基礎数からの除外などの検討という点が諮られている。
 この件は昨年も一度当欄で取り上げたが、改めて問題点を指摘しておきたい。
◇誤った現状認識
 昨年9月に発表された区分所有法制研究会の「研究報告書」は最初に「区分所有建物をめぐる状況」を記述している。
 しかし、「研究会」といいながら、「状況」についての実態調査もなく、区分所有者の要求や意向についてのアンケートもせず、実態分析も行うことなく、推測に基づく「おそれがある」を連発し、根拠を明らかにせず、要件の緩和を強く主張している。
 その中で、所在不明者や賛否不表示者がいるために賛成を得られないことが円滑な管理を妨げているというが、そのような阻害例は稀である。
 建替えなどで賛成が得られないのは建替え自体への支持がないことが主要で、所在不明者が多いことに原因があるのではない。
◇重大な数字の誤り
 所有者不明の数や占有率はどの程度か。「研究報告書」は「区分所有建物をめぐる状況」の「⑵問題点」で、「区分所有建物の所有者不明化や非居住化の進行」をあげている。8ページ「⑴所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する仕組み」には、問題の所在として以下の記載がある。
 「平成30年度マンション総合調査結果によれば、区分所有者が所在不明・連絡先不通の空室があるマンションの割合は3.9%で、そのうち当該マンションの総戸数に対する所在不明・連絡先不通の住戸の割合が20%超のマンションは全体の2.2%、0%超~20%のマンションは全体の1.7%であったとされている」
 しかし、これは誤りである。
 平成30年度マンション総合調査の原本をみれば明らかだが、
実際は「空室のうち」所在不明・連絡先不通となっている割合が20%超のマンションが約2.2%。したがって、所在不明・連絡先不通住戸は、総戸数に対して0.12%余り、800戸に1戸となる。実態が50倍以上誇大に表現されているのだ。
 これを採決で除外しても、関係者の求めるような効果はない。立法を必要とするような状況にないのである。
◇出発点からの見直しを
 そもそもこうした管理不全に対応する措置として、決議の基礎数から除外したり、議決要件を引き下げたりすることは、管理の現状を改善する立場ではなく、管理の現状は改善できないから、それをそのまま認めて修繕とか建替えとかの工事を進行させやすくするためである。
 いわば、管理不全住宅の切り捨て政策である。
したがって、今回の「区分所有法制の見直し」に求められるのは、法制の見直しが本当に必要かを再検討することである。
出発点からの見直しを期待したい。
( NPO日住協論説委員会)

大規模修繕工事新聞 162号