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第66回管理組合オンラインセミナー採録 /アルミ改修(窓サッシ・玄関ドア)で100年マンションへ (後 編)

一般社団法人全国建物調査診断センターが2カ月ごとに主催している恒例管理組合オンラインセミナーの一部を紙上採録します。今回は10月29日にVimeoで公開した第66回セミナー「アルミ改修(窓サッシ・玄関ドア)で100年マンションへ」の後編です。今号では実際の改修工事における留意点、補助金制度について取り上げます。過去のセミナーはVimeoにより動画配信を行っています。全建Libraryからご視聴ください。


佐藤成幸筆頭理事:少しここで統計上のデータの話をさせていただきたいと思います。
 国土交通省の調査によると、2013年で築30年超のマンションが全国で150万戸弱存在しており、今年(2023年)はその数250万戸、さらに10年先には450万戸に達すると言われています。
 一方、管理組合へのアンケート(平成30年度マンション総合調査)では、本日話題にしている建具関係の改修工事について、実に3割程度しか実施がされておりません。そのうち省エネルギー対策は2.8%というのが実情です。
 建具関係の改修はなぜ行われないのか。何が原因で進まないのか。この辺りを箕輪理事に話していただきます。

箕輪貴弘理事:実際に管理組合に伺い、修繕計画のお話をさせていただくと、大規模修繕工事や給排水工事に関しては非常にしっかり計画されているのですが、窓の開口部については改修ができることさえ知らない方もいたりして、長期修繕計画に盛り込まれていないケースが非常に多いです。
 計画期間30年の中で、大規模修繕や給排水管が優先項目とされ、サッシや玄関扉の工事のウエートはほぼなく、最終的に修繕積立金がなくなってしまうことに突き当たる管理組合がほとんどです。

佐藤: 建具関係の改修工事に関していうと、構造的な問題が2つあります。
 1つは、サッシや玄関扉はいつ改修するのかということです。耐用年数から考えると、35年から40年程度といえます。すると、新築からの30年スパンで作成される長期修繕計画には当然のことながら工事の対象として認識をしていない。したがって、サッシや玄関扉の改修に向かっての積立金を集めるということを、そもそも計画上やっていないのです。
 それからもう1つは、これは非常に大きな問題ですが、築35年から40年というと、外壁改修や防水関係の多くが3回目の改修工事の時期とちょうど重なってくる点です。
 さらに設備や配管関係の寿命、エレベーターも30年前後で改修工事が必要と言われている。要するに改修項目が目白押しになる一方、経済事情から修繕積立金の値上げも厳しい。選択の中でサッシや玄関扉が難しくなってくるというわけです。
 金銭的な要因が非常に多いのが、この建具関係が進まない実質的な背景と考えられます。

箕輪:そこで、 行政の補助金ですが、実際には手厚く出ております。
 環境省、経済産業省、国土交通省が出している各事業、また東京都の補助金も出ております。東京都にお住まいの方に関しては、国の補助金とダブルで取れるわけです。
 国の3省連携による補助制度では、「先進的窓リノベ事業」を活用した窓リフォームの補助金で1戸当たり最大200万円です。ただ、窓の枚数が多ければ200万円に到達することも考えられますが、一般的に我々が工事しているお部屋では過去にはありませんでしたね。
 国土交通省の「こどもエコすまい支援事業」は窓の大きさに対していくらという金額が定められております。バルコニー側の窓だと2万3千円程度、腰窓だと1万8千円という形で定められています。こちらは工事が終わり次第の申請になります。

<新着情報> ※編集部注
 11月10日、令和5年度補正予算案が閣議決定され、現行事業の後継事業が盛り込まれました。これらの事業は「住宅省エネ2024キャンペーン」として、一体的に実施することが予定されています。本事業の実施は国会で予算が成立することが前提です。事業の詳細は、次号(1月号)に掲載予定とし、情報発信いたしますので、どうぞご留意ください。

佐藤:確認ですが、本日いろいろ説明のあった、例えばバルコニー側の引き戸のサッシをカバー工法で複層ガラスにしたものに改修するといった場合に、補助金のターゲットに入ってくると考えていいですか?
箕輪:対応するサッシがアルミ製、樹脂複合製など、補助金が出るジャンルが変わってきますが、いずれにしても断熱効果の高いものになります。これはお住まいの方々、各戸の電気料金の節約にもつながるわけで、こうしたことがあれば、修繕積立金に対して費用を多少なりとも足し算ができるのではないでしょうか。

 

■東京都: 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業

佐藤:実際こうした制度を利用して工事まで実施されたという管理組合の実例はございますか?

箕輪:東京都で窓サッシ改修を行った90戸のAマンションでは、樹脂複合窓とアルミの窓サッシの両方を使用しました。
 樹脂複合の窓は先進的窓リノベで申請し、全体工事費で東京都の補助事業にも申請しました。それぞれ2,300万円、2,000万円近く補助金が出ましたので、管理組合の実質負担は5,000万円ほどで工事ができたという流れになります。
 Bマンションは420戸で、2億7,200万円の総工事費に対して4,100万円補助金が出ているケース、それからCマンションは約100戸で1億1,000万円のアルミサッシ改修工事を行い、2,400万円という補助金が出ました。
 さまざまな条件があり、申込等の手続きも手間がかかりましたが、実際これだけの金銭的な負担の軽減につながったという実例です。

佐藤:少し知恵を絞っていろんな糸をたぐっていくと、数千万単位の節約になるんだと、こういうチャンスがサッシ等の建具関係の改修工事にあるんです。ご視聴の皆様方、この機会にぜひご認識をいただきたいと思います。
 また、手続きについても多かれ少なかれ煩雑な点があろうかと思います。そうした点についてはぜひ当センター箕輪理事にご相談いただければ、手続き等の条件は一括して説明いたします。

箕輪: ぜひ補助事業を管理組合の皆様にご活用いただき、修繕積立金の有効活用のお手伝いができればと考えております。

佐藤:バルコニーの窓サッシや玄関扉を変えると見た目がバリッと変わります。まさに生活に色ツヤがつく改修工事の典型的な例です。
 100年暮らせるマンションのための非常に大きな項目として、建具関係の改修工事も検討いただき、よりよい住環境の一助になれたら、と考えております。本日のセミナーはこれにて終了させていただきます

大規模修繕工事新聞167号(23-12)