2024年4月1日、改正労働基準法における建設業の猶予期間が終了し、時間外労働の上限規制が適用されることになります。建設業者が求められる取り組みは主に「時間外労働の是正」「現場の処遇改善」「生産性の向上」
の3項目です。
「時間外労働の是正」では、罰則付きの時間外労働規制が適用され、週休2日を推進します。「現場の処遇改善」では、下請の建設企業も含め社会保険加入の徹底、技能や経験にふさわしい処遇(給与)の実現、下請代金への労務費の現金払い(約束手形の利用廃止)が求められます。「生産性の向上」は、積極的な情報通信技術の活用、品質向上のための新技術の導入、重層下請構造の改善などです。
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とはいえ、マンションの修繕工事を手がける施工会社の社員からは、現実的に難しい部分があるという声が上がっています。
「工事を週休2日にすると足場代が厳しくなる」。現状、大規模修繕工事は㈪~㈯で行っているのが一般的です。これを土日休みにすると、当然工期が延びて、仮設資材のレンタル費用が増額します。
また、「作業員の入れ替えが必要になる」とも。つまり、工事の休みが週1日で、作業員の週休2日を守ると、「どうしても人を回転させなければならなくなる」というのです。
一方、作業員の心配も。「下請けの一人親方などは日当だから、平日に雨で工事中止、その上週休2日となれば、生活に困るのでは…」。
逆に、作業員の確保やスケジュール管理が複雑になるなど、現場代理人は今よりも負担増、残業増になると考えられます。
また管理組合がお客であるため、理事会や修繕委員会は土日に集中しています。工事の住民説明会も土日開催が必然。時間外労働規制により、残業代が増えます。
そうすると、会社としては、それらを含めて利益を考えなければなりません。しわ寄せは当然、工事費に跳ね返ることになります。
しかし、マンションでの修繕工事は今や、相見積もによる価格競争が一般的。だからこそ管理組合として気をつけたいのは、「どこかでつじつま合わせが生じる」ことです。このような社会的な背景を知らず、ダンピングで施工会社選定を行えば、施工性や品質性につながることは目に見えて明らかといえるでしょう。
法改正によって生じる社会問題。管理組合にも共有してもらいたいという思いから、ある施工会社役員は「工事約款に週休2日とするなど、会社が導入しやすい仕組みを作ってほしい」と話しています。
大規模修繕工事新聞 163号