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管理会社提案で「書面理事会」開始 これまでの決議事項、すべて無効!?/山村弁護士法律相談

管理会社提案で「書面理事会」開始、これまでの決議事項、すべて無効!?

 うちのマンションの理事会は従来の集会形式ではなく、管理会社の提案により今年から、書面形式の運営を開始しました。議案や資料、議事録等の確認はメールなどを活用するものです。
 集会形式よりずっと効率的で、役員の負担も軽減できるため、将来的にもよい方法だと思いますが、話し合いもなく書面だけの理事会決議・承認は無効ではないか―と問題視する人がいます。
 マンションの管理規約は、国土交通省の標準管理規約を参考に作成されていますが、書面だけの理事会決議に効力はないのでしょうか?

理事会は集まって話し合う場、例外を除き、書面形式はNG

書面形式の理事会とは、管理組合の役員が集まって話し合うのではなく、書面のみで議案についての決議を行う理事会のやり方です。
 区分所有法45条は、総会については、「区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる」と規定し、書面で決議を行うことを認めていますが、理事会についてはこのような規定がありません。
 この点、国土交通省が公表するマンション標準管理規約(単棟型)の53条では、専有部分の修繕等への承認(17条)や敷地及び共有部分等の保存行為への承認(21条)、窓ガラス等の改良工事への承認(22条)といった即時の対応が求められる一部の事項については、書面による決議が可能とされています。
 ただ、上記標準管理規約53条関係のコメントには、書面による決議に関して「本来、理事会には理事本人が出席して相互に議論することが望ましいところ、例外的に、第54条第1項第五号に掲げる事項については、申請数が多いことが想定され、かつ、迅速な審査を要するものであることから、書面又は電磁的方法による決議を可能とするものである」と記載されています。
 理事会は、本来、理事が集まって、よりよいマンション運営のために話し合う場でもありますので、標準管理規約は、あくまで理事が集まって議論した上で決議することを前提としており、書面決議は例外的に認めているものにすぎません。
 したがって、本件のように標準管理規約に参考に規約が設けられているマンションにおいては、専有部分の修繕等への承認や敷地および共用部分等の保存行為への承認、窓ガラス等の改良工事への承認を除いて、理事会の決議を書面形式で行うことはできません。

大規模修繕工事新聞167号(23-12)