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屋上防水の基礎知識/ンションの漏水の技術的解説(1)

マンション住戸内(居室)の漏水は居住者には災難ですが、その補修には調査も含め、数年を要することも珍しくありません。居室に漏水があっても大規模修繕は計画すらない場合もあります。
昭和の時代には木造住宅でも漏水がありましたが、近年では極めて稀です。これは木造住宅が近年、建物全体を防水紙で防水しているためです。
 これに対し、コンクリート構造物は屋上とバルコニーくらいしか防水されていません。このため、クラックや防水層の不具合があると容易に漏水するのです。
 ここでは6週にわたり、大規模修繕工事を待たずにマンションの居室で発生した漏水を補修する方法を解説します。

基礎知識1  正水圧と背水圧

コンクリートの防水は水圧の方向によって、その方法および使用材料が異なります。
 コンクリートの外部から内部への水圧を「正水圧」と言います。英語では、Positive Hydraulic Pressureと呼ばれます。
 大規模修繕工事で行われる防水は、すべて外部から行いますので正水圧に対する防水となります。
これに対しコンクリートの漏水を居室側から見た場合の水圧は「背水圧」といい、英語では、Negative Hydraulic Pressureと呼ばれています。背水圧に対する防水は正水圧に対する工法とは全く異なります。
 基礎知識2  躯体の挙動
 コンクリートは陽が当たり気温が上昇すると膨張し、陽が沈むと温度が下がり収縮します。
 よってコンクリートの構造体には必ず挙動(動き)があります。一番挙動があるのは、一日中、陽の当たる屋上です。コンクリートの熱膨張率は1×10−5/℃とされ、これは10mスパンのコンクリートの温度が10℃上昇すると1mm伸びる計算になります。
 コンクリートには弾性(伸びる性質)がありませんので、クラックが発生します。コンクリートは新築時に水が蒸発して収縮クラックも発生するため、屋上にはクラックがあるのが普通であり、新築時から防水するのはこのためです。

大規模修繕工事新聞10月号(23-10)